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福島県立大野病院事件第五回公判

滔々としゃべるのを聴いて唖然とした。鑑定結果って、そんなに簡単に変わるものなのか? 着と鑑定された部位が拡大した結果「子宮の後ろ側だけでなく前部にも癒着があったのだから、帝王切開実施前に癒着胎盤を予見できたはず」との検察側主張を裏付けることになった。

 しかし、どうもS助手の行動は辻褄が合わないような気がしてスッキリしないのである。弁護側の反対尋問でも明らかにされたことだが、S助手の専門は腫瘍で、子宮の病理診断に長けているわけではない。

 1月の時点では、医療界を上げての加藤医師支援の動きが広がっており、弁護側の立ててくる鑑定人が分野の第一人者となることは火を見るより明らかで、弁護側の鑑定結果との間に食い違いがあると言われた場合、私だったら自分の方が間違えているのでないかと考えるし、対立がより明確になるようなことは避けたいので、以前の鑑定書以上にエッジを立てるようなことはしない。むしろ、恐ろしくてできないと言うべきか。「専門外の鑑定だったのだから勘弁して」と私なら言って、お茶を濁すと思う。

 特に研究者というのは、どちらかと言えば臆病な人種であり、勘弁してもらいたかったのに許されなかったのかなという感じがしてならない。そうやって考えてみると、鑑定で癒着の範囲を広げてきたのには検察の意思が働いたと見るべきなのだろう。そして以下のように弁護側と押し問答する以上、検察側は、まだ有罪立証をあきらめていないと見なければいけないのだが、しかし、それもどうもしっくりこない。

 検事  証人は判断した根拠を説明できますか。
 S助手  はい。
 検事  写真を示せば説明できますか。
 S助手  はい。
 検事  写真なしで説明できますか。
 S助手  写真はあった方がいいと思います。
 検事  甲〓証(平成19年1月時点での鑑定=捜査事項照会回答書)添付の写真を示したいと思います。
 弁護人  異議があります。検察は平成18年3月で公判維持に足る証拠があるとして起訴しているわけですから、後だしジャンケンのように鑑定をやり直すのはおかしいですし、その文書は不同意にしておりますから。
 検事  癒着胎盤の範囲を示したいもので、やむを得ない事由は証人の証言から明らかです。
 別の検事  この書証は刑事訴訟法321条4項に該当するものとして、後ほど証拠として提出いたします。
 裁判長  留保事項としてということですが、いかがですか。
 弁護人  留保の何も弁護人は不同意にしておりますので、証拠採用されている甲6号証の写真を使えばいいではないですか。

いつもならすぐ判断を下す裁判長が、左右の陪席判事と1分以上相談している。と

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