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中央社会保険医療協議会 (中医協) ― 09年度第9回(7月15日)

■ 保険医療材料制度に関する意見
 

[小林麻理部会長(早稲田大大学院公共経営研究科教授)]
 それでは、第38回保険医療材料専門部会を開催する。始めに、委員の出欠状況について報告する。本日は、全員がお見えになっている。なお、審議官は公務のため欠席される旨の連絡を受けている。

 それでは議題に入る。特定保険医療材料の保険償還価格算定の基準について、保険医療材料専門組織から「特定保険医療材料の保険償還価格算定の基準等に関する意見」が提出されているので、保険医療材料専門組織の松本純夫委員長より説明をお願いしたい。よろしくお願いいたします。

[保険医療材料専門組織・松本純夫委員長]
 はい。(保険医療材料)専門組織の松本でございます。(資料)「中医協 材─1」をご覧いただきたい。ここに書いてあることを読み上げさせていただく。(以下略)

 ▼ 意見書は以下の通り。

< 特定保険医療材料の保険償還価格算定の基準等に関する意見 >
 

1. 内外価格差等について
 
(1) 内外価格差については、従来からその問題が指摘されており、これまでに、機能分類の見直し、外国価格調整、再算定の導入等により、その是
正に取り組んできたところであるが、依然として、内外価格差の問題が散見されている。

 平成20年度保険医療材料制度改革においては、特定保険医療材料の保険償還価格(以下「材料価格」という。)について、新規機能区分の設定が必要な特定保険医療材料(以下「新規医療材料」という。)は外国平均価格の1.5倍を睨みつつ、1.7倍以上の場合に価格調整及び再算定を行うこととされている。

 内外価格差の現状を踏まえ、現行制度をより実効的に運用できるよう内外価格差を更に是正する方向で検討すべきではないか。

(2) 外国価格参照制度の対象国については、現在、米国、ドイツ、フランス、連合王国の4カ国となっているが、国により、当該医療材料の使用実態等が大きく異なり、価格差が大きい場合がある。外国価格参照制度の対象国の範囲を拡大するとともに、価格差が大きい要因となっている国の価格について、対象国から除外した平均値を使用するなどの方策を検討すべきではないか。

(3) なお、外国価格参照制度等に用いている価格は、リストプライス(業者希望価格)であり、実効的な価格となっていない。現在、外国価格報告により、リストプライスを把握しているところであるが、市場実勢価格を把握し、保険償還価格へ反映させる手法など、より精度が高く、継続的に外国価格を収集する方策について検討すべきではないか。

(4) 原価計算方式において製品原価として移転価格を用いる場合、移転価格の設定根拠等が不明瞭な場合がある。移転価格の設定根拠や他国の価格設定の状況等について保険適用希望書に記載するなど、原価計算方式における算定についてより適切な方策を検討すべきではないか。

(5) 平成20年度においては、平成18年度改定と比較して対象区分を縮小し、ペースメーカー、PTCAバルーンカテーテル、冠動脈ステント等の150区分に対して再算定の該当性の検討を行ったが、次回改定についても、引き続き効率的な再算定を行うための対象区分を設定すべきではないか。

 また、償還価格の下落率が低い区分について、外国価格の下落率や対象疾患等を勘案したうえで、再算定の対象とすべきではないか。

(6) 内外価格差について、我が国特有の流通システムや審査期間等が材料価格に与える影響について、引き続き、定量的に把握し、適正な内外価格差の範囲について検討すべきではないか。

2. 保険医療材料価格のイノベーションの適切な評価

 我が国での新医療機器開発や実用化に対するインセンティブを高めるため、平成20年改定において、類似機能区分方式における補正加算を見
直すとともに原価計算方式における営業利益の調整を可能とする方策を講じたところであるが、イノベーションのより適切な評価について検討すべきではないか。
 
3. 機能区分の見直しについて 

 機能区分の見直しについては、臨床上の利用実態を踏まえる等の観点から、該当製品の存在しない機能区分の削除や、一定条件のもとでの機能区分の見直しなど、より適切なものとなるよう検討すべきではないか。

4. 医療材料の安定供給に係る方策について
 
(1) 企業の経営戦略等により、医療材料の安定供給が維持できないものについて、医療保険制度の観点から、安定供給を維持するための方策について検討すべきではないか。

(2) 供給が著しく困難で十分償還されていない医療機器については、平成20年度改定において、その価格を上げることができるよう措置を講じたところであるが、当該措置の適用となる基準等の作成を検討するなど、より適切な評価を行う仕組みを作るべきではないか。

5. 市場実勢価格加重平均一定幅方式における一定幅について
 
 既存の機能区分の価格改定方式である市場実勢価格加重平均一定幅方式における一定幅は、現行では4%(ダイアライザーは7.5%)と設定されている。これらの一定幅が特定保険医療材料の安定的な供給に果たしている役割にも留意しつつ、より適正なものとなるよう検討すべきではないか。

6. 歯科用貴金属材料の基準材料価格の随時改定について
 
 歯科用貴金属材料の基準材料価格の随時改定については、医療現場や患者に混乱を招かないよう価格改定の頻度に十分留意しつつ、金、銀またはパラジウムの国際価格変動に、より連動したものとなるよう検討すべきではないか。

7. その他
 
(1) 保険医療材料の保険収載について、更なる迅速化を図ることを検討すべきではないか。

(2) 外国価格参照制度における為替レートの平均値の対象期間等について、審査時点での状況をより正確に反映させるため、適切な期間設定を行うべきではないか。

 ▼ 続いて、専門委員が意見を述べた。松村啓史専門委員(テルモ取締役専務執行役員)が「保険医療材料制度に関する意見」と題する資料を用いて意見を陳述した。松村委員は、(1)イノベーションの適切な評価 (2)医療機器の安定供給 (3)為替問題─の3つの課題を挙げ、(1)と(2)の根本的な解決策として、「現行の機能区分方式の見直しを検討してはどうか」と提案した。
 また、(3)については、リーマンショック以降の急激な円高や、外国価格参照による再算定が国内企業に大きな影響を与えていることなどを指摘した上で、「平均為替レートの計算期間を延ばすなど運用ルールを見直してはどうか」と求めた。
 松本晃専門委員(ジョンソン・エンド・ジョンソン前最高顧問)も同様の提案をした上で、「新しい償還価格の制度をつくっていくことが、この中医協の役目ではないか」と締めくくった。

 【目次】
 P2 → DPC「新たな機能評価係数に係る特別調査案」
 P3 → 慢性期入院医療の包括評価調査分科会の課題等
 P4 → 「社会医療診療行為別調査」と「メディアス」との乖離
 P5 → 保険医療材料制度に関する意見
 P6 → 薬価算定組織からの意見聴取
 P7 → 特許期間中の新薬の薬価改定方式(薬価維持特例)

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