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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼5 小野俊介・東大大学院薬学系研究科准教授(中)

 村重直子・元厚生労働省大臣室政策官と小野俊介・東大大学院薬学系研究科准教授の対談の(中)です。

村重
「現場での多様な薬の使い方をモニタリングし、チェックするという話になりましたが、その前提として、やっぱりデータベースを公開して透明に議論していかないといけないと思います。使い方が人によってまちまちなんだとか、それによってメリットを受ける人、デメリットを受ける人がいるとか、そういうことがなかなか一般の人には伝わってないと思います。データを公開しなければ皆が納得しないんじゃないでしょうか。そこがまず出発点ですよね」

小野
「そのようなデータを要求し、活用する主体として、新PMDAとでもいうべき、もう一つの審査機関があっても良いのではないかという提案をしたいわけです」

村重
「『機関』に『お任せ』になってしまうと、多様性のバランスを保てないので危険です。厚労省・現PMDAが持っているデータベースを公開させる。それらのデータベースを連結すると、かなりのことが分かりますよね。そういうチェックをする主体は、複数、たくさんあるほうが多様性を保てる。データベースを公開させれば、チェックするのは、現場の患者さんも医療者も、誰でもできるようになります。」

小野
「国の機関、企業、研究者に対して、こういうデータを出してくださいと積極的にお願いするプレイヤーが出てくれば、素晴らしいことです。産業論ですが、国内の様々な臨床試験が今一つ元気にならない、予算をつけても砂漠に水をまくがごとき状況になっているのは、そのような試験で生み出されるデータの需要者が日本にいないからです。公共工事国家日本の構造的問題です。臨床データを生産しても、読む人がいない。データを欲しがってくれる人がいないんですね、日本には。世界的には臨床データは、多くはパブリックセクターが需要します。承認審査の判断に使ったり、保険の償還に使ったり、ガイドラインを作るのに使ったり。一方、典型的な新薬開発データ以外については、日本のデータ需要は著しく貧弱です。それ以前に、パブリックセクターに医療経済系のデータをちゃんと分析できる人があまりいないという問題もありますが。データを使う人がいないからデータが出ない、だから試験基盤が育たない。そういう意味で、新しいプレイヤーが様々な臨床研究データの需要者になれば、日本の臨床試験が公共工事の世界から脱する一助になると思うのです」

村重
「世界的には臨床データの需要者は、主に臨床医ですよ。パブリックセクターはその一部に過ぎません。臨床データを臨床医の間で情報共有して議論する媒体が、論文です。論文というツールを使って、臨床医たちが発信し、受け取るデータが、患者さんの治療や医療の進歩に直結します。皆さん言ってますよ。皆さん、日本にはデータがないないと言って海外データを使って研究してます。でも本当は、日本にもデータは存在しているんです、公開してないだけで。お医者さんの中にも日本のデータを使って論文を書きたいのに、できないという人はたくさんいますし、国際学会で外国人の研究者から、国際的にデータ解析したい、日本とも本当は連携したいんだけれど公開してないからできない、と言われたと聞きました。

でも、たしかに日本発の臨床論文は少ないですし、データベースを公開しろという声はなかなか上がってきてないですね。海外にはこんなにデータがあってこんなに研究しているのに、どうして日本にはないのかという話をよく聞きます。日本の臨床現場から医師たちが「自律」して論文発表してこなかったことは、大きな反省点だと思います。現場の臨床データを発信できるのは、現場の医療者しかいないのですから、外国データにばかり頼っていればいいのではなく、日本のデータを積み重ねていく自覚を持たなければいけませんね。その一方で、厚労省の医療費抑制によって人件費を切り詰め過ぎたため、臨床医の雇用が足りない、コメディカルの雇用が足りないのが現状です。臨床医も肉体労働にしかペイされないので、勉強したり論文を書いたりする時間が持てない状況が長いこと続いてきたという現実があります」

小野
「鶏と卵の関係でもありますね」

村重
「そうですね」

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