周産期・救急懇談会1
委員はこちら。やたら「あ」行の人が多い。
先にハイライト。特に面白かったのは、海野委員のこの発言。墨東病院で脳出血の妊婦さんが亡くなった件を発言の前提としている。
「厚生労働省の周産期医療対策整備事業に関して。総合周産期母子医療センターが、母子救急の最後の砦であるように報道されているのだが、成り立ちの経緯はそういうものでは全くない。整備事業の主たる目的は、胎児と新生児の救急に対応できるだけのもので整備指針にも脳外科がなきゃいけないとは書いてない。産科、新生児、麻酔科の医師を置けばよくて、麻酔科は常勤である必要すらない。それで辛うじて施設基準をクリアしているような医療機関がかなりある。
当直医に関しても、マスコミが調査して2人いないところが多いというようなことを書いているけれど、墨東は別として、大多数の1人当直のところはそれで違反でない。平成8年にスタートした時には複数の当直が条件になっていた。ところが、それだと一般の医療機関では医師が足りなくて施設基準を満たせないという県が多かった。センターが一つもない県がかなりある一方で、でも現場からはセンターがほしいという声も強くて、平成15年4月21日付で厚生労働省の雇用均等・児童家庭局長から通知が出て、NICUが6床以下の場合はオンコールを置けば1人当直でよいことになった。決して悪いことではなくて、それならできるということで、各県の県立中央病院なんかがどんどんセンター化していった。一方で、センターで医師を一生懸命増やそうとしなくてもよくなって、医師不足の問題が放置されることになった。私がいた長野県では2人当直を置いていたのだけれど、通知が出てからは1人でいいんだからと言うことで、当直代が1人分しか出なくなった。私がオンコールに回ったので給料が激減したのだけれど、当直が2人いないと責められても、そういう決まりになっているのだから仕方ない。
もう一つ周産期救急情報システムも問題にされている。しかし整備指針には作れとは書いてあるが、どう運用しろとは書いてない。実際問題、高次医療機関が限られている地域では、端末を見るより電話した方が早いから作っても仕方ない。先ほど話のあった山形のようなやり方が常道だ。そういうところにもシステムだけはお金を使って作ってしまった。一方でNICUの絶対的不足は放置されてきた。今の時点でもNICUを増やすという方向は出されていないし、同様に後方ベッドの問題も明らかにならない。だから整備事業を見直してほしいと、産科婦人科学会では要望している」
総合周産期母子センターの当直医数を調べた各マスコミの皆さん、こんな話、知ってましたか?
さらに池田委員が続く。
「一昨年の厚生労働省科学研究で全国の総合周産期母子センターにアンケートした。母体の脳血管系の救急について10のセンターが『対応できない』と回答した。『どのようにしたら』と質問したところ全ての施設の責任者が、自分のところに受け入れ体性をつくるのは非現実的であり近くの救急病院や大学病院と連携したいと答えた(後略)」
ハイライトをもう一つ。やはり言ってくれましたの、一言居士、有賀委員。
「積み残しになるといけないから言っておく。資料3の2頁目、都道府県に対して出した通知の『周産期救急情報システム及び救急医療情報システムの運用状況を確認した上で、必要があれば適切に改善するよう検討を行うこと』という項目について。東京都と東京消防庁との関係であれば何となくイメージできるのだけれど、たしかに厚労省が50年代から都道府県ごとの救急医療情報システムは整備を進めているけれど、しかし全県の救急を一体に運用しているような所はない。基本が市町村消防だからだ。それと全県一体の周産期救急とどうやって連携するというのか。この通知をポンと投げて都道府県に考えろというのだが、どういうイメージで考えろといったつもりなのか。要は、50年代から大きなお金をつけたものが成り立ってなかったということなんだが、だからこの通知の趣旨がよく分からなかった。この件を何とかしようと思えば、厚生労働省だけでなく総務省とも連携しなけらばならないと思う」
産科でも消防でも、情報システムはお金かけたけど役に立ってませんぜ、という告発2連発である。墨東病院のことを口実に、使えない情報システムに再度お金の流れそうな予感があるのだろう。私たちも、ちょっとそこはよく見ておかないといけない。
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