「自閉症について知ってもらいたいこと」 松田文雄氏の講演
■「自閉症スペクトラム」
(ローナ)ウィングという人が「自閉症スペクトラム」(知的な遅れがない場合から重度の知的な遅れがある場合まで、虹のように連続した一つのもの)という考え方を提唱しました。
これは、カナーが最初に提唱した自閉症の概念、IQ(知能指数)70以上の(知的遅れのない)高機能(自閉症)から、言語コミュニケーションに問題がないと言われている「アスペルガー症候群」、そして「特定不能の広汎性発達障害」と、広く連続体としてとらえる考え方もあります。
■その他の特性
その他の特性としても、いろいろあります。例えば感覚の問題、例えば視覚。ぱっと見て読んでしまう。あるいは、普通の明るさでも非常にまぶしく感じてしまったり。あるいは、すれ違っても気が付かなかったり。あるいは表情が読めない、表情の後ろにある感情が読めない。
あるいは、小さな音に非常に敏感で苦痛であったり、高い声が不快だったり、予測外の音が非常に苦痛であったり、大勢の中で聞き耳を立てて会話することがとっても苦手だったりします。
あるいは逆に、大きな音にも驚かない。あるいは味覚に関しましても、偏食等ですね。おいしいとわれわれが思っていても、非常にまずいと感じていたり。あるいは、それによって偏食が生じていたり。舌の感覚、感触、これが嫌で食べられなかったり、そういったことがあります。
あるいは味覚そのものが、非常にからいものであっても、からくないと感じたり、甘くないと感じたり。皮膚の感覚も、例えば衣類に付いているタグ、感触、素材が不快であったり、痛いと感じたり。
あるいは痛覚が非常に敏感で、注射をしても、われわれが感じているよりも何倍も痛いと感じたり。逆に、かなりひどいけがをしていても痛みをあまり感じないとか。そういったことが見られる場合があります。
あるいは運動の特性として、細かい運動が苦手であったり。あるいは多動、落ち着きがない、こういった特性が見られることがあります。
■特性の理解を
最後のスライドです。これが一つの、私からの今後のディスカッションにつながるような提言と理解していただければと思います。
見方を変えましょう。例えば、私たちから見て苦手や特性と思うところは、実は得意なところでもある訳ですね。しかも、非常にあるこだわりというのは、誠実さ。妥協を許さない。あるいは、とっても正直に、自分に正直に生きている。そんな風に私は感じたりします。
例えば、自分で自分を刺激するような行動。こちらから見て、「なんでこういう行動を取るんだろう」と考えたことが、実は不安を少なくするための行動。でも、それを私たちは「困ったことだからやめてほしい」って思ったりします。
お互いの理解のもとに、互いに歩み寄るということができたら、と考えております。「診断」というのは、実は総論ではないんです。「自閉症」という診断を付けて、その目の前にいるその子が、その子として、どんな特性を持っているのか。「個」として、その子を見るということが、とても大切な気がします。
そして最後に、「幸せに生きる」ということはどういうことなんだろうか。本人にとっての幸せとは、どういうことなんだろうか。私は、これを考えてみたい。
われわれが、「こうだったら幸せなんじゃないか」と思うことって、ひょっとしたら違うかもしれない。そっちの側から、考えることができたらと思います。以上でございます。(会場から大きな拍手)