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中央社会保険医療協議会 (中医協) ― 09年度第9回(7月15日)

■ 薬価算定組織からの意見聴取
 
 
[遠藤委員長(中医協会長)]
 ただ今より、第54回中央社会保険医療協議会薬価専門部会を開始する。委員の出欠状況について報告する。本日は、全員がお見えになっている。また、6月10日の総会で渡辺自修専門委員の後任として松谷高顕専門委員が発令されたことをご報告させていただいた。

 本日は、松谷専門委員がご出席されているので、一言ご挨拶をお願いしたいと思う。よろしくお願いいたします。

[松谷高顕専門委員(東邦ホールディングス株式会社代表取締役会長)]
 専門委員に任命された松谷と申します。医療用医薬品の流通現場の経験を生かして発言させていただきたいと思うので、どうぞよろしくお願いいたします。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 よろしくお願いいたします。
 それでは議事に移る。本日はまず、薬価算定組織から薬価算定の基準等に関する意見聴取を行いたい。薬価算定組織の加藤治文委員長より説明をお願いしたい。よろしくお願いいたします。

[薬価算定組織・加藤治文委員長]
 薬価算定組織・委員長の加藤でございます。私から、これまで実際に新医薬品の薬価を算定した経験を踏まえて、薬価算定組織としての算定の基準等に関する意見を述べさせていただきたい。

 資料「中医協 薬─1」(薬価算定の基準等に関する意見)をご覧いただきたい。(以下略)

 ▼ 資料を読み上げた。意見書は以下の通り。

< 薬価算定の基準等に関する意見 >
 

1. 新薬の算定方法について

(1) 算定に用いる比較薬の選定
 ① 用法・用量を変更した新薬の取扱い
  ・ 薬理作用が類似した既収載品が数多くある分野では、新薬が補正加算の対象とならない場合、当該新薬の1日薬価は、各類似薬の薬価収載期間を考慮した上で、下記のいずれか低い額と同一になるように算定している(「類似薬効比較方式(Ⅱ)」という)。
       i ) 最も1日薬価が低い類似薬の1日薬価
      ⅱ) 複数の類似薬の1日薬価の平均

  ・ 今年6月に薬価収載されたクラビット錠500mgは、耐性菌の発現抑制のために、「1回100㎎を1日2~3回投与」から「1回500mgを1日1回投与」に用法・用量を変更した新薬である。
    当該新薬は、薬理作用が類似した既収載の抗菌薬が数多くあったことから、当該新薬に補正加算が適用されなければ「類似薬効比較方式(h)」により算定され、その結果、同一成分の既収載品が最類似薬になるにも拘わらず、より低い薬価の類似薬を比較薬とした算定が行われ得る状況にあった。
  ・ この算定方法のままでは、より適切な用法・用量への変更が進まない可能性がある。
   このため、医療上の必要性から既収載品の用法・用量を変更した新薬については、補正加算の有無に拘わらず、「類似薬効比較方式(Ⅰ)」により、最類似薬である同一成分の既収載品を比較薬として算定することを検討してはどうか。
    (ただし、規格間調整による算定が妥当と考えられる場合を除く。)

 ② 最類似薬が複数ある新薬の取扱い
  ・ 単一成分の新薬について、類似性が同程度の既収載品が複数あって、最類似薬を1つに絞りきれない場合については、これら複数の類似薬を最類似薬として新薬の薬価を算定してはどうかとの意見があった。

(2) 配合剤の取扱いについて
  ・ 2つの既収載品の配合剤に係る最近の薬価算定においては、類似薬効比較方式により、これら2剤の1日薬価の合計との1日薬価合わせにより算定を行うことが多くなっている。

  ・ しかしながら、当該配合剤たる新規収載品は、製造経費、流通経費等の節減が見込まれるものと考えられる。
   このことから、下記条件に全て該当する配合剤については、既収載品の1日薬価の合計の「一定割合」の価格を基本として算定し、加算可能とする算定ルールを検討してはどうか。

      i ) 全ての配合成分が単剤として薬価基準に収載されていること
     ⅱ) 既収載品と同様の効能効果を有すること
     ⅲ) 既収載品と投与経路が同一であること
     ⅳ) 内用の配合剤であること

  ・ なお、この場合、配合されている単剤の薬価を下回らないようにするため、 1日薬価が最も高い既収載品の1日薬価を下限とすることが必要である。

  ・ ただし、抗HIV薬については、複数の薬剤を組み合わせて服用すること|(多剤併用療法)が推奨されており、また、欧米の主要国において、抗HIV薬の価格は、単剤の合計価格と配合剤の価格がほぼ同額であることを考慮し、上記ルールの対象外としてはどうか。

  ・ また、算定に用いる「一定割合」としては、0.9倍から新規後発品の算定に用いる0.7倍の間が考えられる。

(3) 国内で研究開発された医薬品に対する評価について
  ・ 国内における医薬品の研究開発を促進するために、日本において臨床試験が実施され、日本人の臨床データが充実している医薬品については、補正加算の対象として評価してはどうかとの意見があった。

(4) 小児加算について
  ・ 平成20年度から加算率が20%まで引上げられたが、未だ小児領域の医薬品開発については十分とは言えないことを考えると、より高いインセンティブを付与してはどうかとの意見があった。

(5) 原価計算について
  ・ 原価計算をより適切に算定するために、単価査定の考え方等について、再整理すべきではないかとの意見があった。

(6) 適切な患者選択により、投与対象患者を大幅に絞り込んで開発し、承認された医薬品の適切な評価について
  ・ ファーマコゲノミクスやプロテオミクス等の活用により、対象を絞った特定の患者群において、より有効かつ安全で最適な薬物療法を行うことを可能としたものについては、薬価算定上、十分な評価を行うべきではないかとの意見があった。

