中央社会保険医療協議会 (中医協) ― 09年度第9回(7月15日)
■ 慢性期入院医療の包括評価調査分科会の課題等
[遠藤委員長(中医協会長)]
「慢性期入院医療の包括評価調査分科会の課題等について」を議題とする。この件については、7月8日の当小委員会において議論していただいた。同分科会で検討する具体的な内容を整理した上で、再度議論いただくことになった。
本日は、同分科会の高木安雄分科会長代理から、分科会でのその後の議論の状況についてご報告いただき、改めてこれについて議論したいと思う。それでは、分科会長、よろしくお願いいたします。
[高木安雄分科会長代理(慶應義塾大大学院教授)]
高木です。前回、7月8日の基本問題小委員会で池上直己分科会長より、「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」について資料を提出して、今後の議論の方向性についてご提案申し上げた次第。
その際、基本問題小委員会から、「慢性期医療」の定義や範囲についてどう考えるのか、それから慢性期の分科会が考える「中・長期的な課題」がどのようなものであるかという意見が出されたので、それらを資料として提出するようご指示をいただいたので、本日参りまして説明させていただく。
7月8日の慢性期の分科会で議論して資料をまとめたので、池上分科会長に代わり私が報告させていただく。資料を読ませていただく。
▼ 資料をそのまま読み上げた。資料は以下の通り。
1. 短期
平成22年診療報酬改定に向け、既存のデータを用いて、以下の検討を行う。
○ 患者分類の妥当性の検証
○ 各医療機関における分類の適切性の検証
○ 提供されている医療サービスの質の検証
2. 中・長期
医療療養病床と機能が近接している病床等を含め、慢性期医療に係る調査・分析を行う。
その際、慢性期医療の定義・範囲を明確にしておく必要があるが、現時点では、さしあたリー般病床の一部から介護保険施設の一部までが想定される。
当面は、このうちの一般病床に係る部分から検討することとし、その結果を踏まえて、慢性期医療の定義・範囲についてもあらためて検討する。
一連の検討結果は、適宜、基本問題小委員会に報告し、そこでいただいた意見をさらに反映させながら慎重に調査・分析を進めることとしたい。
▼ 資料の読み上げはここまで。
資料にもあるように、「慢性期医療」の定義や範囲について、さし当たって幅広く記載しているが、これはあくまでも現時点での想定。当然のことながら、介護保険に関連する部分など、介護保険施設を所管する老健局との連携が不可欠な領域もあるので、分科会で実施する際の具体的な方法等については中医協にご相談しながら進めていくことになると考えている。
この慢性期の分科会として、このような方向で議論を進めて差し支えないかどうか、ご検討いただければと思う。以上。
[遠藤委員長(中医協会長)]
ありがとうございます。事務局(保険局医療課)、何か補足はありますか? ありませんか。はい。
これは前回、ご提案の内容を明確にしていただきたいということで、改めてご提案いただいた。この「短期」で表されている3つについては、前回でもほぼ同意が得られたことだろうと思う。
主に、この「中・長期」と書かれた内容について、ご議論いただきたい。1つ、私から議論する上で少し明確にしておきたいと思うのでお聞きしたい。まず、1つは「介護保険施設の一部まで」と書いてあるが、これは現状でイメージしているのは、どの範囲のことだろうか?
[高木安雄分科会長代理]
療養病床の転換の中で、介護(保険で利用する)療養病床がある。この分科会が始まる一番最初の時も、「介護保険の施設も一部入れるべきではないか」という議論がスタート時点であったので、「転換型老健」というか、その辺を想定している。
[遠藤委員長(中医協会長)]
介護療養の病床と転換老健を一応考えているということ? はい。ありがとうございます。
それから、「慢性期医療」の定義はある意味で大変重要なことで、実際、「亜急性期」の定義というと、はっきり分かるような分からないようなところがあるわけで、「亜急性(期入院医療管理料)の加算が付いている病棟に入っている人が亜急性期の患者なんだ」みたいなトートロジー(同語反復)になってしまうようなところがあるので、はっきりさせることは意味があると思う。
基本的な目的は何か、「慢性期医療」の定義を改めて検討するということは......、これ、診療報酬に最終的に結び付かないと意味がないのだが、どういうイメージを持ったらいいのだろうか?
