揺れる「地域医療への貢献」 ─ 中医協・DPC評価分科会
■救急の診療報酬で、医師偏在を解消?
前回の2008年度診療報酬改定では、医師不足への対応(病院勤務医の負担軽減)が緊急課題とされ、 産科や小児科、救急医療を重点的に評価するという"打ち上げ花火"の音が派手に鳴ったが、対象病院や基準を絞りすぎたため、不発に終わった。
逆に、「入院時医学管理加算」の施設基準の見直しにより中小規模の救急病院が加算を取れず、深刻な経営悪化に追い込まれたとの悲鳴も上がっている。
次の2010年度改定で大病院の救急医療が手厚く評価されることはほぼ確実といえるが、問題は中小規模の救急病院。「地域医療への貢献」をどのような基準で評価すべきか、議論が揺れている。
しかし、厚生労働省としては、大病院の救急医療を評価すれば"真の目的"を達成できるのかもしれない。
医師の地域偏在を解消するため、厚生労働・文部科学両省の「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」(座長=高久史麿・自治医科大学長)が2月18日にまとめた最終報告には、新人医師に義務付けられている初期研修のカリキュラムの見直しが盛り込まれた。
これにより、来年度から「必修科目」が内科、救急、地域医療研修の3科目に絞られ、産婦人科や小児科などが「選択必修科目」になった。
この議論の過程で、産科や小児科を必修科目から外すと現在の到達目標をクリアできないのではないかが問題になった。
これについて、矢崎義雄委員(独立行政法人国立病院機構理事長)は、「救急で産科も診れるし、小児も診れる」と指摘。高久座長が「小児科の先生方も、『小児を全部回らなくても小児救急は回してもらいたい』、精神科の先生も『精神救急』とおっしゃる」と述べて賛同した経緯がある(2月2日の検討会)。
つまり、産科や小児の救急について充実した研修体制を取れることが今後の臨床研修病院に求められている。これを後押しするため、大病院の救急医療を診療報酬で手厚く評価することが考えられる。その行き着く先は、DPC病院の偏在解消、そして研修医の計画配置だろう。
一方、中小病院の救急医療をどのように評価すべきか、同分科会の委員も頭を悩ませている。中小病院の「地域医療への貢献度」を評価する基準として、厚労省は>「年齢補正係数」と「2次医療圏人口」という基準を提案しているが、予定通りに進むだろうか。
6月19日の中医協・DPC評価分科会では、「新たな機能評価係数」の候補を10項目まで絞り込んだが、救急医療の議論はまとまらなかった。
救急医療の評価を含む13項目について、委員の発言(要約)は以下の通り。
▼ なお、DPC評価分科会の指揮を執る保険局医療課の宇都宮啓企画官は、かつて医政局医事課の医師臨床研修推進室長として臨床研修制度の導入に貢献した敏腕の医系技官(慶大医学部卒)。
一方、同分科会の"ご意見番"である池上直己委員は慶大医学部教授、相川直樹委員は同大名誉教授。相川委員は、医師の卒後臨床研修制度見直し案について検討した医道審議会・医師臨床研修部会で部会長を務めている。