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「がん治療認定医」を知ってますか?―専門医ではない、がんのよろず相談窓口ドクター


■「がん治療認定医」は何をしている?
 同機構の副理事長も務める、国立がんセンター中央病院(東京都中央区)の土屋了介院長は、「がん治療認定医」を、「患者さんががんのことでなんでも相談に乗れるお医者さん」と説明する。つまり、がんについて相談したい患者が、どこに行って何を聞けば分からない時に窓口となる、「がんのよろず相談を受ける医師」のイメージだという。
 
 「患者さんの方が認定医についてよく知っていて、ご自分で調べて病院に来られる。皆さんよくご存知です」と話す、血液・腫瘍内科が専門の滋賀県立成人病センター(守山市)の鈴木孝世副院長に聞いてみると、「認定医はがんを患っている患者さんを受け止める。患者さんは『話を聞いてほしい』と訪れてくるので、話を聞いて、必要に応じて専門医につないでいくのが役割」だという。認定医は通常、外来や病棟などでそれぞれの診療をしながら、必要に応じて患者の相談に乗るという。
 
 土屋院長は、現在のがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターについて、「病院を移る場合の相談や、こういう医師がどこにいるという紹介、患者さんがどこに行ったらよいかという紹介などになる」として、患者が自分自身の病気の状態なども考えながら、もう一歩踏み込んだ相談をするような場合には機能が足りないと指摘する。このため、がん医療に関する知識や人脈を持った医師が直接患者の悩みを受け止めていくことが必要だとして、その役割を果たすのががん治療認定医だと説明する。
  
 
■ジェネラリスト=認定医、スペシャリスト=専門医 の2段構造で患者に対応 
 では既にあるがんの専門医とはどう違うのか。
 がんは専門が細分化されており、内容も治療法や手術、薬などがかなり高度に発展しているため、専門医は特定のがんや治療法についてよく知っているなど、一定範囲の専門知識や技術を持った「スペシャリスト」の医師になる。
 
 現状で知識や技術が広く深くなり過ぎているがん医療について、トータルの視点を持って患者の相談に乗ることができるのがジェネラリストとなる「がん治療認定医」で、特定のがんや治療法についての技術や知識のスペシャリストが「専門医」。認定医が必要に応じて専門医につなげていくというチーム医療のイメージだ。
 
■「総合医」のがんバージョンが「がん治療認定医」
 もう少し噛み砕けば、普通に外来や病棟で働きながら、"がんのなんでも相談"を受けることができ、必要に応じてその患者に該当するがんのスペシャリストである専門医や、患者が必要とする支援に応じてソーシャルワーカーなど他のコメディカルにつなぐことのできる"ハブ"的役割を果たす医師が「がん治療認定医」になる。西山理事が指摘するように、これだけ医療が高度化して情報が溢れる中ではがん医療の"スーパードクター"が生まれることは不可能なため、チームとしてがん患者に対応していこうと考え出された仕組みだ。
 
 現在厚生労働省で検討が進んでいるが、業界団体や学会の利権争いの種になってしまい、議論が棚上げされたままになっている「総合的に診る医師」の、がんに特化したバージョンとも言えるだろう。
 
 がん治療認定医になるための条件としては、「自分が所属する基本領域の学会」の認定医や専門医を持っていることが必要になる。日本内科学会や日本小児科学会、日本外科学会などの専門医や認定医資格というスペシャリストの資格を持った上で、ジェネラリストの認定医を取る形だ。
 
 認定医の資格試験は年に一回で、毎回約3000人の医師が受験している。これまでの3回の試験の合格率は87.1%で、7230人が合格した。認定医の基盤となる学会で最も多いのは日本外科学会で3033人、次いで日本内科学会が1232人、日本泌尿器科学会が518人など。
 認定医がいる都道府県別は、東京が最も多く873人、次に大阪(539人)、神奈川(342人)、福岡(312人)などと続く。少ないのは、順に和歌山(27人)、佐賀・宮崎(35人)、青森(36人)、高知(37人)など。
 
 しかし、各方面に話を聞いているとどうやら問題が山積しているようだ。
  
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