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ニュース〜医療の今がわかる

仙谷由人代議士インタビュー2


――どうしたら良いでしょう。

 がんは国民に一番分かりやすい話なので、これで火がつけば、産科、小児科、
外科の問題解決の道筋も見えると、私は思っています。国民を巻き込めば、それ
は欲しいですね、じゃあ税金を余計に払いましょうという話になってくるでしょ
う。それが必要なのに、ただ口をあけて医療従事者の窮状も見ないで、がん治療
よくしろとだけ言っても無理ですよ。医療従事者が力を発揮できるような条件を
整えてあげないと。

 国なり地方自治体など政治行政が資源配分を変えるというメッセージを出して、
国民に理解を求めて、具体的人材の育成・配置をしないと何も変わりません。な
おかつ国民・住民が「我々にも役割を果たさせろ」と言って参加してこないとお
かしい。もっと良い医療を作って育てていくには、もはや国民の関与なしでは無
理です。そこまで行かないと医療も良くなりません。そういう意味では県立柏原
病院の小児科を守る会が一つのモデルだと思います。あれが全てではないけれど。


――組織を作ろうとするんじゃなくて、まず国民を巻き込めということですね。

 医療安全調査委員会のような小手先で、マスコミの批判をかわすことを第一義
に物事を組み立てたのでは何も解決しません。現状と根本的な意味が分かってい
ないんですよ。その前に医療の現実を社会で共有することが先です。どんな場合
でも100%患者を救えるのが医療だ、なんて変なドグマで医療者を罰していった
ら、医療者も社会もお互いボロボロになってしまいますよ。官僚が、現場のこと
をいかに分かろうとしていないか、医官とか薬系とか言っても実際には分かろう
としてないというのを実感します。

 薬害肝炎の問題でもそうです。あれを放置したことはヒドイと思って、国会と
周辺でだいぶ患者さんの支援をしました。ところが、その総括をするはずの検討
会で議論されているのが、日本版FDAを作ろうという組織の話だそうじゃない
ですか。焼け太りを象徴するそのような組織に導いていこうとする議論が、肝炎
対策とどういう関係があるのか、官僚が肥大化するだけで、この人たちの頭は一
体何なのかと思います。あれは副作用でも何でもなく製造段階における単なるミ
スで、米国から警告がされていたにも関わらずウイルス混入しているかもしれな
い製剤を漫然と放置した。しかも病院にも患者にもその情報を開示しなかったと
いう役人の行動の問題でしょう。開示すると自分たちの責任になるから。いかに
自分のところの責任を免れるか、その一点のみに主眼をおいて行動した結果、あ
んなに被害が大きくなったわけですよ。そこの反省が全くないじゃないですか。

 必要なのは、いかにプロフェッショナルを養成する機構を作るのか、この機構
のガバナンスをどのように構築するのか、のはずです。日本版FDAが必要だと
いう話の前に、PMDAの5年間とそれ以前とを比較してコストベネフィットを
出さなければ始まらないはず。要するに総括がないんです。

 厚労省の行動は、組織を変えれば物事も変わるというのが終始一貫しています
けれど、それはまことにお粗末な発想です。現実はそうでないのだから。そのこ
とが現在の医師不足をはじめとする現場の崩壊に際しても、どのように対処する
のか明確な方針も示せないし、行動もできないことにつながっているんです。で、
厚労省の過ちの最大の原因は、現場を見ていないことと、総括・原因分析をして
いないことです。

 なぜそういうことをしないかと問うと、財源がないと言います。財務省に怒ら
れることはしたくないと言う。自分たちの仕事を何だと思っているんでしょう。

 後期高齢者医療の問題、リハビリ制限の問題、慢性疾患の在院日数の問題、機
械的に簡単に机上で政策変更するけれど、その結果現場で何が起きるかちゃんと
考えているんですかね。そういう変更後の混乱が次から次に起きてくる。これは
何なのか。臨床研修制度についても、見直すなら見直すできちんと仕切り直せば
いいんですよ。10年経ったら外科医がいなくなるなんてのも、そうならないよう
衆知を集めてやっていくべき話でしょう。どうしてそうならないんですかね。

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