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国立がんセンター麻酔科改革が地域に波及する-宮下徹也氏、後藤隆久氏インタビュー


■国立がんセンターの使命
後藤:その意味でも、この国立がんセンターという病院は"ツボ"といえるでしょう。この現場から提案していくと、国に対して直接実績を示すことができます。地方で見えないことが、国立がんセンターでやると見えるということがあります。
 
--国立がんセンターだからこそ示すことができるものとは何でしょうか?
 
宮下:たとえば、現在は手術部門の体制整備に力を入れているところです。この6月からはICUを麻酔科医がみる体制にして、外科医が手術に専念できる体制を整えつつあります。いわゆる"クローズドICU"ですが、日本では9%程度しかありません。こうしたシステムをこの国立がんセンターから示していくことができると思います。国立がんセンターは医師の定員数が決まっているため、常勤医が少ない科が多いです。今後、各科をサポートしていくような周術期医療体制のモデルを考えて提案していくことができると思っています。
 
--麻酔科がサポートすることで、がんセンター全体の病院機能を底上げしていけるということですね。
 
宮下:国立がんセンターはナショナルセンターであり、その中でも国に近いセンターです。他に追随するようなことをしていてはいけないでしょう。新しいことに着手していくべき組織だと思います。
 
後藤:麻酔や周術期管理について研究すべきことはたくさんあります。このがんセンターには患者さんがたくさん来られますので、リサーチするにも適しています。内科系や外科系のがん専門医にとって既にそうであるように、国立がんセンターを麻酔科医のキャリアメイキングにとっても魅力的な場所としていけば、医師も集まってきます。まだ数年はかかるでしょうが、ぜひともそこまで到達してほしいです。
 
宮下:今、麻酔科医が各ナショナルセンターを回って、心臓(国立循環器病センター)、小児(国立成育医療センター)、救急(国立国際医療センター)の麻酔を研修できるような体制を整えつつあります。せっかくのナショナルセンターですから、この資源を有効に利用しないという手はない。がんセンターの麻酔は単純なものが多いので麻酔科医にとってはあまり魅力がなく、なかなか麻酔科医が集まりにくいという面はあります。そんな中でもこうした教育プログラムを整えていけば、人材も集まり、育っていくと思います。がんセンターでできる教育プログラムというのは、まだまだあると思っています。地域の基幹病院での応用も考えていけるのではないでしょうか。
 
--このように変わっていけば、麻酔科医に対するイメージも変わってくるのでしょうか。
 
後藤:大学や地域基幹病院を離れ、フリーで働くようになった麻酔科医たちにも、国立がんセンターでこういうことが起こっているということを知ってほしいと思っています。ただ、フリー麻酔科医も、好んでそうなったわけではなく、肉体的にも精神的にも追い詰められたあげくフリーになった人がたくさんいることも知っていますが。
 
--どういうことでしょう。
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