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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼5 小野俊介・東大大学院薬学系研究科准教授(下)


村重
「最近、医者の自律というのがキーワードとして出てきています。それはもちろん大切なんですけれど、医者だけでなく、国民全体もそうですね。国民の意思決定プロセスがどうあるべきか考えようとか、自分も意思決定を担う一部なんだという認識よりも、『お上にお任せ』の発想が強いと感じます。医者も国民なので、同じですね。医者にその意識があまりないから、医者の自律という話が出てきていると思うんですけれど、凄くよく似ていると思うんですよね。医者には、専門家たるもの論文を読んで声を上げていただきたいし、全く同様に国民1人1人も自律して民主主義のプロセスの一端を担い、勉強して声を上げていただきたいと思いますね。実際にそういう動きが広がりつつあるとも感じています」

小野
「国民全員が『レギュラトリーサイエンティストに判断してもらうのがいい。全権委任する』と言ってくれるのなら構わないですけれど、そんなこと国民は一言も言っていないですよね」

村重
「仰る通りですね。政治主導という言葉が躍ってますが、その意味をよく考える必要があります。政治主導って、本当は国民主導と同じ意味のはずですよね。官僚主導から政治主導に入れ替わっただけではダメで、国民が意思決定プロセスにどう関わっていくかが重要です。「お上にお任せ」の他力本願で何かやってもらおう、何か悪いことが起きたらお上のせいだという発想ではなくて、自分がそこにどう関わって行くのか、自分の判断材料をどこから取ってくるのかという発想で、データベースを公開しろと言えるといいですね。厚労省やPMDAのデータベース公開は、1人1人が情報を得て考え、行動できるようになる、そうした動きを可能にするためにも必要なことです。そういう現場での動きが今よりもっともっと出てくるといいなと思うんです」 

小野
「現実問題として、他人に判断を任せるしかない人がいるし、『自分で判断するのは嫌だから、誰か好きにして』が好みだったりする人もいますが、そういう人たちも含めて幸せになるにはどうしたらいいのかを考えていくプロセスが欠けていたという意味で、村重先生と認識は一緒です。薬が危ないかもしれないというシグナルを横目で見つつ、PMDAの人が『これは放置しても大丈夫だ』あるいは『すぐに対応すべきだ』と判断しているとして、その判断の仕方や安全性に対する好みを、一体社会の誰が認めたのか、という問いかけをすべきです。今までそうしてこなかったことを皆で反省しつつ、ですけどね」

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