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混合診療ってどうなの?

29-2-1.JPG最近「混合診療」というものについて、解禁するか否か、猛烈な綱引きが繰り広げられています。
いったい何を争っているのでしょうか。

監修/上 昌広 東京大学医科学研究所客員准教授

こういうもの

 昨年10月に静岡県の藤枝市立総合病院が保険医療機関の指定を取り消されました。医療界では、ちょっとしたニュースでした。
 保険医療機関でなくなるということは、かかった医療費を患者さんが全額負担しなければならないということです。保険が効けば多くても3割負担で済む(コラム参照)のですから大違いです。そして、そんな所を選ぶ患者さんは稀なので、医療機関は潰れます。
 今回は1カ月後すぐに問題とされた歯科口腔外科を除いて再指定され、藤枝市立総合病院は潰れませんでした。けれど、10月の収入は例年に比べ5億円も減ったそうです。指定取り消しの理由は、うっかり「混合診療」したから。これだけ見ると、「混合診療」は相当悪いことのようです。
 ところが、11月になって東京地裁で「混合診療禁止には法的根拠がない」という判決が出ます。すかさず、政府の規制改革推進会議が12月にまとめた第2次答申で、「混合診療」の全面解禁を重点項目に盛り込もうと厚生労働省と折衡しました。
 と、ここ数カ月に起きたことを並べましたが、何が何だか分からないと思います。整理しましょう。
 混合診療とは、「保険が適用される医療行為」と「適用外の医療行為」を同時に同じ医療機関で行い、保険適用部分の保険給付を受けることを指します(07年9月号「先進医療」特集参照)。そして現在では、いくつかの例外を除き、保険適用外の医療も行った場合には、その費用を請求しない(医療機関が負担する)か、保険適用分まで全額患者さんが自費負担することとされています。これが、混合診療の禁止と言われるものです。
 実は東京地裁判決で指摘されたように、健康保険法や関連する政省令には「保険外の医療を行ったら給付を一切行わない」との明確な条文はありません。しかし、厚生労働省は通達と告示、つまり法解釈で混合診療を禁止してきました。
 国会の議決なしに官庁の裁量だけでどうにでもなるというのは法治国家として大問題なのですが、言い始めると収拾がつかなくなるので、今回は、なぜ厚生労働省がそんな立場を取るかというところから説明します。
 日本は、世界に冠たる国民皆保険制度を持っており、建前として「基本的」な医療には健康保険がすべて提供されることになっています。逆に言うと、健康保険が適用されない医療は「ぜいたく」か「推奨できない」もののはず。このため、そのような医療を保険医療機関で提供すべきではないというわけです。
 しかし建前と実情のかい離が激しいのは、いずこも同じ。医療が発展し、また社会の価値観も多様化すると、「基本的」と「ぜいたく」との線引きが難しくなります。特に新薬や新治療法の場合、「基本的」と見なされるべきものであっても、保険適用という国のお墨付きが得られるまでは、受けたら他の医療費まで全額自費となるため、ハードルが高くなってしまいます。
 保険適用外の自費受診と保険診療と同時に行うことを認めた方が、むしろ実情にあっているのでないか。これが解禁派の主張であり、対する厚生労働省は「禁止堅持」との立場を崩していません。

高額なら後で戻ってきます。  保険診療では費用の3割をいったん患者さんが負担しますけれど、一般の人の場合で支払額が月額8万100円を超えると、超えた部分の29/30(約97%)が後から戻ってきます。低所得者なら、さらに自己負担額は少なくなります。  これが高額療養費制度と言われるもので、大病をしてもそれほど医療費の心配をしなくて済む理由です。

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