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揺れる「地域医療への貢献」 ─ 中医協・DPC評価分科会


■ 救急・小児救急医療の実施状況及び救急における精神科医療への対応状況による評価 → △
 

[西岡分科会長]
 これからが非常に重要な救急の問題。救急では、実際に投入した医療資源量と、DPCの点数との間にかなり大きな差があることが指摘されている。「今まではそれを調整係数でカバーしてきた」という意見を頂いている。

 そのような意味で、これを「新たな機能評価係数」にできるか。診断群分類に反映できるのか、齊藤先生、いかがだろうか?

[齊藤壽一委員(社会保険中央総合病院名誉院長)]

齊藤壽一委員0619.jpg 救急の問題は、前回(08年度)改定のときに分科会でも議論した。(救急の機能評価係数は)構造的に難しいところがある。救急で緊急入院した患者は、診断名が付かない状態が24時間ぐらい持続する。

 そういう状況で、Diagnosis Procedure Combination(DPC、診断群分類 )に入れようというのは、構造的に無理がある。

 そこで、日本病院団体協議会が主張するように、救急については、入院当初からの24時間は一般の手術同じように出来高部分に移してはどうか。

 ただ、救急のための準備体制は多くの病院でエネルギーを注いでいるので、例えば医師や検査技師の配置などを係数で評価してはどうか。

[小山委員]
 齊藤先生のご指摘のように、どの医療機関も救急体制が大変。24時間365日、いつでも検査ができる、薬が出せるという体制に非常に投資しているが、そこの評価ができていない。
 そこをどのぐらい評価できるかを検証しながら、「やはりここは出来高じゃないと無理だよね」という結論になっていくような感じがする。

[西岡分科会長]
 救急というときに問題になるのは、2次救急か3次救急かということ。ヒアリングでも、「2次救急が議論されていない」という意見が出された。そこで、「どの指標を採ればいいのか」ということが問題になる。

[相川直樹委員(財団法人国際医学情報センター理事長)]
 救急は、人によっていろいろな考え方がある。これは2次救急も3次救急もそう。

相川直樹委員0619.jpg ただ、現場で困っているのは、結果的に不要だったと思われるような高額な検査(MRIなど)をやらなければいけないという状況がある。

 例えば、急性に意識を消失した患者で、早くMRIなどの検査をして、2時間以内に脳梗塞だと診断すれば、2時間に(血栓溶解薬)「t-PA(アルテプラーゼ)」などのかなり成績の良い治療に移行することができる。

 しかし、MRIをやった結果、脳梗塞ではなかったという場合もある。そのような患者さんが入院した場合、外来での検査費がDPCに包括されてしまう。

 齊藤先生や小山先生のご指摘のように、(救急搬送されて)24時間以内に入院した患者さんに対する外来での処置は、出来高にする、"切り離して外に置く"ということも検討すべき。

 また、(西岡分科会長が指摘した)2次救急と3次救急は体制上の問題。救急患者が来た時点で、2次救急か3次救急かは分からない。

 例えば、ひどい頭痛で来た患者が独りで歩ければ、これは3次救急ではない。しかし、すぐにクモ膜下出血が起こって、場合によってはクリッピング手術をしなければいけないようなこともあるので、「2次」「3次」という言葉で「新たな機能評価係数」に反映することは、言葉の定義の上で難しいと思う。

 あと、(救急医療を評価する指標について)どこに○を付けるかは、意見を求められれば話したい。

[西岡分科会長]
 ぜひ、お願いします。(笑い)

[相川委員]
 では、まず最初に私の結論を言って、後で理由を述べたい。

評価指標(救急).jpg 「救急車で搬送され入院した患者数/全DPC対象患者」が○。

 それから、「入院初日に初診料の時間外・深夜・休日加算が算定されて入院した患者数/全DPC対象患者」も ○。

 これは、「救急車で搬送され入院した患者数/全DPC対象患者」とダブった場合はどちらかにする。

 また、「救急車で搬送され入院した患者で、入院精神療法又は救命救急入院料において精神保健指定医が診療した場合の加算が算定されている患者数/全DPC対象患者」が、○。

 「入院初日に初診料の時間外・深夜・休日加算が算定されて入院した患者で、入院精神療法又は救命救急入院料において精神保健指定医が診療した場合の加算が算定されている患者数/全DPC対象患者」も ○。

