村重直子の眼3 小田知宏・前スターティア執行役員社長室長
村重
「介護とか福祉とか、医療もそうなんですけど、普通のマーケットで動く業界とだいぶ違うというか、国とか制度とか法律とか補助金とか税金とか、そういったものの影響がものすごく大きいと思うんです。医療とか介護とかは、トータルの枠を抑え込んできましたよね。障害者自立支援法とかの影響もありますよね。今後どういう風に変わるのかわからないですし」
小田
「国の政策としては、僕は小さな政府主義なので、あまり福祉にもお金をかけるべきじゃないと思っています。もっと民間に参入させて、民間の知恵で限られた財源の中で最高のサービスを提供していくべきだと思っていますので、財源は障害を持つ子供が増えてくればトータルは大きくなるかもしれないけれど、1人あたりの財源は絞っていくべきで、絞られても事業者側がそれで今までと同じ支援を十分やっていけるようにするんだと思っています」
村重
「障がい者を支えて働けるようになることが、社会的に価値を産むと仰っていましたけれど、それに通じますね」
小田
「ただそうは言っても、かなりの税金を入れ込んでいるわけで、福祉っていうと、消費して終わりという感じですけれど、土屋先生が経済教室(日経新聞4月5日付)で書いてらっしゃったように、産業化、福祉も産業にするべきだと思っています。実際に障がい者は働けるわけで、国民からの10年後20年後へ向けての投資として捉えられますし、福祉も輸出できると思っているんです。いいサービスは海外にも売れるし、もっと簡単には、今中国からたくさんの人が来ていますので、経験してもらって、国に持って帰ってもらえばいいサービスになると思います。そこでどう日本企業が稼ぐかというのは、ビジネスモデルの問題ですけど、もの凄いチャンスですよね。将来の日本を強くするために、今の日本の福祉をうまく利用するということなんですね。今までは本当に消費で終わっちゃってますので」
村重
「そこは公設公営でやってる所とは全然違うビジョンなんじゃないかと思いました」
小田
「公設公営でも、目の前のこの子を将来のためにちゃんと社会人としてある程度働けるようにしてあげたいという点では全く一緒で、たぶん向いている方向は一緒だと思います。ただ、そういう意識を持って取り組むことで、関わり方が少し変わってくるかもしれないし、ノウハウも一子相伝というか自分のノウハウだけじゃなくて、形にしたりだとか教材にしたりだとかにしていけば、僕らはそれを輸出できる可能性もありますよね。何かどうせなら世界に、日本の国力を上げて行くことに寄与できたら、優秀な人が来るんじゃないかなと。同じように医療も凄いチャンスの中にあると思いますよ。医療なんか、もっとお金を使ってますからね」
村重
「希望がもてますね。小田さんのようなビジョンの人あまりいないですよね」
小田
「ビジョンはお金がかからないですから。ビジョン食って生きていけないのと、ビジョンだけだったら誰でも語れるので、まず自分でちゃんと食べて行くことだと思っています。最初のお客さんは20人ぐらいだと思うんですけれど、実際に目の前の1人の子どもを実際に療育しているという根拠があってビジョンを語っていきたいと思うんですよね。そういう風にやっていくと、今のビジョンは若干ズレているかもしれません。色々やると、現場で正しい方向が見えてきて、より精密なビジョンを語れるようになると思うんです」