「救急搬送」と「受け入れ」のマッチング実施へ―消防庁が今年度実態調査で
総務省消防庁は8月6日、今年度に行う救急搬送の実態調査で、救急の搬送と受け入れのマッチングを一部地域で実施する方針を決めた。救急隊が疑った疾患と実際の診断名、選んだ搬送先が適切だったかなどを検証し、救急搬送と受け入れ業務の質の向上を図ることが目的。今後、各都道府県が実施する救急搬送の検証作業のモデルとなりそうだ。(熊田梨恵)
消防庁が同日開いた救急業務高度化推進検討会(座長=山本保博・東京臨海病院長)に提案し、大筋で了承された。
救急搬送と受け入れのマッチングは、長崎県など一部の地域では実施されているが、国が行ったことはなかった。これまで消防庁や厚生労働省が開いた検討会などで「医療提供体制や救急業務の質の向上のためにマッチングは必須」との声は上がっていたものの、「救急隊(消防機関)=消防庁」、「医療機関=厚生労働省」という所管の違いや、現場の負担感などの問題からなかなか実施に至っていなかった。
消防庁は今年度に実施する実態調査で、地域を限定してマッチングを行っていく方針だ。個々の搬送ケースから、消防機関側の▽観察所見▽実施した応急処置▽医療機関選定理由▽現場滞在時間▽照会回数、受け入れに至らなかった理由など-と、医療機関側の▽初診時診断▽確定診断▽転帰▽入院、手術の有無など-をマッチングして検証することで、救急業務のPDCAサイクルを機能させることを目指す。
消防庁は、受け入れ照会回数や搬送に要した時間など通常の調査項目に加え、消防機関側が疑われた疾患を記入し、医療機関側が確定診断名や一定期間後の転帰、救急隊の判断に関する評価などを回答する形を提案した。調査対象は、脳卒中や心疾患、救命救急センターに運ばれたケースなど、重篤なケースに絞るとした。
調査の実施時期や場所、具体的な方法などは作業部会で検討される。
今年秋には改正消防法が施行され、都道府県には協議会を設置して救急搬送・受け入れルールを策定することが義務付けられる。この協議会は救急搬送に関する検証作業を行う役割も担っていることから、国が実施する今回のマッチングはそのモデルになっていくとみられる。