入院初期の点数引き上げを了承 ─ DPC評価分科会(6月29日)
■ DPCにおいて今後検討すべき課題
厚労省は6月29日の中医協・DPC評価分科会で、「新たな機能評価係数」については論点を示さず、「DPCにおいて今後検討すべき課題」を示し、意見を求めた。
「今後検討すべき課題」は、 「Ⅰ. 診断群分類点数表の見直し」と「Ⅱ. DPCにおける調査」の2本柱。このうち、 「Ⅰ. 診断群分類点数表の見直し」の議論を求めた背景には、6月24日の中医協・基本問題小委員会での西澤寛俊・全日本病院協会会長の指摘があると考えられるので、まず西澤会長と厚労省とのやり取りを紹介する。
< 6月24日の中医協・基本問題小委員会 >
[西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)]
今、いろいろな意見が出たが、「調整係数」を廃止して「新機能評価係数」を付けることになっているので、何らか(の係数)は付けなければならない。
そうすると、確かにⅠはDPC病院だけの考え方だと思う。この項目自体を検討するのはいい。特に1番(正確なデータの提出に対する評価)は、誰が見てもそうだなと思う。
ほかの3つ(Ⅰの2~4)については、「これは駄目だ」という意味ではないが、例えば(診断群)分類ごとに加算する方法と、あるいは全体の係数にするとどうなるとか、もうちょっと材料を頂きたい。
(2~4の)3つの項目は今回(2010年度改定の導入に向けて)きちんと検討していただいて、納得いただければ導入可能かなという感じがする。(中略)
[遠藤久夫委員長(中医協会長、学習院大経済学部教授)]
事務局(保険局医療課)にお聞きしたい。今後、Ⅰは基本問題小委員会で(導入可否の議論を)詰めていくということで、対応は可能だろうか?
[保険局医療課・宇都宮啓企画官]
はい。あの......。それで、どのようなデータを......、今度、出せばいいのかというご指示をいただければ、うちもデータを出せるが......。
[遠藤委員長(中医協会長)]
どのようなデータが必要かは、恐らく個別にまた出てくると思う。本日もいろいろ......、先ほど、西澤委員からも出てきたと思うが......。先ほど、西澤委員がおっしゃったのは......、えっと......。
[西澤委員(全日本病院協会会長)]
すみません、個々の(診断群)分類ごとの評価(DPCの点数)がどうか(適切か)ということ。あるいは、すべての患者が恩恵を受けること(機能評価係数に関する評価)か、一部の患者だけ(が恩恵を受けるので加算で対応すべきこと)なのかなど、確か昨年の4月ごろのDPC評価分科会で出た資料を基にした議論が必要ではないか。それに関するデータや考え方を示していただきたい。
▼ つまり、現在のDPC点数(診断群分類)できちんと評価されていないものがあるから、まずそれを手当てしてから機能評価係数の議論に進むのが筋ではないかという指摘。
[遠藤委員長(中医協会長)]
企画官、そういう内容も含めてということ。今後、どういう要求が出てくるかは今後の議論になるが......。
▼ 西澤委員は、単に小委での議論に必要なデータの提出を求めているだけではないと考えられる。
(しばらく沈黙。事務局、相談中)
[宇都宮企画官]
すみません、個々の分類で、というのは「MDC分類」(18分類)ぐらいの関係だろうか? 1400とか、どの程度、細かい分類で出せばいいのか......。
▼ この時点では、西澤委員の要求について「データを出す」という意味にとらえていた模様。なお、「MDC分類」は、DPC点数表の最初の分岐となる大きな分類で、「神経系疾患」「眼科系疾患」など17分類と「その他」を合わせて計18分類ある。例えば、「MDC01」は、神経系疾患を指し、「MDC02」は、眼科系疾患を指す。この分類に沿って、「手術あり」「手術なし」などのツリーがそれぞれぶら下がっている。一方、診断群分類は約2500あり、14桁で構成されるDPCコード(診断群分類番号)が割り振られている。このうち、入院期間に応じた包括点数が設定されているのが1572区分ある。
[西澤委員(全日本病院協会会長)]
考え方......です。「考え方」を示していただきたい。
やはり、DPCは個々の診断群ごとにしっかりした点数が付いていれば、ほかのもの(機能評価係数など)は何も必要ないという考えもあるのではないか。
そういう意味で、なぜ機能評価係数で調整するのか、そのあたりの考え方をしっかりしていただきたい。(特定機能病院に有利な)「複雑性指数」も、それなりに、その疾患に点数を付ければ他の加算(や新たな機能評価係数での評価)は不要なのではないかという考えもあると思う。
ですから、DPCの基本的な考え方になるのではないか?
[宇都宮企画官]
......分かりました。個別のデータというよりは、そういった考え方にきちんと沿っているかどうかというものが、もうちょっと分かるような、そういう説明ができるような資料というか......、分かりました。了解しました。(以下略)
▼ ようやく意味が通じた様子。そこで、厚労省としては「新たな機能評価係数」について議論を進める前に、まず診断群分類点数に関する議論を片付けておきたいという考えがあり、6月29日のDPC評価分科会での提案になったと推察される。ただ、入院初期(入院期間Ⅰ)の点数を引き上げれば、その分の財源をどこから持ってくるかが問題。改定率が決まっていない時期なので、どこかを減らしてバランスを保つ必要があるが、これに便乗して入院医療費の総額を引き下げることも考えられる。会議終了後、「入院医療費がいくらぐらい引き上げられるのか」と質問した記者がいたが、宇都宮企画官はぶ然とした表情で「そんなの分からない」と一蹴した。