松澤佑次・住友病院院長インタビュー
欧米での研究を根拠に、ウエスト径の基準がおかしいと批判する声もありますが、内臓脂肪研究に関しては欧米は後進国です。そもそもウエストの細い太いで病気のあるなしは決まるはずがない。血管疾患のリスクが下がればよいのであって、ハイリスクで生活改善のメリットがある人を選び出す目的を考えれば、今の基準で大きな間違いはありません。今後大きな疫学調査が行われれば、その段階で検討すれば良い話で、今欧米の真似をする必要はないのです。日本のエビデンスに基づいた、日本の診断基準でいくべきです。
やたらとウエスト径の基準を厳しくしようとする動きもありますけれど、生活改善のメリットがあるというのを極論すれば、メタボリックシンドロームは働き盛りの男性と更年期以降の女性だけ気をつければよいものです。たとえば閉経前の女性は、少々数値に異常があっても、血管疾患に関してハイリスクではありません。そういう意味のないものまで引っ掛けるように基準を厳しくするのはナンセンスです。
今後は、リスクを直接定量できる血中アディポネクチン量の測定、内臓脂肪の簡易測定が主流になってくるでしょう。アディポネクチンに関しては既に一般診療として申請中ですし、内臓脂肪の簡易測定も開発が進んでいます。
(略歴)
1941年 和歌山県生まれ
1966年 大阪大学医学部卒業
1991年 同教授
2000年 大阪大学医学部附属病院院長
2003年 住友病院院長
この間、日本動脈硬化学会理事長、日本臨床分子医学会理事長、日本肥満学会理事長などを歴任。
2006年 日本人として初めて国際肥満学会最高賞のヴィレンドルフ賞を受賞。
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