松澤佑次・住友病院院長インタビュー
ちょうどその頃、CTスキャンが国内に普及しだしまして、体腔内を見られるようになりました。それまでは肥満とは皮下脂肪蓄積のことだったのです。皮膚の上からつまんでみて掴めたら、お前太ってるぞ、ということですね。しかし、CTで腹腔内を見てみると、中に蓄積しているという人が結構いて、その人たちに数値異常があるのです。皮下脂肪の薄い人でも、内臓脂肪があると、数値に異常がある。
どうやら内臓脂肪が直接のリスクファクターであるらしいと分かってきたわけです。そこで、これはむしろ内臓脂肪症候群と呼ぶべき疾患でないか、と発表したのが87年のことです。欧米でも同じころに、マルチプルリスクファクター疾患として、シンドロームXとか死の四重奏とか言われ始めていました。ただし、欧米の場合は単に生活習慣病が複数重なると危ないというもので、キープレイヤーが何かの考察はありませんでした。
続いて90年代はじめごろから、欧米でコレステロールだけを管理しても動脈硬化は防げないということが言われ出しました。ビヨンド・コレステロールですね。スタチンが開発されて、これで動脈硬化は防げると思ったのだけれど、どうもそれだけではないようだ、むしろ高血糖、高血圧、高脂血症が1人の人に集中している状態が大きな要因でないかという考え方に変わってきて、メタボリック・シンドロームの概念が世界的に認められてきました。ただし、まだこの段階でもキープレイヤーについては議論がありまして、数年のディスカッションを経て、昨年4月に内臓脂肪がキーだということで世界的にようやく一つのコンセンサスを得たわけです。
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