厳戒の米国大使館でジェネリックシンポジウム
3人目は、フィラデルフィア科学大学のリチャード・ステファナッチ博士。
「慢性疾患の場合、ある程度の期間で服薬をやめてしまう例が多い(アメリカでは薬代が高いために、そうなるらしい)。ジェネリックによって薬剤費が下がれば、より長期に渡る服薬が可能になり、医師にとっても喜ばしいこと。個人的には、長男を2年前に小児がんで亡くしたので、がんの分野などでも企業の革新性を後押しする存在としてジェネリックに期待している。医療費の削減効果も大事だが、質の向上に役立てることも大事。
そのために必要なことは、物理的に利用可能な状態になっていて、受け手側の偏見が払しょくされていて、さらにシステムとプロセスが整っていること」
この発言はどうも日本の制度との整合性はあまりよくなさそうだった。
4人目が土屋了介・国立がんセンター中央病院院長。
「うちの病院で後発品に切り替えた時、内科医からは苦情が出なかった。しかし泌尿器とか皮膚とか外科系の医師が投薬もやっているような分野からは苦情が出た。薬を使いなれた分野からは苦情が出ずに素人が使っていると苦情が出る」から始まって、終始会場を湧かせ続けた。
「なんだかんだいって、日本の医療体制はまだまだ後進国であり、その医療体制を改めないとジェネリックのところまで辿りつかない。今日も、挨拶したのはアメリカの厚生労働省の人じゃなくて商務部の人。日本でこんなことが考えられるか。厚生労働省が、医療をいかに産業として見ていないかということ。産業として見ないとジェネリックまで辿りつかない。この辺からいじっていかないといけないのでないか」
ここまで挑発的な物言いを続けたのは、おそらく次の演者のことを意識してと思われる。
登場したのは、厚生労働省の木下賢志経済課長。
「土屋先生は高尚な話だったので、私は現実的な話を。個人的には、どこが担当するかは別にして、医療の産業政策に国としてしっかり取り組まないといけないと思っている。日本の企業を守るということではなく、外資にも日本の市場を魅力を持っていただかないと、日本の産業も成長していかない」と用意したスライドから外れて軽く応戦した。スライドそのものは、どこかで聞いたような話ばかりだったので多くは触れないが、最後にちょっとだけ「ん」と思った発言があった。
大規模病院の薬剤部が地域の薬局や薬剤師、あるいは開業医に対して推奨するジェネリックを教え、地域の薬局はその品だけ在庫しておけばいいようにしたらどうか、メーカー側も薄く広くではなく、そうした病院薬剤部に集中して情報提供すればよいではないか、と述べたのだ。そのうち何かモデル事業が始まったり、通知が出てきたりするかもしれない。