文字の大きさ

過去記事検索

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。
特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

梅村聡の目③ 医療の「消費税」 実は取られてます。

関西版『それゆけ!メディカル』限定コンテンツです。

 今回は医療費にかかる消費税というテーマでお話をしたいと思います。そんなこと国はやっとったんか、と驚くような話です。

医療機関は払い損

 皆さんが医療機関に行って窓口でお金を払う時に、消費税を上乗せされることはないと思います。明細書を見ても分かります。医療、学校教育、埋葬料、切手販売、助産、介護保険サービスや福祉事業など13事業は、国が消費税を非課税にすると決めているからです。
 でも、実は医療を提供する側の医療機関は、医療機器や医薬品、診療に使う道具を買う時、普通に5%の消費税を払っています。消費税というものは、取引に介在した企業が少しずつ分担する形になっています。医療機関は販売会社に、販売会社はメーカーに、メーカーは部品を購入する会社に、部品メーカーは材料を仕入れる会社に、消費税を払っていて、それぞれの企業が国に納める額は、受け取った消費税から支払った消費税を引いた金額になります。
 病院の場合も、例えばMRIを使う患者さんから消費税分をいただいいて、購入時にかかった消費税との差額を納められればよいのですが、医療は「非課税」と言われているので医療機関にとっては丸々払いっぱなしになるのです。つまり、国が医療機関から消費税を取っているとも言えるわけです。
 今では、年間に支払っている消費税の額が、大学病院だと1施設当たり約3億4000万円、公的病院で約8000万円、民間病院は3400万円というデータもあります。これでは医療機関が潰れてしまうと、医師会や病院団体が声を上げるようになっています。

ブラックボックス

 厚労省はこの問題に対する言い訳として、診療報酬自体に消費税が含まれている(上乗せされている)と説明します。ちょっと待って下さい。そうすると医療は「非課税」と言われているのに、実際には皆さん、消費税を払っていることになるんですよね。驚きです。
 診療報酬に上乗せと簡単に言いますが、診療報酬の約15%は患者さんの窓口負担、約50%は保険料で、結局は国民が払っているお金なんです。しかも、診療報酬のうちのいくらが「消費税分」なのかは誰にも分かりません。つまり国民の立場から言えば、「消費税をいくら払っているのか全く不明」ということになります。医療側から見ても国民側から見ても全くよく分からないブラックボックスです。国の情報公開という面でもおかしいのです。
 私は2009年6月の参院厚生労働委員会でこの問題を取り上げ、当時の舛添要一厚生労働大臣、与謝野馨財務大臣を追及しましたが、大臣からの答弁は「診療報酬は2年に1回見直しをして、必ず消費税の分、手当できるようにしている」でした。嘘をつけと思って、「ではカウントしている計算式を出してください。手当てしている証拠を出してください」と言うと、「それはない」と。
 また、本当にすべての診療報酬に「平等に」消費税分が上乗せされているのかというと、答えは「No」なのです。診療報酬項目は全部で約4000項目あるのですが、そのうち36項目にのみ消費税分が上乗せされているんです。例えば「高エネルギー放射線治療」や「閉鎖循環式全身麻酔」、一部の入院料などに上乗せがあります。そもそも約4000の医療行為のうちのどうして36項目だけなんでしょうかね? 不思議です。この数字はどこから出てきたんでしょうね。
 実は消費税が導入される1989年、当時の大蔵省から厚生省に「これが消費税分ですよ」と財源がポンと渡されたんです。その時に厚生省保険局が「これは自分たちに来たボーナスだから、自分たちの付けたいところに付けるんだ」と勝手に解釈して付けたのが、たまたま36項目だったんです。
 こんなこと許されますか? 大蔵省から出たお金を厚生省の役人が勝手に付けたなんて、こんなことしたらだめですよね。しかも、その36項目だけでは本来必要な上乗せ分の6割程度しかカバーできず、年間1病院当たり平均7482万円の持ち出しになっていると言われているのです。

税の根本に関わる話

 「事業仕分け」は、税金の「出」の部分を適正化しようという話ですが、「入り」の部分も適正化が必要です。
 根本の問題は、国民が知らない間に支払わされて、その配分を役人が勝手に決めているという点にあります。国民の税や保険料に対する無知や無関心に、国が付け込んでいるわけです。
 日本は欧米に比べて税金や保険料に関する教育が極端に少ないです。例えばフランスはそれぞれの税金が国の予算にどう反映されているか学校で教えています。突き詰めて言えば、国民のリテラシーを向上させなければ、この問題は解決しません。だからそういう文化や土壌を日本という国で作っていくことが大事だと思いますし、それが政治家としての私のライフワークになるとも考えています。
 現状を申し上げますと、政府・与党の中に「税と社会保障の一体改革」という有識者会議ができました。議論される大きな12の大項目の中に、この「医療機関の消費税問題」がおそらく入ります。すぐ完全に解決できるかは微妙ですが、国民に考えていただく素地はできつつあると見ています。この話題を取り上げる初めての市民向けのシンポジウムを3月に尼崎市で開いたところ、皆さん大変に驚かれていました。
 医療界の関心は次の診療報酬改定に向いていると思いますが、この問題の解決とセットでないと、本当の意味で医療は充実しないと僕は思っています。
 私はこれからも全国で話して回りたいと思っていますし、また『適切な医療費を考える議員連盟』でも、この話題を取り上げたいと考えています。
 全国8800の病院、10万近くの診療所が不透明な税払いから脱し、診療報酬が確実に国民の皆さんの医療に使われる体制を作らないといけません。この不透明な事実を知っていただいて、勝手な保険料や税金の使い方は許すまいと感じていただき、次の行動につなげていただければ幸いです。

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
  • 「認知症 それがどうした!」電子書籍で一部無料公開中
サイト内検索
掲載号別アーカイブ