NICU220床増床に39億円-文科省補正予算案
文部科学省は、山梨大や川崎医科大など国公私立の計24大学病院にNICU(新生児集中治療管理室)やMFICU(母体・胎児集中治療管理室)などに約220床を増やす方針を固め、2009年度補正予算案に当初予算の約10倍となる39億円を計上した。(熊田梨恵)
昨年に相次いだ妊婦の救急受け入れ不能の問題を受け、文科省は昨年末、NICUが未整備の9国立大学病院に最低各6床のNICUベッドを設置するとした「周産期医療体制整備計画」を打ち出しており、当初予算として約10億円を計上している。整備計画は新生児科医の配置などに医療現場が急に対応することは難しいとして、今年度からの4カ年計画として進められていたが、文科省が当初想定していたよりも多くの大学から増床の打診があったため、今年度中に対応できるように補正予算案に整備費として盛り込まれた。
今回の補正予算案では、もともとNICUがなかった山梨大や川崎医科大に新設されるほか、国立大16校、公立大2校、私立大6校の計24校に、NICU54床、GCU(継続保育室)124床、MFICU45床を整備するとした。当初予算と補正予算案によって、国立大学のNICUは244床から317床にまで増えることになる。
ただ、大学病院のNICU増床をめぐっては、新生児科医の数が足りないために、現在の医療提供体制を危うくするとの懸念の声も聞かれる。文部科学省高等教育局医学教育課の担当者は「現場に必要な医師を引き揚げてまでやってほしいというものではないので、そうしなくてもできる病院に手を上げてほしいとお願いしたもの。地域医療に打撃を与えるようなやり方にはしてもらいたくない」と話している。
これについて、青森県立中央病院総合周産期母子医療センター新生児集中治療管理部門の網塚貴介部長は、「総合周産期母子医療センターのような中核病院から医師の引き抜きが起こってはいけない。増床した病院が中核施設として名乗りを上げていくならよいが、特に超低出生体重児などに関しては集約化の流れにあるので、中途半端な規模のNICUをつくって医師と患者さんを分散させるようなことになってはならない。文科省も『地域医療に打撃を与えないように』と呼び掛けているならば、この結果、地域がどうなったかを検証するべき」と話している。
【今回の補正予算案で整備される予定の大学病院】
国立大(16校...NICU36床、GCU105床、MFICU27床)
旭川医科、弘前、新潟、群馬、山梨、信州、富山、金沢、京都、滋賀医科、広島、島根、山口、愛媛、長崎、熊本
公立大(2校...N6床、G7床、M3床)
名古屋市立、大阪市立
私立大(6校...N12床、G12床、M15床)
東京医科、慶応、愛知医科、大阪医科、川崎医科、産業医科
【整備計画に盛り込まれたNICUが整備されていない国立大】
弘前、山形、千葉、東京医科歯科、福井、山梨、岐阜、佐賀、長崎