[高木安雄分科会長代理]
「亜急性期」をサブアキュートと考えるのかポストアキュートと考えるのか、議論がある。「慢性期」はまさに、「サブ」か「ポスト」かという、この定義はまだまだ調査・検討する必要があると思っている。
医療区分(1~3)とADL区分(1~3)の「3かける3」で始まった慢性期の医療を、入院医療を考えるアプローチを、分類の妥当性を含め、より広く使ってみたいというのが真意。
▼ 2004年度の診療報酬改定で新設された「亜急性期入院医療管理料」の背景には、全日病が提唱している「地域一般病棟」があったといわれるが、同管理料で言う「「亜急性期」は、全日病が主張する「亜急性」とはイコールでなかった。「地域一般病棟」とは、在宅や介護施設の高齢者が急性増悪した場合、大学病院のような高度な手術はできないけれども、"軽装備"の処置や手術ならできるという病院が地域にあり、そのような在宅医療の後方支援となる病院を評価すべきという考え。「在宅医療」と「急性期医療」の架け橋という役割を果たす意味の「亜急性期」(サブアキュート)。これに対して、厚労省の言う「亜急性期」は、病期の流れに沿った分類。「超急性期」→「急性期」→「亜急性期」→「回復期リハ」→「慢性期」「在宅医療」という一連の流れの中の「亜急性期」(ポストアキュート)。
[遠藤委員長(中医協会長)]
はい、ありがとうございました。かなりはっきり分かってきた。要するに、分類の基準についても幅広く検討してみたいと、そのための調査を行いたいということだと思う。あの......、余計なことを申し上げた。皆様からのご意見を賜りたい。竹嶋委員、どうぞ。
[竹嶋康弘委員(日本医師会副会長)]
地域医療の現場を担っている立場から。つい先日、7月9日の社会保障審議会の医療部会で、ある委員から地域医療提供体制の中での有床診療所の位置付けや応分の対応が必要であるという意見が出た。
そこで、高木先生の頭の中に「有床診療所」が入っているか、大変失礼な言い方だが、確認しておきたい。
[遠藤委員長(中医協会長)]
高木分科会長代理、どうぞ。
[高木安雄分科会長代理]
調査の中でも、病院群と診療所群、両方やっているのでデータを取っている。われわれも、それを1つの調査対象として考えている。全く無視しているわけではない。
[遠藤委員長(中医協会長)]
ほかにございますか。西澤委員、どうぞ。
[西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)]
今回のご提案は結構だと思う。
それで守備範囲というか、「ー般病床の一部から介護保険施設の一部まで」で、「当面は一般病床に係る部分」となっているが、なかなか「局(の壁)を越えて」というのは大変だと思うが、やはり介護保険施設まで......。
これは分科会でやるのか、老健局と合意の下で別組織でやるのか(という問題)もあるが、ぜひ、そっちまで踏み込んでいただければと思う。
さらに介護保険施設の場合、先ほど「介護保険の施設の一部は転換型老健辺り」と言ったが、老健あるいは特養まで含めた調査など、今後を踏まえると非常に大事だと思うので、少しその辺りも考慮していただけるとありがたい。
[遠藤委員長(中医協会長)]
高木分科会長代理、何かありますか?
[高木安雄分科会長代理]
個人的な意見も入るが、ADL区分と医療区分で慢性期の入院医療を見る視点をつくることによって、できれば退院調整にも使って、できれば介護施設への転......。
要するに移動にも使って、在宅医療の診療所に、在宅に戻るときにも慢性期医療の医療区分のフォーカスを使えたらというのが、私の個人的な意見が底流としてあるので、介護施設も含め、在宅まで含め、「地域ケアの中で慢性期入院医療を質の評価と在宅にどうつなげていくか」というのを考えてみたいと思っている。
[遠藤委員長(中医協会長)]
はい。ありがとうございます。「中・長期的課題」の中にあるので、どこまで広げていけるかということを少し時間をかけて検討していきたいと思っている。ほかにございますか。はい、坂本専門委員、どうぞ。
[坂本すが専門委員(日本看護協会副会長)]
ちょっと質問したい。「短期」の中の白丸の3つ目、「提供されている医療サービスの質の検証」について。抽象的だが、具体的にはどのようなことを検証しようとしているのだろうか?
