文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

後期研修班会議3

過去2回は最初から最後まで録画をしていたテレビカメラがなくなった。個人的には、録っておいてほしかったなと思うやりとりが多かったんだけど。

日本学術会議の『医療のイノベーション検討委員会』委員長である桐野高明・国立国際医療センター総長からヒアリング。最初の15分は、その委員会が今年6月に政府に対して提出した要望
『信頼に支えられた医療の実現~医療を崩壊させないために~』を踏まえつつ桐野委員長がプレゼン。その後で1時間15分ほど質疑応答。

最初のプレゼンから。資料はこちら。「日本の医療というのは先進国型になっていない。先進国型というのは、1.充実した教育体制と厳格な専門医認定制度、2.病院機能の集中化・集約化、3.病院と診療所の密接な連携体制、4.チーム医療の推進と業務範囲の職種による制限の見直し、5.医療安全と患者権利尊重のためのシステムといった5つの特徴があって、そしてどこの国も増大する医療費をどう抑制するか、あるいは賄うか苦心している。日本の場合は大きく見て3つのことが足りないということから政府に対して以下の要望をした。1.医療費抑制政策の転換、2.病院医療の抜本的な改革、3.専門医制度認証委員会の設置。このうち3だけが異質な感じがするかもしれないが、この3こそ今日の会議のテーマでもあるので、なぜこんなことを要望したのか説明する。

医療には、政府、国民、医療提供者の3つのプレイヤーがいて、それぞれが将来に必要なことを考える必要があるのだが、特に医療提供者が信頼を持続的に高めていく努力が足りず、そこの自己努力をやってみせないと他の2者も動いてくれない。自己努力のシンボリックなものが専門医であり、具体的には認証制度が必要だということで要望の内容になった。

ここからは学術会議の結論ではなく個人的な意見になる。専門医制度は医師の自律的専門職能集団が運営しなければうまくいかない。そして、その集団が権威を持って運営するために医師全員加盟型である必要がある。

学術会議では第7部、臨床医学を扱うところだが、そこで既に平成11年に『専門医制度の整備と専門医資格認定機構の設置ついて』という報告を出していて、専門医制度は既にわが国においてほとんど完備しており、プライマリケアの専門医制度の導入は非常に困難であるということになっているのだが、それは本当か。専門医制度の現状として、基本領域の専門医が12万6千人、サブスペシャリティ30弱で8万2千人、その他の領域2万人。プライマリケアの専門医制度は確立していない。専門医制度の問題点は以下の5点。教育プログラム・教育病院の評価が不十分、学会ごと独自に運営され外部評価を浮けていない、養成すべき専門医の総数と地域別の分布が制御されていない、プライマリケアの専門医制度が確立していない、結果として実効性が低く実益もない。特に3番目と4番目が重要。

ということで専門医制度の改革が必要であろう。わが国においては法的な裏付けが必要だと思うのだが、専門医制度の認証機関を設置すること、プライマリケア専門医も含めて数や分布を制御する、そのうえで専門医に対して技術料の評価を行って、押すのと引っ張るのをセットで進めることを提言した。

ここから先は個人の意見。専門医制度成功の条件は、医師の専門職能集団が自律的に責任を持って行うことと、専門医制度の実務を行う組織とその評価・認証を行う組織は分離すること、制度は法的な裏付けに基づくこと、専門医の質だけでなく数と分布についても制御を責任持って行うことだと思う。それによって専門医制度に対する信頼が確立し、専門医の努力が報いられる報酬制度もできることになる。

そこで考えてみると、医局は入局者が多ければ多いほど医局の力が増大する仕組みになっていたので、日本全体という観点で数の制御を行う考え方と協調しにくい。また学会も、入会者が多ければ多いほど会の力が増大し資金も潤沢になる仕組みになっているから同様。医局や学会の利害から独立した組織が数と分布の制御を行う必要がある。

専門医制度のめざすもの。医療の質を医師の専門職能集団が、誇りにかけて保証するものでなければならない。また、あらゆる医師が、プライマリケアも含めた専門医をめざすべきである。戦後すぐなら学校を出てすぐ医師として働けたかもしれないが、今はその頃に比べて情報量が500倍とも1000倍とも言われる。専門医をめざすのでなければ医療の質を保証できない。で、質を保証するためには、教育の質量ともに必要。地域における症例数から言って、必然的に医師の数と分布の制御が必要になる。ただし、医師の専門職能集団が自ら制御する仕組みでないとうまくいかない。そのためには医師全員加盟の全国組織がなければうまくいかない。そのためには、おそらく法的根拠がなければうまくいかない。

医師組織のあり方から見ても、開業医と大学病院や市中機関病院の医師は交流すべきであり、分断することは将来の医療にとっても有害であり、両方参加できる全国組織が必要である。

最後に年令別の医師数グラフを2つ示す。1975年と2004年。1975年は、働き盛りの医師はほとんど開業医だった。そのころに確立した、フリーアクセス、自由開業、自由標榜は、働き盛りの大多数が勤務医である2004年の年齢分布から見れば、時代遅れになっていることは明らかだ」

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス