次期改定で、脳卒中患者らの追い出しが加速?
■ 「医療機関の分化を進めるためには痛みを伴う」 ― 伊藤委員
[伊藤澄信委員(独立行政法人国立病院機構医療部研究課長)]
大変、面白い。出来高とDPCのハイブリッドな考え方が提出されている。
(案2)ならば逆に、案2のアだけにしてしまえばどうか? この1種類だけにすれば、アップコーディングの問題などもすべて解決してしまう。そういう極端な議論はないだろうか?
ア 入院初期の医療資源の投入量が、1日当たり平均点数に比して非常に大きい場合
入院期間Ⅰの点数:入院期間Ⅰの1日当たり包括範囲出来高点数の平均
入院期間Ⅱの点数:入院期間Ⅰの点数及び1日当たり平均点数を基に面積がA=Bとなるように設定
入院期間Ⅲの点数:入院期間Ⅱの点数から15%減じた点数イ 入院初期の医療資源の投入量が、1日当たり平均点数に比して小さい場合(案1と同じ)
入院期間Ⅰの点数:点数の段差の設定を15%から10%に変更
入院期間Ⅱの点数:入院期間Ⅰの点数及び1日当たり平均点数を基に面積がA=Bとなるように設定
入院期間Ⅲの点数:点数の段差の設定を15%から10%に変更ウ 他の場合は、現行の「(Ⅰ)通常の設定方法」により点数表を作成(案1と同じ)
[長谷川学補佐]
そうすると、(点数の)傾斜がなだらかになってしまうので、(DPC点数が出来高よりも高い場合の)対応が厳しくなる。
[伊藤委員]
今の現場の状況から言うと、「入院期間Ⅱ」の平均ぐらいのところが一番儲かっていて、それ以上(入院期間を)長くしても短くしても収益が悪くなるので、平均在院日数が欧米に比べて縮まない原因はそこにある。
そこで、案2のアだけにしてしまえば「入院期間Ⅱ」まで行かなくなるし、巷で言われているアップコーディングの問題も消える。案2のイなどを使うと、どのコーディングが一番良いのか、現場でかなり議論になるという懸念がある。
[西岡分科会長]
鋭いご指摘。何か(ご意見は)......。
(しばらく沈黙。事務局、相談中)
入院初期に医療資源を非常に投入しなければならないなら、案2のアがいいのかもしれないが、内科系の疾患の場合は「なだらかな傾斜」になるのかもしれないし......。
(委員らも相談中。分科会長が小声でつぶやきながら場をつなぐ)
もう1つは、平均在院日数をさらに短くする方向で進むかどうかだが......。DPCを導入してから平均在院日数が短縮しているが、欧米並みにはならない......。
[酒巻哲夫委員(群馬大医療情報部教授)]
事務局(保険局医療課)の提案も含めて4種類。このぐらいの範囲なら分けてもいいと思う。「50(種類)にします」などと言われたらさすがに反対だが。
[西岡分科会長]
まあ、このぐらいの範囲であれば......。
[齊藤壽一委員(社会保険中央総合病院名誉院長)]
入院初期に投与する薬剤によって、このスロープ(傾斜)は変わるのだろうか。新薬の開発によって、ある時は(1日当たり平均点数プラス)25%、次の改定では15%に移るというような性質のものだろうか?
[宇都宮企画官]
理屈としては、そのたびごとに計算をして(傾斜の)形を見ていく。新薬の開発などによって、極端に"山の形"が変わるようであれば、そういう変更もあり得る。
[西岡分科会長]
では、これについては少し(1日当たり点数の設定方法)のパターンが増加することになるが、そういった形で検討いただきたい。では、次の課題の「「包括払いの範囲の見直し」について......。
[宇都宮企画官]
すみません、案1か2か、ご意見を頂戴したい。
[西岡分科会長]
案2の方が傾いている(入院期間Ⅰから入院期間Ⅱへの落差が激しい)ように思うが、これについて......。
[酒巻委員]
1つ質問。「1日当たり平均点数」に何らかの制限はあるのか。
[宇都宮企画官]
ばらつきが激しいものはツリーから外して出来高算定にしてなっている。
[小山信彌委員(東邦大医療センター大森病院心臓血管外科部長)]
「入院期間Ⅱ」の点数を、入院期間Ⅰの点数と1日当たり平均点数を基に面積がA=Bとなるように設定すると、「入院期間Ⅱ」の点数は現在よりも低くなるのか。あるいは日数で調整するのか。
[長谷川学補佐]
先生のご指摘の通り。「A=B」で(入院期間Ⅱの点数を)取るので、「入院期間Ⅰ」から「入院期間Ⅱ」への点数は、現在の設定よりも低めの設定になる。
[小山委員]
そうなると......。
「入院期間Ⅱ」の点数が出来高(実績点数)よりも高いところがあるが、ここがマイナスになってしまうということ? この部分はカバーされない?
