『患者の経済負担を考える』
土屋院長と3人が登壇。
志村さん
「患者と医師で決めた治療に国が介入すべきでないという清郷さんの言葉は胸に染みた。そのことを忘れずにいたい」
片木さん
「清郷さんが患者団体からも批判されたと言ったのは、たぶん私のこと。メディアに意見を聴かれたからトンデモないといったのだけれど、でもその時のメディアの報じ方は今日のお話と全然違う。混合診療なんでもありだったら、それこそさっき話をしたようなクリニックはどうなるんだということで困ると思ったのだけれど、そうではなくきちんと条件を定めるというお話だったので、ああ良かったと思った。報じられ方でとてもつらい思いをされたりはしなかったのだろうか」
清郷さん
「知ってもらうことが先決だった、当時は混合診療なんて言葉誰も知らなかったから、ありとあらゆるものを利用しようと思っていた。だから多少間違ってても誤解されても構わないと覆っていたのだが、最近はやはりマズいと思うようになって、現在は誤解されている部分は修正しようと思っている。お前のやっていることはマズいと言われないように、できるだけ修正しようと思っている。くれぐれも混合診療の全面解禁ではない。最終的にはそこに行きたいけれど、しかし片木さんが言われたような悪徳医もいるから、ルールある解禁と考えている。ただし繰り返しになるが、基本的に国が個々の治療に介入すべきでない。保険を適応するかどうかは大いに言ってもらって構わないが」
土屋
「清郷さんの発表の最後の部分、厚生労働省に関しては、これでも尊敬しすぎ。現実には、自分のことしか考えていない医系技官がメチャクチャにしたんだと思う。昔、結核の時は人にうつすからといって隔離してそれがハンセン病の問題を起こした。がんも未だにそういうところがある。身障者支援は自然になったが、がん患者は自分ががんだと周囲に言いづらい。残念ながら普段の診療では、こういう悩みを聴ききれない。そして、医療者も苦しんでいると言いながら、そこを突破できないのは、患者さんと共に悩んでいる勤務医が組織化されていないからだ。だから声も集約されていない。職業的使命感を持った医療人がバラバラであることが悲劇の原因の一つだろう。
片木さんから医者が自浄作用がないと重大な指摘をいただいた。たしかに、それが医療崩壊の元凶だ。そこをきちんとしないと、泥沼から脱出できない。国家に治療へ介入させないためには、医師が尊敬される必要がある。清郷さんの言う有効性のグレーゾーンに関してPMDAは安全性の証明をしっかり求めるけれど、欧米のデータだけでは安全性が心配だという発想の陰には、日本人は純系だからというのがあるんだろう。しかし現実には日本人は純系ではない。米国人は多種多様だから援用できないはずがない。90年代はじめからハーモナイゼーションなどと言っておきながらやってないのは、行政と医療界の怠慢だ。
法を根拠ということに関しても、実際厚生労働省は通知ばかり出す。法文にしたがっていれば安心できるようには明確にしない。医療事故に関して、警察へ届けよなどと法医学者がバカなことを言ったけれど、法律の成立の趣旨を考えれば、警察は犯罪を取り締まるところだ。犯罪の匂いがしたら届けなければいけないけれど、純粋に医療の話であれば、それは医療界でやらないといけない。司法解剖なんかしたら、何年も遺族すら結果が分からないことになる。不届きな医師は自分たちで何とかしなければいけない。医道審のような国家権力でなければ医師を整理できないとすれば恥ずかしい限りだ。
志村さんは、選挙後に期待と言ったけれど、選挙が終わった途端に忘れるのが政治家だ。国民がきちんと見張っていく必要がある。それで今日お話のあった話を解決するのに、いったいいくらぐらいお金がかかるものか、適応外使用に関しては医事課に調べさせた。そうしたら『減らすには』というメモもくっついてきたから、いやいや違うんだ、来年は適応外使用を2倍3倍に増やすんだという話をした。我々の病院は税金の入っている研究病院なんだから、世界に有効と言われている薬があるなら、どんどん使って有効性を確かめ保険適応してもらうのが使命。今日はあまり来ていないけれど、現場の医師が理論武装してきたなら全部認めるつもりだから安心してほしい。
このように制度に規定された線引きを変えるのが私どもの使命だし、有効性の境界を変えるのは国民。決して医療者ではない。10億円などといっても国家予算から見た大した額ではない。しみじみ我々医師がもっと頑張らないと、と思った」
(了)