 結論として、これら4つが○。以下、分母について理由を述べる。

 分母に着目すると評価指標には、(1)分母がない場合(実数) (2)全DPC対象患者 (3)2次医療圏の人口―という3種類がある。

 救急患者をどのぐらい診るかは、病院の規模などに応じて社会から期待されているので、分母は設けた方がいい。「分母あり」とした場合、「全DPC対象患者」と「2次医療圏の人口」のいずれを分母にすべきか。

 病院が「2次医療圏」の境界近くにある場合を考えると、「2次医療圏の人口」を分母にすることは適切ではないので、「全DPC対象患者」を分母にする方がいい。

評価指標(救急)2.jpg 次は、分子。

 分子を何にするかは、救急の定義にも関係する。「救急」として、一般的に理解されやすいのは、「時間外・深夜・休日」。そのような時間に対応できるということは、病院の機能を反映する。

 もう1つは、救急車。
救急の評価を「時間外・深夜・休日」に限定してしまうと、月曜日の午後2時に来た患者が対象にならなくなる。
しかし、月曜日の午後2時に来た患者が救急患者にするかどうかは、(病院側の判断という)恣意的な要素が入ってしまうので、時間内の患者については、「救急車」という指標を分子に入れるべき。

 では、小児について特別に扱うべきか。私は小児も成人に含めて「患者」ということでいいと思う。

 それから、「緊急入院」に関しては、定義が非常に難しい。恣意的なものがあるので、「緊急入院」を分子にしない方がいい。

 以上から、先程の4つが○になる。

[西岡分科会長]
 ありがとうございます。

[小山委員]
 緊急入院の定義については、保健上(?)7項目あるので、これを使えば問題ないと思うので、検討していただきたい。

 相川先生の意見と大筋で同じだが、小児と精神が異なる。これらは統計的に患者数が非常に少ないので、割合ではなく実数で評価した方がいい。小児も精神も、専門医がいなければできないので、「何人を受けたか」という実数で評価すべき。

[西岡分科会長]
 ありがとうございます。小児救急と精神科救急は、急性期医療全体の中でも、(基本問題小委員会で)ディスカッションしていただく。政策医療という面があるので、そこの部分でディスカッションしていただくという(基本問題小委員会で審議する)項目にも入っている。それを考慮して、ここの議論をしていただきたい。

 そうすると、相川委員が出した4つを候補としてよろしいだろうか。これら4つをすべて採用するのではなく、(4項目は)オーバーラップしているので、△ぐらいにして、データを出していただくというのではどうか。 よろしいだろうか?

 ▼ 反対意見なく、了承。

[酒巻哲夫委員(群馬大医療情報部教授)]
 「複数の診療科における24時間対応体制」については、特別調査を実施するように、なんらかのマークは入れていただきたい。

[西岡分科会長]
 委員の方々から、(体制を評価するよう)意見を頂いているので、これも△で残させていただくということでよろしいだろうか?

[相川委員]
 私も、それに賛成。

[西岡分科会長]
 では、そういう形で、これから資料を集めていく指標にしたい。もちろん、(新たな機能評価係数として採用されなかった項目でも)急性期医療全体の中での救急に対する評価ということで、基本問題小委員会に「ぜひ、この項目を評価してほしい」ということをお伝えする。

[長谷川補佐]
 すみません、もう一度、(項目の)確認を。

[西岡分科会長]
 はい。救急に関しては次の4つ。

1. 「救急車で搬送され入院した患者数/全DPC対象患者」
2. 「入院初日に初診料の時間外・深夜・休日加算が算定されて入院した患者数/全DPC対象患者」
3. 「救急車で搬送され入院した患者で、入院精神療法又は救命救急入院料において精神保健指定医が診療した場合の加算が算定されている患者数/全DPC対象患者」
4. 「入院初日に初診料の時間外・深夜・休日加算が算定されて入院した患者で、入院精神療法又は救命救急入院料において精神保健指定医が診療した場合の加算が算定されている患者数/全DPC対象患者」

 もちろん、これらはオーバーラップするので、重なる部分は省いて(事務局に)分析してもらう。

[長谷川補佐]
 そうすると、(分母を)「全DPC対象患者」と「2次医療圏の人口」は、今回は見送るということだろうか?

[西岡分科会長]
 はい。

 ▼ 質問をよく把握していなかった模様。「はい」と言われ、事務局は慌てる。

 ......あ、えっ?

