1~4歳の幼児死亡率は? |
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投稿者: 新井裕充 | 投稿日時: 2009年07月15日 04:53 |
ロハス・メディカル7月20日発行号の裏表紙に、こんな問題を出してみました。
【問】 1~4歳の幼児死亡率、 次の国の中で最も高いのは?① イギリス
② オーストリア
③ 日本
答えは、③です。
「我が国は、乳児死亡率は低いにもかかわらず、1~4歳の幼児死亡率は高く、他の国と異なる状況にある」─。これは、厚生労働省研究班の説明です。
研究班の国際比較によると、1~4歳の幼児死亡率が最も低い(成績が良い)国は、フィンランド(11.85)。次いで、アイルランド(13.60)、ギリシャ(14.85)、ノルウェー(18.05)などが続きます。オーストリア(21.70)は14位、日本(24.55)は17位です。
■ 救急医療体制の不備が原因?
厚生労働省は、日本の1~4歳の幼児死亡率が高いことを問題視しています。1~4歳の幼児死亡率が高いのは、「小児の救急医療体制が不十分だから」といった説明をします。
そこで、 1~4歳の幼児の生命を救うため、小児の救命救急センターを全国的に整備する必要があると言うのです。
私はつい最近まで、「日本は1~4歳の幼児死亡率が高い」ということを知りませんでした。これを知ったのは、厚生労働省の「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」です。
■ 「ハコ」よりも、「人」
第1回の会合で、「日本の1~4歳の幼児死亡率は先進国の中でワースト1レベル」という報告がなされ、このような状況を解決するため、小児集中治療室(PICU)を全国に整備しようという話し合いが行われました。
議論の中で、小児救急を担当する医師の不足が指摘されました。「ハコ」を整備しても、それに携わる「人」の育成や「ネットワーク」がなければ、小児救急の整備はなかなか難しいようです。
ただ、1つ疑問なのは、なぜ「1~4歳の幼児死亡率」を問題にするのでしょうか─。
厚生労働省によると、生後28日未満の新生児死亡率は世界で最も低く第1位で、乳児(0~ 11か月)死亡率も世界で第3位の低さです。「0~4歳」で考えれば、実はそんなに悪い成績ではないのかもしれません。
このため、「持ち越し説」といわれる考えもあるようです。日本の新生児医療は優秀なので0歳児が救命され、しかし1~4歳の間に亡くなってしまうので、1~4歳の死亡率が高くなってしまうという考え方です。このほか、海外製ベビーフードの有害性を挙げる人もいます。
もし、救急医療体制の不備が原因で1~4歳の死亡率が高いという仮説を立てるなら、他国の救急医療体制との比較データが出てこないとおかしいとも言えそうです。
救急医療体制の整備はもちろん必要ですが、そこで働くスタッフがいなければ機能しませんので、「いかに人材を育てるか」という検討も進める必要があると言えそうです。
詳しくは、堀米記者の「幼児死亡率は先進国ワースト1レベル」をご覧ください。
また、厚生労働省の「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」は下記をご覧いただけたら幸いです。
○ 第3回(4月23日) 重症の小児患者、「助かる命が救えない」
○ 第4回(5月13日) 「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」第4回
○ 第5回(5月29日) 集約化か、救命救急センターの活用か―重篤小児の救急医療
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コメント
平成19年の人口動態調査によると、1〜4歳の不慮の事故による死亡は、全国で年間177人です。
それは不幸なことで、防止できれば望ましいことに間違いありませんが、その方法には議論の余地があります。
繰り返しますが、全国で年間177人です。
これに対して47都道府県に1箇所ずつの施設を作るとするなら、新たな施設によってその全てが救命可能になるとしても、平均で年間約4名ずつの救命です。
そのために、24時間態勢を組むとしたら、各施設で5〜7名の専従医師が、各々年間4名の患者のために365日を交代で詰め続けることになります。
これだけの人数を現場から抽出することを考えるくらいなら、他の方法を考える必要があるだろうと思います。
統計を補足しますと
1位 不慮の事故 177名
2位 先天奇形 158名
3位 悪性新生物 85名
4位 心疾患 60名
5位 肺炎 59名
です。
不慮の事故を究明することはかなり困難です。しかしその背景には100倍ぐらいの重大な外傷があるといわれています。そしてそれを減らすためにオーストラリアは社会の安全性に力を入れています。また幼児の事故の背景には親の半意図的あるいは無知的危険の軽視があります。
先天奇形は確かに多いので、低い新生児死亡の影響を否定できません。肺炎は、医師の啓もうをしっかりすれば現在の救急医療体制でももう少し良くなるかもしれません。
不慮の事故死の中に交通事故関連死亡や犯罪関連死亡は含まれているのでしょうか。実は統計に明るくないのでこの際勉強させていただければ有難いのですが。
前々期高齢者 さま、こんにちは。
「疾病、傷害及び死因分類」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/index.html
この「4.死因分類表(「三 死因分類表」(Excel:47KB)参照」からエクセルファイルがダウンロードできます。
不慮の事故に含まれるのは、
交通事故
転倒・転落
不慮の溺死及び溺水
不慮の窒息
煙,火及び火炎への曝露
有害物質による不慮の中毒及び有害物質への曝露
その他の不慮の事故
となっています。
ところで、厚労省の統計情報データベースのページが廃止され、人口動態調査をはじめとして、統計調査結果のデータのリンクを貼ることができなくなりました。
この時代に何歩も後退といった感があります。
中村利仁様
ありがとうございます。
ほとんどは1~4歳児であってもなくてもプライマリの救急治療で対応すべき病態のように思われます。訓練された救急医がいる所へ搬送されれば例え施設に小児科医・小児外科医がいなくても劇的に死亡率が上がる(救命率がさがる)ことは考えられません。
そのこととふじたん様のご指摘の点を併せて考えますと、「1~4歳の幼児死亡率」をさげることだけを目標に全国の救命救急センターに小児救急専門部を開設する政策というのは、目的としても目標達成の手段としても現実から乖離した政策であるように思いました。
衛生統計が見づらくなっていますね。考え物です。