[高木安雄分科会長代理]
いくつかトライアルをしているが、例えば転倒とか褥瘡(じょくそう)、感染症の発生率など、いくつかの軸で施設からのデータを基に質の評価の調査をしている。
[坂本すが専門委員(日看協)]
例えば、(認定看護師の配置など)体制的なことも入っている?
[高木安雄分科会長代理]
もちろん、施設のそういうデータでスタッフ等が分かる。ただ、まだこれは試行段階でのトライアル。問題は、例えば尿路感染に強い施設と転倒に強い施設と、どうも......、いくつかの軸で慢性期医療の質を評価しようというときに、全部がいい施設というのは今のところ、なかなかない。
もう1つは、患者のコントロールをしないと、施設に非常に不利になる。入る時に感染症を持っているなど、そういうのを綺麗にコントロールして比較すると、「まだ綺麗に出ないな」というのが正直なところ。
[遠藤委員長(中医協会長)]
ありがとうございます。ただ今の質問で1つ確認したいことがある。この調査の質問項目について、基本問題小委員会に報告されると考えてよろしいだろうか。
[高木安雄分科会長代理]
もちろん、調査をするときには報告させていただく。
[遠藤委員長(中医協会長)]
ありがとうございます。そのときに、場合によっては多少の修正も可ということだと思う。牛丸委員、どうぞ。
[牛丸聡委員(早稲田大政治経済学術院教授)]
「短期」(の課題)について。ほかの委員は分かるかもしれないが、私はちょっと理解できないのでお聞きしたい。
1. 短期「患者分類の妥当性」は大体分かる。それから今、坂本委員から質問があった「サービスの質」もなんとか分かった。
平成22年診療報酬改定に向け、既存のデータを用いて、以下の検討を行う。
○ 患者分類の妥当性の検証
○ 各医療機関における分類の適切性の検証
○ 提供されている医療サービスの質の検証
2番目の「各医療機関における分類の適切性の検証」とは、どういうことだろうか。お願いいたします。
[高木安雄分科会長代理]
(より点数が高い区分で請求する)アップコーディングというか......。
ADL区分と医療区分のチェック項目がある。それと保険請求の区分が少し違う。これは数の問題なのか......。要するに、保険を請求するためにきちんとチェックするようになったのか分からないが、各施設でこの分類の方法がどう使われているかということを両方見ながら考えていかないと。あと、(患者分類の)付けやすさとか、アップコーディングをそう簡単にというか......。
現場の臨床のやっていることを簡易にデータとして集めるような評価方法を考えていきたいというのが、「医療機関における分類の適切性の検証」。
▼ 要するに不正請求を調べるということ。また、「質の評価」という名目の成果主義をADL区分に導入して、「医療区分1」の患者をさらに追い出そうということ。回復期リハの質の評価と同じような発想。しかし、経済的なゆとりがなく、在宅療養を支える家族もいない高齢者はどうなるのか。
[遠藤委員長(中医協会長)]
ありがとうございました。ほかにございますか。はい、渡辺委員、どうぞ。
[渡辺三雄委員(日本歯科医師会常務理事)]
1点、質問とお願い。「短期」の「医療サービスの質の検証」について。特に、長期にわたる入院、介護施設の一部等も含まれるということだが、そういう患者さんの場合、口腔のケアが大変重要なポイントだと思う。(中略)
[遠藤委員長(中医協会長)]
ほかにございますか? それでは、ご提案があった「短期」および「中・長期」の提案について、基本問題小委員会として承認するということでよろしいだろうか?
(反対意見なく、了承)
はい、ありがとうございました。では、基本問題小委員会として承認したい。(以下略)
【目次】
P2 → DPC「新たな機能評価係数に係る特別調査案」
P3 → 慢性期入院医療の包括評価調査分科会の課題等
P4 → 「社会医療診療行為別調査」と「メディアス」との乖離
P5 → 保険医療材料制度に関する意見
P6 → 薬価算定組織からの意見聴取
P7 → 特許期間中の新薬の薬価改定方式(薬価維持特例)