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ニュース〜医療の今がわかる

患者の声と対話型ADR


和田
「医療機関側が聴く姿勢を持っていればよいが、そうでない場合にそれをどう変えていくのか。現実にできるような体制を整えていくときに、まず中村さんにフェアネスをどう捉えればいいのか伺いたい、土屋先生には医療機関の体制をどうすればよいのか伺いたい、黒岩さんにはメディアとして敵対的でない構図をどう描くのか伺いたい」


中村
「まず院内での安全管理の徹底をすること。安全管理部門の人間は臨床現場と距離を取って、透明性・公平性のある運用をできるようなシステムを持っていることが必要だろう。しかし最初から期待すると、そもそもそれができないから問題になっているのであって、どうすればいいのかという話になってしまう。
少なくとも患者側に対するサポート体制は必要であろう。大きな情報格差が依然としてある。その意味で我々の描く院外ADRにはサポート機能も必須と考えている。患者側自身の理解と納得が実現されることを通じてフェアネスも達成される。
院外ADRに強制的調査権のないことを批判されることが多いのだが、証拠保全をかけてからADRに来ていただいても構わないわけで、その辺りはいきなり訴訟ではない柔軟な構造が取れる」


土屋
「根底に患者側が満足していないことがあるというのがポイント。日常診療からキッチリ対話をするように見直していかなければならないと思う。私は院長になってから、外来を完全予約制で1時間6人までにした。それまでは主治医がどんどん診察を入れて1時間に10人も20人を診るようになっていた。患者さんのためと本人たちは言うけれど、結果としてきちんと対話ができていなかった。そういう風に診療そのものから見直していかないといけない」


黒岩
「前提条件がキッチリできていないと難しいと思う。ミスがあった時に隠したくなるのが自然な反応で本能のようなもの。そのままの状態で対話しろと言ったって、逮捕されるかもしれないと思ったらムリ。米国では、件のベン君の事例をモデルにするにあたって、クリントン大統領が全部出しなさい、その代わりそれは刑事で問わないということをした。罪に問われないということが大前提。メディアの人間として、この問題に関しては内心忸怩たる思いがある。どの立場に立っているのか問わざるを得ない。特にテレビはエモーショナルに患者さんの立場に立った方がやりやすい。患者の声を伝え、一方で取材に応じない病院やドクターを敵として追及するというのはよくある。印象として善良でかわいそうな患者と殺人者に値する医療者という構図にしてしまう。福島県立大野病院事件があって、その後どうなったか。それでメディアはいいのか。この医療崩壊をどうやって食い止めるのかはメディアが抱えている課題だと思う」

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