再開した中医協、新体制でも従来路線か
■ 「中医協が生まれ変わらなくてはいけない」 ─ 嘉山委員
同日の総会で厚労省は、診療報酬改定の基礎資料にする「医療経済実態調査」の結果を示した。これまで日医は同調査の信頼性などに疑問を呈しているため、もし日医執行部の3委員がいればデータの取り扱い自体で激論になることが予想された。
ところが今回は、同調査の報告はすんなり了承。議事がスムーズに進行すると思われたが、安達委員が「日本医師会として公表した資料を提出させていただきたい」と、"待った"をかけた。西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)と邉見公雄委員(全国公私病院連盟副会長)は、「日本病院団体協議会」としての意見を提出する構えを見せた。
これに対して、新任の嘉山孝正委員(山形大学医学部長)は「政権が代わって中医協が生まれ変わらなくてはいけない」と指摘。「パイの取り合いのような会ではなくて、国民が適切な医療を受けられるような制度設計をするのが大きな目的だ」と主張したが、遠藤会長は「お気持ちはよく分かるが、とりあえず直面の平成22年度改定で点数をどうするかを議論しないといけない」と一蹴した。「ここでのルールに従え」ということだろうか。
総会に続いて開かれた基本問題小委員会は「小児医療」と「勤務医の負担軽減」が議題だった。総会で遠藤会長が「説明は簡潔に」と指摘したが、その言葉は保険局医療課の佐藤敏信課長には届かなかったようだ。いつものように、小児医療で約15分、勤務医の負担軽減で約20分の"基調講演"が行われた。これまでの中医協と何ら変わりはない。
注目された中医協の位置付けについても特に意見は出なかった。中医協の上部組織として、「診療報酬改定の検討チームを設置する」との声もささやかれているが、次期改定についてはとりあえず従来通りに進めていく方針だろうか。
「政治主導」で診療報酬の決定プロセスを見直すように思われた新体制の中医協。だが、足立信也政務官は冒頭の挨拶で次のように述べている。
「私たちは政府で決めた方針を審議会で認めさせ、それを中医協で具体化していただく、そういう縦のつながりの考えは持っていない。お互いの立場でキャッチボールをしながら、何が今大事なのか、崖っぷちに立っている部分はどこなのか、あるいは崩壊と言われているところはどこなのか、今まず何をやるべきかということを一緒になって考えていただきたい。期間は限られているが、まずは来年度の改正でどこに手を付けるべきか、私たちの考えもしっかりお互いにキャッチボールしながら、それを具現化していっていただきたい」
「現場主義の議論に期待する」との見方もできるが、「放り投げた」と解釈することもできる。タクトを振る指揮者は変わらず、演奏者が少し入れ替わっただけと言うべきだろうか。しばらくは、一流のソロ演奏家がバラバラに奏でる音を聴くことになるかもしれない。安達委員の発言、足立、山井両政務官の挨拶は次ページ以下を参照。
【目次】
P2 → 「中医協が生まれ変わらなくてはいけない」 ─ 嘉山委員
P3 → 「私の身分は日本医師会に所属する会員」 ─ 安達委員
P4 → 「現場主義を大事にしたい」 ─ 足立政務官
P5 → 「先生方に日本の医療の未来がかかっている」 ─ 山井政務官