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「がん治療認定医」を知ってますか?―専門医ではない、がんのよろず相談窓口ドクター

 がんについてのよろず相談が受けられるお医者さんというイメージ―。「がん治療認定医」という言葉を聞いたことがあるだろうか。がんは日本人の死因のトップであるにもかかわらず、専門が細分化され過ぎているために医師によって勧める治療法もバラバラで、インターネットや雑誌に溢れる情報も信頼できるかどうかが一般からは分かりにくいなど、がん医療をめぐる問題は多い。こうした中、どこに行って何を聞けばよいのか分からない患者のための相談窓口をつくるために生まれたのが「がん治療認定医」だが、まだまだ国民に知られていない制度だ。(熊田梨恵)

 がん医療に「スーパードクターは存在しない」―。 
 日本がん治療認定医機構(今井浩三理事長)が17日に開いた、認定医創設3年を記念した報告会での講演で、西山正彦理事(埼玉医科大国際医療センタートランスレーショナルリサーチセンター教授)は言い切った。
 
 2008年の日本人の死亡者数は約114万3000人(厚労省調べ)。死因のトップとなるがんで約34万3000人が亡くなっており、2位の心疾患約18万4000人の倍近い人数だ。団塊の世代が高齢化を迎えて4人に1人は高齢者になるとされる2015年には、がん患者は533万人に上るという試算もあり、日本人の半数ががんで亡くなる時代が来るとも言われている。 
 
 がんがこれほど日本人にとって重大な疾病になっている一方で、がん医療をめぐる問題は多く、複雑だ(がんが分かりにくい一例)。それらを少しでも解消しようと、がん医療にかかわる医師らが集まって生み出した総合的にがんを診る認定医資格が「がん治療認定医」で、現在約6000人が認定医として働いているという。しかし、この資格について国内での認知がまだ進んでいないとして、一般公開の報告会が開催された。
 
 西山理事は講演の中で、認定医制度ができる経緯は「患者の皆さんの声だった」と語った。「本邦のがん医療は実に惨憺たるもの」と述べ、日本のがんを取り巻く問題として、▽国内にがん治療の専門医がいない、いても誰だか分からない▽勧める治療が十人十色▽外国で使える標準薬が使えない▽がん専門病院が少ない▽信頼できる情報が少ない―などを挙げた。
 「最終的にはこれらのことから、『がん難民』という新語を生むことになった。これは、医療側にとって極めて恥ずべきこと。反省しなければいけないこと。がん対策基本法が患者の努力によって制定、施行されたことは医療者にとっては最大の怠慢。これらの声に応えなければならない。これ以上不信を増幅してはならない。一刻も早く、がん医療基盤の根本からの見直しと改善が必要で、分かりやすいがん医療制度と専門性の担保が努力目標になった。そのためには、実力を伴うがん治療医の養成が必要。『がん治療医の養成』ではなくて、『実力を伴うがん治療医の養成』」と述べ、この視点と今後増加が見込まれるがん患者への医療ニーズが、認定医創設の起点になったとした。
 
 西山理事は、がんは初診に始まって終末期医療までの流れがある上、手術や薬物療法、放射線療法など各領域で高度な医療が展開されているとして、「全層のプロは不可能。専門性が高い医師にバトンタッチできなければ、医療の底上げはできない」と述べ、トータルに患者を診ることができる医師と、専門性の高い医師の両方が必要だと主張。全人的にがん患者を診られる医師が「がん治療認定医」だと説明した。  
  
 
 と、ここまでは分かりやすかったのだが、この報告会は一般向けとは言うものの中身は専門的で難しく、がん医療にかなり詳しい患者か医療者でなければついていけない内容だったように思える。そのため、以降に報告会の内容から「がん治療認定医」の概要をまとめてみた。

■3学会が集まって認定医制度を創設
  
 2005年に日本医学会が「がん治療認定医」の創設を提言。10年間で数万人の認定医を臨床現場に送り出すことを目的に、「日本癌学会」「日本癌治療学会」「日本臨床腫瘍学会」の3つの組織が一緒になって認定医創設に動いた。これまでの認定医や専門医は学会が主体で創設されてきているが、この認定医は3学会の理事らがボランティアで非営利の同機構を作り、認定医の要件やカリキュラム、試験内容が考えられたものだ。
 
 認定医になるには、がんセンターなど機構が認定する施設での研修を終えた上で、機構が年に一回開くセミナーを受講して臨床やコミュニケーションの知識を身に付けることが必要。2007年には第一回の資格試験が行われ、3回の試験を終えた08年時点で5962人ががん治療認定医の資格を取得し、国内のそれぞれの病院で働いている。
 
   
 しかし、「がんを全人的に診る」と言ってもイメージが漠然としている。報告会の内容からもがん治療認定医とは具体的に何をする医師なのかがあまり見えてこなかった。一体どんな医師なのだろうか。すでに存在する多くのがん専門医とはどこが違うのだろうか。
 

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