「統合カリキュラム」から「看護学基礎カリキュラム」へ―文科省骨子案
3.保健師教育及び助産師教育の在り方について
1) 今後の大学における保健師養成の在り方について
これまでの看護学基礎カリキュラムによる保健師養成の質について問題点を以下に整理した。
○ 看護系大学の急増が保健師に必要な実習施設の確保を困難にし、保健師教育の内容を希薄化させている。
○ 個人に顕在化した健康上の課題や潜在している健康上の課題を予測、解決または予防するために組織的に取り組む能力を備えた保健師の養成ができない。
○ 保健指導の対象の複雑化(精神保健上の問題や児童虐待など)が、実習の場を限定している。
○ 実習が卒業要件とされていることで、学生のモチベーションが低下している。また、そうした学生に対応する保健師の時間やエネルギーの損失が住民サービスの低下につながる。
このような問題点については、以下のような対応が考えられる。
○ 保健師教育を卒業要件とすることは見直すこととする。これにより、各大学は保健師教育選択制コースの設置や大学院において保健師教育を行うなど、大学の理念や特色を反映した弾力的な教育体制の構築が可能になる。
○ 保健師が取り組む健康課題は複雑化し、活動の場も拡大している。また、施策化能力や企画調整力は、活動領域を問わず求められ、組織のリスクマネージメントや経営に関わる力量も求められている。こうした力量を持つ保健師教育へのニーズに対応するため、専攻科や大学院を充実していくことが必要である。
○ 今度拡大する保健師の活動の場を反映した多様な保健師像に基づく実習内容を検討する。
ただし、このような対応については、今後、保健師の役割の整理や、卒前・卒後の教育内容の整理を行い、免許付与時点での人材像を明確にしていくべきであるといった指摘もある。
2) 今後の大学における助産師養成の在り方について
大学における助産師教育について、以下のような意見があった。
○ 学士課程における助産師課程は、カリキュラムが過密化し、選択できる学生が全体の1割程度に限られているという問題がある。
○ 今後、助産所や病院における助産師外来・院内助産所で自律的に出産に関わる助産師へのニーズに対応するため、専攻科や大学院を充実していくことが必要である。
○ 一方で、現在の助産師不足や学生のニーズに対応するためにも、学士課程における助産師養成は助産師教育の内容を見直しながら、引き続き選択制で行われるべきである。