病院と診療所の外来は「同一の医療サービス」? ─ 再診料の議論開始
■ 同一の医療サービスといえるか
診療所の再診料をめぐる前回改定の議論では、病院と診療所の外来診療が「同一の医療サービスといえるか」という点が問題となったが、この議論は中断したままになっている。つまり、複数の疾患を抱える高齢者を診る診療所のほうが外来診察に時間や手間がかかるので、診療所の再診料が病院よりも高いのは当然だというのが日本医師会の主張だった。
当時の土田武史会長は日医の主張にも一定の理解を示し、ならば病院と診療所の外来診療がどのように違うのか、また病院と診療所との関係はどうあるべきかを議論すべきであるとの認識を持ったようだが、「これに気が付いたのが12月で、議論する時間がなかった」と後に振り返っている。新設する「後期高齢者医療制度」の議論も絡んで、意見集約は難しい状況だった。最終的に診療所の再診料引き下げを見送った。
2008年度診療報酬改定を答申した同年2月13日の中医協総会で土田会長は、「再診料や初診料はどうあるべきか、病院と診療所との関係はどうあるべきかをやるべきだった」と述べた。
改定の答申には、「初・再診料、外来管理加算、入院基本料等の基本診療料については、水準を含め、その在り方について検討を行い、その結果を今後の診療報酬改定に反映させる」との意見が付された。08年度改定を終えた後に中医協の会長が交代したが、遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)は土田前会長とは違う考えを持っているようだ。
今年10月、医療経済フォーラム・ジャパンが開催したシンポジウムで、遠藤会長は「診療所のほうに有利な資源配分がされているという見方をするのが素直ではないか」と述べている。その理由として、病院のほうが診療所よりも医師や看護師の配置が手厚いことや、医療機器などの設備が整っていることなど医療資源の投入量が違うことを挙げた。(遠藤会長の基調講演はこちらを参照)
このように、再診料をめぐる議論は「同一の医療サービスといえるか」という点が問題になっている。「同一性」の判断基準によって結論が異なるが、政策的な判断が先にあって、「同一だ」「同一ではない」という傾向も感じられる。この判断の基礎に、「病院勤務医と診療所開業医との年収格差」が使われることもある。
しかし、「開業医」と一口で言ってもいろいろで、へき地で訪問診療に取り組む開業医もいれば、勤務形態が"サラリーマン化"している都会のビル診療もある。厚労省の「医療経済実態調査」について安達委員は、法人化した高収益の診療所ばかりを抽出したデータである可能性を指摘した上で検証を求めている。(実調をめぐる議論はこちらを参照)
一方、診療所の開業コストは再診料に含まれるが、病院の開業コストは再診料に含まれていないと考えれば、診療所の再診料のほうが高いのは当然という考えも成り立つ。この場合には、「同一ではない」という理屈もあるだろう。なお、再診料をめぐる同日の議論は次ページ以下を参照。
【目次】
P2 → 同一の医療サービスといえるか
P3 → 初・再診料で3つの論点を示す ─ 厚労省
P4 → 「低いほうを高いほうに合わせる」 ─ 鈴木委員
P5 → 「病院の再診料が100点でも病院集中は止まらない」 ─ 安達委員
P6 → 「同一の医療サービスを受けた場合は同一の料金」 ─ 白川委員
P7 → 「格差の理由が議論の出発点として必要」 ─ 安達委員