「統合カリキュラム」から「看護学基礎カリキュラム」へ―文科省骨子案
2.大学における看護系人材養成の在り方に関する基本的な方針
1) 今後の看護職者に求められる能力について
今後、看護職に求められる能力については、以下のことが考えられる。
○ 平成16年度の文部科学省検討会の報告や平成20年度の厚生労働省有識者懇談会の報告を踏まえると、今後の看護職者には、自ら主体的に考え行動ができ、急性期医療から地域医療まで看護を提供できる能力などが求められている。
○ また、患者・家族にとって最適な医療を効率的に提供するため、医師も含めたコメディカルがそれぞれの専門性を発揮できるチーム医療の調整役としての高度なコミュニケーション能力が求められている。
○ 特に、専門職はその専門性を生涯にわたって開発していくものであり、学士課程教育においては看護専門職としての自発的な能力開発を継続するための素養の育成や看護の向上に資する研究能力の涵養なども重要である。
2) 大学における今後の看護系人材養成の基本的な方向性について
基本的な方向性については、以下のことが考えられる。
○ 看護系大学においては、医療の高度化や看護ニーズの多様化等、社会の要請に対応しうる看護職を養成することが社会的な使命である。
○ 大学における看護系人材の養成については、学士課程教育で完成できるものではなく、今後、専門分野を学ぶための素養の育成が強調されるべきである。
○ したがって、学士課程における看護系人材養成は、学士課程段階で特定領域のスペシャリスト養成を目指すのではなく、広く豊かな教養や判断力を持ち、専門職として自己研鑽を続けることのできる質の高い看護専門職者の基盤作りが必要である。
○ 看護職者として、各職場の業務を実際に遂行するのに必要な知識・技能であって、看護師免許取得後に修得することが適切なものは、各職場において卒後研修として修得する体制が必要である。
○ 高度専門職業人(スペシャリスト)として求められる教育に対応できるよう、大学院における教育等を充実していく必要がある。
3) 大学における今後の看護系人材養成の具体的な方策
具体的な方策としては、以下のことが考えられる。
○ 学士課程教育においては、看護専門職の基盤を形成することを目的とし、今後も必要な教育を効率的に行うために、三職種に共通する看護学の基礎を体系的に教授する。
○ それと同時に、学士課程教育では、医学・医療の高度化に伴い、看護師教育の一層の充実を図る。
○ これに伴い、保健師教育に固有の教育は学士課程教育の段階では必修とせず、助産師と同様に将来的には大学院化の可能性も考慮しながら、当面は学士課程教育の段階で選択性、あるいは専攻科や大学院の整備状況によっては、学士課程終了後において教育する。
○ この場合には、学生によっては学士課程教育の段階で保健師教育を修めないことも考えられるが、健康保持増進や疾病予防、地域における看護活動の基本的知識等は、三職種に共通するものとして、すべての学生に対して、学士課程教育で引き続き教育すべきである。
○ また、就労後の研修を効果的に実施するため、看護系大学においては、卒後の新人研修への支援が求められると考えられることから、今後関係省庁と連携して、具体的な在り方を検討する必要がある。また、専門的な教育を求める学生や社会の高度専門職業人のニーズに対応するため、大学院教育の充実をさらに推進する必要がある。
○ なお、保健師教育及び看護師教育を充実していくため、以下のような体制が整い、適切な教育課程を実施できる大学は、学生のキャリアパスを拡げるという観点から、今後も保健師教育を含めた教育を実施することができるものとする。
・ 保健師・看護師教育を十分に行えるカリキュラムであること。
・ 各大学の教育理念に基づいて必要な保健師教育実習施設が確保されていること。
・ 教育体制が十分であること。
・ 学生の高い学習ニーズがあること。