診療科の収支調査、狙いは医師人件費の実態把握?
■ 「10~15年前とは全く逆」 ─ 石井委員
[石井孝宜委員(石井公認会計士事務所所長)]
平成16年度ぐらいからこの(部門別収支の調査研究)事業を始めていただいたが、私の記憶では非常に精度がある。実感として理解しやすいデータで素晴らしいと感じた。
逆に、「入院・外来合計」の収支状況を病床規模別に見ると、500床の収支が一番良くて、199床以下はゼロ、200から499床が(プラス)1%、500床以上が(プラス)2%という最終収支差率になっている。
実は、(127病院のうち)500床以上の24病院(の内訳)は、「国立公立」13病院、「医療法人」2病院、「その他」9病院。「国立公立」と「その他」で22病院。これをザーッと見てみると、10~15年前に民間病院が黒字で、パブリックセクター(公的病院)が赤字だという基本的な判断とは全く逆。非常に規模が大きくて、パブリックセクターの病院群の方が利益率が高く、なおかつ売上規模が199床以下に比べると5倍はある。
利益率が高くて金額も大きくなるという収支の規模による違いが非常に鮮明化しているのかどうかを感じた。ここ(国立公立、医療法人、その他)に、DPC対象・準備というマトリックスをもう1つ作れば、それとの関係も出るんだろう。
DPC対象病院(の収支差率が)プラス2%に対して、DPC準備病院はマイナス2%になっているので、かなりはっきりとした形で、病院は規模と対処の仕方によって採算状態が決定的に違うと理解できるのかなという気持ちを持たざるを得ない。
この私のコメントが、解釈に誤解があるのかどうかも含めてコメントを頂きたい。
[田中滋分科会長(慶大大学院教授)]
はい、お願いします。
[小野太一・保険医療企画調査室長]
ありがとうございました。DPCも含めたマトリックスについては、調査票上はできるが、そういう集計をしていないので、少し工夫をして考えてみたい。
また、ご指摘の点については、確かにそういうものが見て取れるし、10年、15年前の話ということであれば、私よりも先生方の方がよくご存じかと思うが、「そういった比較もできるのかもしれないな」と感じている。
DPCの対象と準備に関しては、準備段階というのは、(調整)係数を算定するために、「いろいろ」経営をしている部分がある。対象病院は算定した後の、自分の病院の(調整)係数が固まってからの数字ということがあるので、まあ、「経営の方針」みたいな部分で、「何かあるかもしれないな」というのはあるかもしれない。
私はこの数字を素直に受け止めて、中医協なり、いろいろな先生方のご議論に資する立場なので、今の石井先生のコメントにほかの先生からご意見があれば伺いたいと思う。
▼ 厚生労働省はすべてお見通しなんだな、と改めて思う次第。
[田中滋分科会長(慶大大学院教授)]
質問だけではなく、今の石井委員のように「こういう解釈ができる」という、ご教示いただく形でのご意見でも結構。委員による読み方の共有。そういうご発言も歓迎する。
【目次】
P2 → 赤字の皮膚科、「外来主体なのでこんな結果」 ─ 西岡委員
P3 → 「10~15年前とは全く逆」 ─ 石井委員
P4 → 「今の診療報酬で医療の高度化に対応できない」 ─ 猪口委員
P5 → 「入院と外来を分けずにトータルで」 ─ 小山委員
P6 → 「慢性期の中小病院が反映されていない」 ─ 尾形委員
P7 → 「今後は『診療科群』という単位で比較すべき」 ─ 池上教授
P8 → 「医療経済実態調査との関係を整理すべき」 ─ 椎名委員