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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼12 本田美和子・国立国際医療研究センター病院医長(上)


本田
「そうなんですよ。それをお伝えする方法があった方がいいなとずっと思いながら、日本に戻り働いていました。5年ほど前に、医療に興味のある人たちが集まって勉強する東京大学の医療政策人材養成講座というのが開かれていて、行ってみることにしました。そこには、医療に関する仕事をしている医療従事者、医療政策を作っている方、メディアの方、患者さんあるいは患者さんを支える活動をしている方、の4つのグループの人たちが集まっていました。この講座では講義を受けながら、1年を通じて何かプロジェクトをしなければいけなかったのですが、これだけ色々な分野の人が集まっているのだから、ここで多くの人の知恵をお借りして、私がずっと作りたいと思っていた自分を守るための記録をつけるノートを作れないかと思いました。声をかけたら、歯科医師、医療ソーシャルワーカー、健康雑誌の編集者、それから消費者センターで一般の方からの相談を受けていらっしゃる相談員、弁護士という様々な分野でご活躍のかたが集まってくれました。このチームで、自分のからだのことを知って、大切にするための道具としての健康手帳を作ることになりました。 健康な暮らしを支えるために知っていると役に立つ、と自分たちが考えていること、病気に関する記録はもちろんですが、食生活の組み立ての考え方や、医療保険の使い方、遺言の作り方など多岐にわたる内容をおさめました」

村重
「一冊の本になるぐらいのものだったそうですね」

本田
「はい。ファイルになって、色々書き込むようになっていて、自分のことを前のページから順番に書いていくと、一番最後のページを書いていく時には、あなたの人生の健康に関することや今後気をつけておくと良いことなどはすべてこの中に入っている、というようなものでした。既往歴、飲んでいるお薬や日常生活で役に立つ高齢者機能評価まで網羅していて、内容的には自信をもっていました」

村重
「生まれてから人生ずっとみたいな感じですね」

本田
「そうなんです。で、できたのはいいのですが、実際に手に持ってみると、ワープロで打って穴を開けて綴じたバインダーは厚くて大きくて、デザインも無骨で全然かわいくないし、書き込むのが楽しいとは言い難いものになってしまっていました。これを多くの人に使ってもらうにはどうしたらいいかなあと考えているうちに、医療政策人材養成講座というのは終わっちゃって、みんなも解散して、厚いファイルと私が残されたわけです」

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