[伊藤委員]
だから、「入院期間Ⅱ」よりも、もっと(入院期間)短い方にインセンティブが働き得る構造。
(しばらく沈黙。委員、ざわつく。「早く追い出せ」との声に笑いあり)
[西岡分科会長]
(伊藤委員へ)どうぞ。
[伊藤委員]
いずれにしても、今のシステムの問題点として、「入院期間Ⅱ」が一番効率良く収益が上がると言われていて、平均在院日数がこれ以上縮まないことを打開するには、何らかの形で変える方策がいいのではないか。
案2ならば、入院初期に安心してお金の掛かる検査ができるし、患者さんにとっても良い。もちろん、あまり短い(入院)期間のところにポーンと(点数を)付けると、今度は「入院期間Ⅰ」を過ぎた後がごっそり減るので、また何か言われるかもしれないが......。
いろいろな考え方を整理する必要はあるが、(厚労省案は)現状の打開になるのではないか。
[西岡分科会長]
ありがとうございます。伊藤先生、「入院期間Ⅱ」まではいいかもしれないが、(さらに入院期間が経過した)「特定入院期間」のところがガサッと減ってしまうということも起こり得るかもしれない。
そのあたり、ものすごい複雑な患者さんを受け入れている病院がかなりマイナスになることも起こり得る......。
[伊藤委員]
あまり、「外国が」という話はしたくないが、わが国の平均在院日数が長いのは、(早期退院に)インセンティブが働いていないので、今のままで(早期に退院させなくても)いいという形になっていると思う。
ちゃんと医療機関の(機能)分化を進めていくためには、ある程度の痛みを伴うのかなと思う。ある病院のデータで、出来高(実績点数)とDPC点数との差を見ると、平均在院日数が長くなる方が収益が大きくなるという現状。平均在院日数を短くする仕組みとして、現在のままでは十分ではない。
[西岡分科会長]
ありがとうございます。そういった議論(平均在院日数の短縮化)を踏まえ、(入院初期の医療資源の投入量が1日当たり平均点数に比して非常に大きい場合は)案2のアを導入することが望ましいということでよろしいだろうか?
(反対意見なく了承)
では一応、この場(DPC評価分科会)では、案2で。
[宇都宮企画官]
それから、両方(案1と2)に共通のイのなだらかな方については、いかがだろうか?
(案2)[西岡分科会長]
ア 入院初期の医療資源の投入量が、1日当たり平均点数に比して非常に大きい場合
入院期間Ⅰの点数 : 入院期間Ⅰの1日当たり包括範囲出来高点数の平均
入院期間Ⅱの点数 : 入院期間Ⅰの点数及び1日当たり平均点数を基に面積がA=Bとなるように設定
入院期間Ⅲの点数 : 入院期間Ⅱの点数から15%減じた点数イ 入院初期の医療資源の投入量が、1日当たり平均点数に比して小さい場合(案1と同じ)
入院期間Ⅰの点数 : 点数の段差の設定を15%から10%に変更
入院期間Ⅱの点数 : 入院期間Ⅰの点数及び1日当たり平均点数を基に面積がA=Bとなるように設定
入院期間Ⅲの点数 : 点数の段差の設定を15%から10%に変更ウ 他の場合は、現行の「(Ⅰ)通常の設定方法」により点数表を作成(案1と同じ)
これ(イ)については、実態に合わせたということで異論はないのではないか。よろしいだろうか?
(反対意見なく了承)
では、「案2」を丸々採用する。(以下略)