「誘導するデータを厚労省は出してはいかん」 ─ 実調めぐり火花
■ 「回収のバイアスがあるのではないか」 ─ 安達委員
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
京都府医師会は4700の会員がおります。その半数が加入するメーリングリストを立ち上げております。勤務医の皆さんも入っております。病院との連携メーリングリストもあります。
今度の(厚労省の)発表につきましては、勤務医の皆さんから特にコメントはありませんでしたが、個人診療所の開設者、いわゆる開業医は非常に多数の書き込みをしました。その論調は、たった1つでございます。「この数字はどこの病院の数字なんだ」と、「どこの個人医療機関の数字なんだ」ということでございます。
つまり、我々が理解している地区医師会あるいは市医師会、府全体で実感している数字に比べると、非常に乖離がある。一言で言うと、非常に(収益が)高い数字だろうという認識があるということでございます。
同じように、私は日本臨床内科医会にも加入しておりまして、「社会保険(部医療・)介護保険委員会」の委員長を務めておりますが、そこのメーリングリストも同様の趣旨でございます。
これは、今回に限ったことではございません。「(医療経済)実態調査」というものの数値と、我々の地域で診療している個人医療機関の医師の実感として感じているものとの間に非常に大きな乖離があるということでございます。「それはなぜか」ということを1点、申し上げます。恐らく、今回の実調(医療経済実態調査)の回収率は50%ぐらいだったはずだと思います。
▼ 「一般病院」は917施設(有効回答率56.6%)、「一般診療所」は1047施設(同44.0%)だった。
個人医療機関というのはさまざまでございます。開設してからの年(数)もありますし、個々の医師の能力等もございますが、一般的に言えば、収益がある程度上がるようになってくると、人件費や薬剤、材料等の購入など、非常に経理内容が複雑になってまいりますので、基本的には年収の多い医療機関の大半は経理処理を税理士さんにお願いしています。
今回(の調査から)新たに分類されました法人医療機関も、一般的に言えば、法人化する医療機関のメリットというのは、収益が高くなっているところの部分でございます。当然、ここも税理士さんに会計処理をお願いしていると思います。
実調(医療経済実態調査)の調査票を頂きましたときに、これを、その助けをなくして個人の医師が診療の合間に書くということは大変な労力でございます。ですから、全体の個人医療機関の収益の中で、比較的に高いものだけが回答の中に入っている。そういう「回収のバイアスがあるのではないか」というのが我々の印象でございます。
ただ、印象だけを申し上げましても、一方にこういう数字が出ている。日本医師会の分析というのは、(実調で)出た数字そのものを受け止めて淡々と分析しているわけですが、それ以前にこういう印象がある。
遠藤先生は以前から、「エビデンスに基づいて議論しよう」とおっしゃっている。ならば、それ(バイアスを排除したデータ)を出す方法はあると思います。事務局(保険局医療課)の方、よろしければメモを取ってください。
【目次】
P2 → 注目される西澤委員のスタンス
P3 → 「実態と離れている」 ─ 嘉山委員
P4 → 「日医としては勤務医の給与が低いと思っている」 ─ 安達委員
P5 → 「回収のバイアスがあるのではないか」 ─ 安達委員
P6 → 「平均値より上にたくさんのプロットが落ちるのでは」 ─ 安達委員
P7 → 「2号側全体で統一はなかなか難しい」 ─ 西澤委員
P8 → 「誘導するようなデータを出してはいかんよ」 ─ 嘉山委員