(7) 規格間調整について
  ・ 欧米では、主に内用薬について、含量が異なってもほとんど価格差を設けていない事例(いわゆるフラットプライス)が見られることを踏まえ、内用薬について、通常最大用量を超える用量の規格を算定する際に、用いる規格間比に上限(規格が2倍になると薬価が1.5倍)を定めているが、更なる価格差の縮小を検討してはどうかとの意見があった。

(8) 慢性疾患に対して長期間投与される薬剤の取扱いについて
  ・ 現行では、長期間にわたり投与される薬剤と短期間だけ投与される薬剤について区別なく算定を行っているが、患者負担を考えると、長期間投与される薬剤については通常より低い加算率を適用するようにしてはどうかとの意見があった。
 
2. 既収載医薬品の取扱いについて

(1) 市場拡大再算定時の補正加算について
  ・ 市場拡大再算定時の補正加算については、再算定の対象品に関する市販後の臨床試験結果等から真の臨床的有用性があるか否かを検討し、適用の可否を判断している。

  ・ よって、対象品について有用性があると判断されると、全ての類似品について、当該類似品の臨床試験結果の有無や内容に拘わらず、対象品と同じ補正加算率が適用されるが、逆に対象品に有用性がないと判断されると全ての類似品について加算されないルールとなっている。

  ・ しかしながら、各企業はそれぞれ独自に自社の製品について市販後の臨床試験を実施するなどして、真の臨床的有用性を検証するのが通例であり、その結果は一律ではないことから、補正加算の適用の可否については、対象品又は類似品に拘わらず、個別の医薬品毎に判断することを検討してはどうか。

(2) 市販後、適切な患者選択により投与対象患者数を大幅に絞り込んだ医薬品に対する評価について
  ・ 市販後に、より有効かつ安全で最適な薬物療法を行うことが可能な患者群を明らかとし、投与対象患者を大幅に絞り込んだ医薬品については、薬価の引上げを行ってはどうかとの意見があった。

  ・ なお、その場合でも、外国価格の水準は参考にすべきとの意見も併せてあった。

(3) 臨床的有用性がある医薬品
  ・ 長期間収載されている医薬品であって、薬価が低くなったが臨床的有用性が高い医薬品については、不採算品再算定を適切に行うべきとの意見があった。

 以上で、薬価算定の基準等に関する薬価算定組織の意見の説明を終わる。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 ありがとうございました。事務局(保険局医療課)で何か補足はありますか?

[保険局医療課・磯部総一郎薬剤管理官]
 薬剤管理官でございます。事務局(保険局医療課)から少し補足させていただく。資料「中医協 薬─2」(薬価算定基準が明文化された平成12年4月以降に新薬として薬価収載された配合剤一覧)。

 今の薬価算定組織の意見書を作るに当たり関係する資料で、配合剤の関係。事務局で過去にどのような配合剤があったかをまとめた資料。薬価算定基準が明文化された平成12年4月以降のものをまとめた。

 加藤委員長から説明があったように、「配合剤」と言ってもいろいろなタイプのものがある。それについて、大きく2つに分類してまとめた。

上の表 → 全ての配合成分が単剤として既収載され、かつ、単剤の有する効能効果及び投与経路が配合剤と同様である配合剤
下の表 → 上記以外に分類される配含剤
 上は1番から10番まで。それ以外が11番から20番ということ。

 下から説明する。例えば11番(カレトラ・ソフトカプセル、カレトラ・リキッド)。これはHIVの薬だが、配合されているが1つはまだ未収載(ロピナビル)、もう1つは既収載(リトナビル)。12番もそのようなもの。13番は両方未収載のものを配合した。

 14番をご覧いただきたい。「ルナベル配合錠」というもの。これは、両方(ノルエチステロンもエチニルエストラジオールも)既収載のものを配合しているが、もともと単剤で収載されているものの適応が......。

 ここにある「エチニルエストラジオール」は、前立腺癌や閉経後の末期早乳癌という適応を持っているが、配合剤の適応としては子宮内膜症に伴う月経困難症。大きく違う適応で、配合剤として承認を取っているものがある。15番も既収載と未収載の組み合わせ。

 (以下略。効能効果が違う組み合わせの注射薬について説明。上の表については配合剤の価格に関する外国の例などを説明した後、類似薬効比較方式、平成20年度市場拡大再算定などについて解説した)

 ▼ 質疑では、配合剤と後発品の使用促進との関係などが議論になった。長野専門委員は「専門委員の立場から、6月3日のヒアリングで業界代表が述べた以上のことは述べられない」と前置きして、「ルールが決まればそれに従う」という業界の意見を紹介。その上で、「薬価算定ルールを議論していただきたい」と求めた。山本信夫委員(日本薬剤師会副会長)は、「工夫された配合剤」とそうでない配合剤があることを指摘。「これらは必ずしも"良い子"ではない。(後発品の使用促進の)邪魔をしないでいただきたい」と従来通りの主張を繰り返した。

 ※ 詳しくはこちらをご覧ください。

 【目次】
 P2 → DPC「新たな機能評価係数に係る特別調査案」
 P3 → 慢性期入院医療の包括評価調査分科会の課題等
 P4 → 「社会医療診療行為別調査」と「メディアス」との乖離
 P5 → 保険医療材料制度に関する意見
 P6 → 薬価算定組織からの意見聴取
 P7 → 特許期間中の新薬の薬価改定方式(薬価維持特例)

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