医師の給与、コスト調査で切り下げか ─ 中医協分科会
■ 「総合診療ベースで見るなど切り口を変えて」 ─ 佐栁委員
[佐栁進委員(独立行政法人国立病院機構関門医療センター病院長)]
急性期の病院について言えば、一番重要度が高いのは救急医療だと思う。多臓器にわたって障害したようなケース。そういう、本当に急性期の部分についてどのような分析をしているのか、ちょっと見えない。それが1点。
もう1つは、コストと収益のバランスを現状でどう努力するかということ。経営努力をどのように理解していくのか。やはり効率的な医療を全体的に進めていこうというのが1つの基本的な方向だと思うが、コスト計算を経過で見ていくのか。経営努力をどのように評価していくのか。
[田中滋分科会長(慶大大学院教授)]
救急と経営努力に関して、何か事務局(保険局医療課)、ありますか。
[小野太一・保険医療企画調査室長]
現在、「救急部門」の調査はしていない。新たに付加するとなると、ちょっと難しくなるという問題もあるかもしれないが、大事な論点だということで理解させていただいて、また先生方とご議論させていただきたいと思う。
また、経営努力の部分について、「見えにくい」というのはそうだと思うが、この数字から見ていくのはなかなか難しい。いろいろなデータのほか、先生方のご意見を踏まえて考えていくべき課題だと思っている。
[池上教授(調査研究委員会の委員長)]
救急について調査を検討したが、どこまでを救急とするか。救急部がある病院においても、救急部が診療科に準じて病床を持っている場合もあるし、ない場合もある。
(救急の病床が)ある場合でも、救急部だけの病床で救急患者の対応を全部行っているわけではないので、「救急部」を1つの単位として把握することは難しい。
まして、救急部がなくて、各診療科がそれぞれ救急対応をしている場合に、どこからが救急の患者で、救急患者に限った収支を1つの単位として把握し、分析することは極めて難しい課題。
例えば、「救命救急センター」について、そこに限った分析をすることはできても、より普遍的に救急全体を調査・分析することは、検討したが現実的には難しい課題。(部門別収支の)「部門」を「診療科部門」とした場合、「救急が占める割合の多い診療科はどうなっているか」という定性的な分析しかできないのではないかという気がする。以上、感想を申し上げた。
[佐栁委員(関門医療センター病院長)]
非常に難しいのはよく分かるが、各診療科群を縦割りで見ていくのとは別に横割りで見た場合。
例えば、救急医療は全体を診る医療という意味で急性期を見るものと、もう少し......、これは内科に近いが、「ゆっくりした救急」という意味で、総合診療ベースで見ていくとか、切り口をちょっと変えて全体をまた見直すということも......。
というのは、単にコストの問題ではなく、これからの医療の1つの在り方として、1人の個人がたくさん病気を持っているという高齢社会の中での医療に対応していかなくてはならないので、そういった視点からのコストも少しは分析して、そこも評価する必要がある。
[田中滋分科会長(慶大大学院教授)]
病院間で標準形がないので、一般化した「調査」は難しいかもしれないが、「病院の経営の考え方」としては十分にあり得る。
【目次】
P2 → 「調査を簡素化して、多様な医療機関の参加を」 ─ 厚労省
P3 → 「コスト計算に基づく診療報酬の構築を」 ─ 猪口委員
P4 → 「ケアミックス病院は、『診療科群』に準じた扱いで」 ─ 池上教授
P5 → 「総合診療ベースで見るなど切り口を変えて」 ─ 佐栁委員
P6 → 「フランスでは、医師や看護師らの給与の『標準原価』を計算」 ─ 松田委員
P7 → 「管理不能なコストを診療報酬で反映することが必要」 ─ 石井委員
P8 → 「標準原価と実際原価は二者択一の関係ではない」 ─ 池上教授
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