村重直子の眼12 本田美和子・国立国際医療研究センター病院医長(上)
村重
「エッセンスは残されていたということですね」
本田
「はい。私はこれで十分満足でした。とにかく驚いたのは、とてもかわいくなったんですよ」
村重
「もうデザインがついていたんですね」
本田
「すごいの。医者のわたしが作った内容に対して、編集者、デザイナー、イラストレーター、と専門家の力がどんどん反映されていて、手帳そのものに愛着がもてる仕上がりでした。また、糸井さんから、手帳のテーマとなる詩を谷川俊太郎さんにお願いしようと思うんだけど、どうだろうかとお話をいただきました。もちろん、ぜひお願いいたします、と申し上げました。とてもうれしかったですね。自分が作りたい手帳に、谷川俊太郎さんが詩を書き下ろしてくださるなんて幸運を想像したこともありませんでしたから。手帳の表紙の裏にある、谷川さんの『カラダと仲良く』というタイトルの詩です」
村重
「手帳のコンセプトをうまく表していて、素敵な詩ですね。それに、イラストもかわいく、キレイにできてますよね」
本田
「そうなんです。それからもうお一方、日野原重明先生が小さな勉強会を主宰していらっしゃって、参加させていただいているんですが、そこで伺う日野原先生のお言葉いつもとても胸に染みるので、日野原先生にもご相談申し上げることにしました。そうしたら日野原先生は二つのことについてお話しくださいました。まずはそれぞれが自分のカルテを作ることがどれほど大事かということ。つまり、たとえ3分診療しか時間がなくても、自分の体のことを十分に知っていてそれを伝えることができれば、その3分間はとても有意義だということをお話しくださいました。あともう一つは、ピカピカの無傷の健康があればそれがいいけれど、すべての人がそれを手にすることはできないですよね。ですから、『病気があるにもかかわらず』とか、『寝たきりにもかかわらず』とか、何でもいいんですが、『にもかかわらず』私は今日一日を気持よく過ごせたし、朝起きた時には今日1日何をしようかなと計画を考える、といった、日野原先生は健康感とおっしゃいましたけど、何か病気があっても何があっても人は健康な気持ちを持ち続けることができるんだよ、という素晴らしいメッセージをいただきました。そうして、谷川俊太郎さんの詩と日野原先生のお言葉を毎回入れることになりました」
(つづく)