「入院から在宅へ」という考え方について
■ むしろ在宅オタクみたいな
[武久洋三・日本慢性期医療協会会長]
そうなってくると、在宅療養支援を専門にしている先生は、「何が何でも在宅で死んでもらう」と。
何か悪くなって、家族が「ちょっと病院に連れて行ってもらいたいんです」と言っても、「いやいや、ここで大丈夫よ、私が行きますから」というようにして、むしろ在宅オタクみたいな、全部在宅ですべてやるというように......。
ちょっと、流れが少し間違った方向に行くのではないか。やっぱり、いろいろな人の、いろいろな施設の助けを借りながら、在宅療養を良い状態で継続したほうがいいんじゃないかと思っております。
そういう意味で一応、在宅であっても、お医者さんや看護婦さんが何かの時には行けるようにしないと。
現在はどうなってるかって言うと、ほとんどは、在宅療養支援診療所の先生は「いや、100年ぐらい診ていても夜中に看取りに行くのは年間に数回しかないよ」って言うんですね。
看護婦さんに行ってもらって、「じゃ、明日の朝に死亡確認に行きます」って言って、「それでいいですか?」ときくと、「それでいいですって言ってます」と。それが現状なんですよ。
これはね、ちょっとお寒い限りで、何ともまあ......、ターミナルで、「いよいよ息を引き取るのは数時間後ではないか」と言えばですね、一応、お医者さんは亡くなるまでの間の3時間、一応診てあげるというような余裕がないとこれ、できないわけですよ。
「あー、あと2、3時間やな」と思ったら、「じゃ、私は診療所に帰ります」って言って、「亡くなったら次の日に来ます」って言って、「死亡診断書を書きますわ」と言ったらあまりにも味気ないという感じはありますよね。
【目次】
P2 → 誰だって病院で死にたい
P3 → むしろ在宅オタクみたいな
P4 → どっちの方向に行っていいか