次期改定で、脳卒中患者らの追い出しが加速?
■ 「かなり大きな改定になる」 ― 齊藤委員
続いて、委員の反応をお伝えする。患者の利益よりも、「DPCの体系を崩さないか」という点に関心があるようだ。
[齊藤壽一委員(社会保険中央総合病院名誉院長)]
かなり大きな改定になる。(入院初期の医療資源の投入量が)1日当たり平均点数に比して「非常に大きい」とあるが、「非常」ということについて、何かはっきりした数学的プライテリア(基準)はあるのか。
[厚労省保険局医療課・長谷川学課長補佐]
データはある。(入院期間に応じた包括点数が設定されている診断群分類)1572のうち、8割はうまくはまっている(医療資源の投入量とDPC点数が合っている)が、200~300ぐらいがうまくはまっていない。(医療資源の投入量とDPC点数が)明らかに違うところを手当てしたい。
[齊藤委員]
悪性腫瘍(がん)の治療薬など高額薬剤を使用した場合を包括範囲の外に出して出来高にすべきという議論もある。それでは対応できない事態なのか。
[長谷川学補佐]
「入院期間Ⅰ」の点数は1日当たり平均点数の15%プラスだが、15%の2倍ぐらい医療資源を投入しているものが200ぐらいある。その200については対応できない。
[齊藤委員]
15%とか25%とか、どんどん細かくしていくと、だんだん出来高に近づいていくような危惧がある。
[長谷川学補佐]
今までは「調整係数」でマイナス分を補填していたが、「調整係数」が段階的に廃止されるので、(医療資源の投入量とDPC点数との間に)明らかに大きな差がある部分については何らかの手当てをすべき。
案2の「入院期間Ⅰ」の部分について、投入した医療資源の投入量の平均を取って、客観的な数字で示したい。
[小山信彌委員(東邦大医療センター大森病院心臓血管外科部長)]
同じ診断名でも、「救急」や「予定」など入院の形態で点数が変わると思うが。
[長谷川学補佐]
「予定入院」と「緊急入院」(予定入院以外の入院)を比較したら、わずかな差があった。今回、「新たな機能評価係数」で救急部分をしっかり手当てできれば対応可能と考えている。
[小山委員]
DPCは、今の医療保険制度が複雑だから動き出した。しかし、齊藤先生が指摘したように、このように細かくしていくと「調整係数」をなくしたために複雑化してしまう。
「調整係数」という名前が良くないのであれば名前を変えて、「調整係数はこういう意味合いを持つんだ」という形で残した方がDPC本来の目的を達するのではないか。
(医療資源の投入量とDPC点数との間に大きな差がある)点数を1つひとつ計算するのは判定するのも大変だし、病院もとても大変。
ならば逆に、「調整係数」ではなく、「救急補填点数」など違う形の係数にするという考え方もあっていい。どんどん細分化されると、DPCを導入した本来の目的がなくなってしまう。
[酒巻哲夫委員(群馬大医療情報部教授)]
今の意見に反対ではないが、DPC病院の中には幅があり、"プラスが違う範囲"で1つの疾患が診られていることは否めない。それを「調整係数」で保っていた。
私も、(DPCは)複雑化しない方がいいとは思うが、今の議論は「調整係数」と無関係ではなく、複雑化する方角もちょっとは必要だと思う。
▼ 前年度の収入を保証する「調整係数」によって、うまく儲けていた病院もあるという指摘だろう。
[齊藤委員]
「入院期間Ⅰ」の点数を出来高にするような、「入院期間Ⅰ」の意義付けの変更を内包しているように思う。
悪性腫瘍の治療薬「リツクシマブ」など、(赤字になるような高額薬剤を使う場合は)リツクシマブの診断群分類をつくるなどして対応してきたが、これをどんどん増やすと、薬の数だけ診断群分類が増えるという危惧もあった。それでも、ある程度出来高を反映したDPC体系は堅持されてきた。
しかし、25%では収まりきらないから30%、40%にするなど、細かく細かく言い始めると、これは包括化の意味が......。DPCがだんだん出来高によろめいてくるのではないかという危惧がある。
[長谷川学補佐]
2種類ある(1日当たり点数の)設定方法を3種類にすること。1種類だけ増やすつもりなので、これ以上、複雑化することは考えていない。