[相川委員]
 小山先生の指摘(小児と精神は実数評価)をまず先に、その後で私も......。

[小山委員]
 小児と精神科の患者は非常に少ないので、実数で評価してあげるべきだと思う。小児と精神科も困っていることは事実で、どこも撤退している。

 それから、「2次医療圏の人口」(という指標)をなくすべきではない。都会ではない所にある病院を評価する指標になり得るので、1つか2つは項目に入れるべき。

[西岡分科会長]
 「救急車で搬送され入院した小児の患者数」を......?

[小山委員]
 いや、「緊急入院の小児の患者数」(実数)を入れていただきたい。小児の場合は救急車ではなく、親が自分の車で連れてくる。

[西岡分科会長]
 確かに、小児はほとんどが緊急入院。

 ▼ 「緊急入院の小児の患者数」(実数)を候補に残すことを了承したかに思えたが、後に宇都宮企画官が異論。

 それから、「2次医療圏の人口」については......。

[伊藤澄信委員(独立行政法人国立病院機構医療部研究課長)]
伊藤澄信委員0619.jpg 「2次医療圏の人口」(という指標)は、2次医療圏におけるその病院のシェアを見ているだけではないのか。とすれば、2次医療圏が小さい所でのシェアが大きくなるのは当然なので、これを「新たな機能評価係数」として評価するのは疑問。

 もう1点、(資料)「D-5」(支払いを最適化する方策)に「地域として必要な機能の整備と提供」という、プロセスではなくストラクチャーに対する評価として書いてあるのに、ここにはプロセス評価の指標しか入っていない。

 とすれば、夜間に小児科医がいるとか、緊急対応できる精神科医がいるかという指標の方が、病院が負担する固定費に対する指標としては妥当。

[相川委員]
 休日や夜間に緊急入院の患者を受け入れても、内科医1人、外科医1人の病院もある。

 しかし、すべての診療科の医師が当直していて、高度な専門医療ができる救急病院もあるので、今回(2010年度改定で)入れるかどうかは別として、評価すべき。

[西岡分科会長]
 先程、(2次医療圏の人口の議論を)飛ばしてしまってすみません。

 小山委員から指摘があった「地域医療への貢献」を評価するという意味で、次の2つを候補として残すということで、よろしいだろうか?

 1. 「救急車で搬送され入院した患者数/当該医療機関の所属する2次医療圏の人口
 2. 「入院初日に初診料の時間外・深夜・休日加算が算定されて入院した患者数/当該医療機関の所属する2次医療圏の人口」

 ▼ 反対意見なく、了承。

 ありがとうございます。

[保険局医療課・宇都宮啓企画官]
 小児救急で(小山委員から「緊急入院の小児の患者数」(実数)を評価すべきとの)意見があったが、これだけの指標ではなく、例えば6歳未満や15歳未満については救急車以外の救急も入れるなど、いくつかの指標を組み合わせるなどのバリエーションがあってもいい。

 そういう「若干の広がり」も含めて、今回は△を付けていただきたい。いずれにしても、救急は基本問題小委員会でも議論いただくので、そういう「含み」を持たせた形でいかがだろうか?

[西岡分科会長]
 ありがとうございます。

[宇都宮企画官]
 あと、それからもう1つ。

 精神科など多くの診療科が待機するので評価すべきとの意見があったが、「入院時医学管理加算」で同様の要件を設けているので、そちらとの整合性、「出来高と二重評価になるか」ということも含めて、ちょっと考えなければならない。これは、基本問題小委員会での議論にかかわってくる。

[松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)]
 それぞれの病院が2次医療圏でどのような機能を果たしているかは重要だが、地方では基幹病院が隣の2次医療圏の患者を全部引き受けなければいけない場合が多い。

 このため、今すぐに「2次医療圏の人口」を評価指標とするのはかなり難しいと思う。そこで提案だが、「様式1」に患者さんの医療圏番号を入れていただきたい。(他の委員、声を出して大笑い)

 これは、実はそんなに難しい話ではなく、郵便番号と医療圏番号の対応表さえ作ってしまえばできる。もし、地域の分析をするならば、それをやらなければいけないだろう。 (他の委員、一斉に大きくうなずく)

 諸外国では、様式にzipコードが入っているが、日本でzipコードを入れてしまうと患者さんが特定されてしまう可能性があるため、これは非常に危ない。少し大きな枠で患者さんの住所地情報を取った方が、(2次医療圏人口を指標とする)議論を深めるためにはいい。

[西岡分科会長]
 これについては、「様式1」の議論でさらに詰めていきたい。

 それでは、救急についてはこのような形で、オーバーラップしたところは統合した形でやっていただかなければならない。そこは、事務局でご判断いただき、データを出しながら議論を進めていきたい。

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