「宿直」の扱い、「法改正すればいい」―舛添厚労相
舛添要一厚生労働相は4月14日の参院厚生労働委員会で、現在の医療法の「宿直」と労働基準法の「宿日直」の内容が異なっていることについて、「これはみんなで考えて法改正すればいい。まずその作業を、いずれやらないといけないと思う」と述べた。(熊田梨恵)
民主党の梅村聡参院議員が、医療機関は現在の労基法が求める宿日直態勢を維持するのが困難と指摘したことに対して答えた。
病院管理者は、所管の労働基準監督署長の許可を得れば、36協定の締結や割増賃金の支払いなしに、医師に宿日直をさせることができる。ただ、労働基準法の「宿日直勤務」は、「原則として通常の労働は行わず、労働者を事業場で待機させ、電話の対応、火災等の予防のための巡視、非常事態発生時の連絡等に当たらせるもの」と定義されており、夜間の救急外来診療などに応じている医療現場の実情に合っていないと指摘されている。労基法の宿日直許可基準に合わせるには、睡眠時間の確保や宿日直回数の制限も求められる。
一方、医療法は病院管理者に対して医師の「宿直」を義務付けているものの、法律上の定義は明確にされていない。一般的に、外来診療を行わない時間帯での入院患者の急変などに対応するための待機時間などとして想定されている。
舛添厚労相は、「同じ宿直という言葉で、二つの法律上の概念が違う。これはあまり法治国家としてよろしいことではないと思う。せっかく厚生省と労働省が厚労省が一緒になったなら、こういうところに手をつけないといけない」と述べた。さらに、医師の不足や勤務医の労働環境が根本的な問題と指摘した上で、「あらゆる施策つかってやらないといけない。この4月から長期的に医学部定員を増やし、救急医に直接的な財政支援をし、メディカルクラークを増やすとか、一連の政策がある。その中で、どうせあるのだから、労働基準法という武器もそのために使おうということ」と述べた。
このほか、梅村議員は、適正な労働環境と必要な医療提供体制を維持するためのコストが明確に示されなければ、国民側の負担の議論ができないと指摘。「本当の正しい意味での働き方と、それによる医療の提供の仕方。これはパンドラの箱を開けることになるかもしれないが、今まさにここに切り込まないと、国民負担の問題、医療費を増やすことにもつながらない。労働基準局から言うと、いろいろ『今の制度の仕組み』と言うが、今は勇気を持ってパンドラの箱を開けるべき時に来ていると思う。大臣は取り組むつもりがあるか。パンドラの箱を開ける決意があるかどうか」
舛添厚労相は、「一人の人間が旧厚生省と旧労働省(の大臣)をやっていることの意義がまさにそこにあると思っている。ただ、開けようとした時に『閉めろ』というものすごい圧力が外にある。国民のために考えてきちんとやっていきたい」などと答えた。