仙谷由人代議士インタビュー2
がん対策法1年半 忸怩たる思い
――がん対策基本法が成立して1年半経ちます。立法を推進した立場として、現
状をどうご覧になりますか。
医療安全調査委員会に関して、厚労省の示した法案大綱と民主党案のどちらが
好ましいか尋ねるサイト上の世論調査がありましたね。あれを見てみると、現場
の方々が、医療崩壊の危機をどうやって再構築できるのかということと関連して、
医療事故についても非常に危機感を持っていることが分かります。それなのに厚
労省は、変に官僚的に組織を組み立てようとしていて、組織を作れば解決するか
のように思いこんでいます。マスコミの批判を、それで役人はかわすんですな。
いや、かわすというより、むしろ焼け太りと言った方が正しい。現場の危機感を
常識で持たなくなっていることがよく分かります。
「がん」もよく似ていて、がん対策基本法がなぜ必要だったのかという政治的
な意味が、政策担当者に全く分かっていないと思います。米国に遅れること36年
の段階で我々の基本法は施行されたわけです。何をすべきかと言えば、医療水準
を踏まえたうえで標準治療からの遅れを把握し、国民に対してどのように標準治
療を保証するか。それを改めて実施していく機構なり人材をどう作り、そのため
の予算をどうかけるか。その発想で取り組まないといかんのに、今までの対がん
10カ年戦略の延長線上でちょっと修正すればいいとか、各県に計画作らせればそ
れで何とかなると思ってやっている。
そもそも、がん対策基本計画ができた一つの大きな要因は、患者さんが立ちあ
がったことですよ。それを基に国民参加の下でどう広げていくかの視点が必要な
のに、年間の対策予算200億円が300億円になったとか言って、砂漠に目薬を撒く
ようなことにしかならず、忸怩たる思いです。
先日も、ある乳がん患者さんから、対策が予防検診に偏り過ぎでないかと批判
されましたが、その予防検診すら目標達成が危機に瀕していますね。乳がん検診、
子宮頸がん検診に関しては、先進国の中で一歩も二歩もずっと遅れていますよ。
科学的データで受診率50%まで行けば発見率が飛躍的に上がり、死亡率も下がる
と分かっているのに進められない。子宮頸がんのワクチンにしても、「そんな金
のかかることはできん」だけで一刀両断してお終い。どうやったら可能になるか
組み立てようという発想がないんです。
国民と一緒になって、こういうことが必要なんだ、それはそうだ一緒に創ろう
じゃないかと巻き込むことができていない。がん難民が少しでも減るように、あ
る種の運動を作りだしていかないといけないはずです。ところがそういう方向へ
は全く行かない。
これね、なぜそうなるかといえば、行政には、今までの反省、何がマズかった
のかの総括がないんですよ。
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