文字の大きさ

過去記事検索

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。
特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

国民皆保険は絶対に守るべき ただし現状のままでの存続は無理

格差恐れ本末転倒に

梅村 私としては、先進医療など最先端の医療技術を普及させるには、むしろ混合診療を積極的に使って医療界や製薬会社が自ら値決めをする方が、産業として成長するのではないかと感じています。高過ぎると広まらないわけですから、ある一定の価格に収束するはずです。

江崎 その方が産業政策的には健全だと思います。実は、なぜ混合診療がダメなのかと日本医師会の幹部に直接訊いたことがあります。

梅村 え、それを直接訊いたのですか? 江崎さん面白いですね、失礼な言い方ですけど。

江崎 そこは避けて通れないと思いましたので。訊いてなるほどと思ったのは、先進医療などの高度な治療ができる病院とできない病院の差は、最新設備の投資ができるか否かです。最新設備を持つ病院は治療成績も良くなるため、全国から患者が集まることになる。そうすると経営的に余裕が生まれさらに良い設備投資が可能になる。これを繰り返しているうちに地域の中で医療機関に格差が出来てしまう。そうすると、最新設備を持つ病院にお金持ちの患者が集まり、押し出された地元の患者が設備投資できない病院に行くことになる。結果的に、地域のお年寄りが設備の古い病院に行かざるを得なくなるということでした。

梅村 なるほど。

江崎 この説明は、医療技術の進歩が比較的ゆっくり進む場合には一定の合理性があります。しかし、技術進歩のスピードが速い場合、最新の医療技術をいち早く患者に届けるという観点からは大きな足枷になる可能性があります。

梅村 評判の良い病院に患者が集まり病院に格差が生まれるのは、医療の世界では受け入れ難いかもしれませんね。

江崎 でも、格差が生じることを恐れて、より良い医療技術が患者に届くのが遅れるのは、医療行政としては本末転倒だと思います。医療分野では、薬価にせよ診療報酬にせよ、すべて国が決定するため、一般の産業から見れば極めて不思議な状況が生じています。昔学んだ医療技術だけでずーっと診療を行っている病院と最新の医療技術を導入している病院の提供する医療サービスに差がないという前提を置く方が、よほど不自然なことだと思います。

梅村 なるほどそうかもしれません。

江崎 最新技術の導入や経営努力を通じて、より良いサービスをより安い価格で提供するのがすべての産業政策の基本です。医療も例外ではありません。医療技術がどんどん進歩している中で、すべての医療機関が同じ医療サービスを提供できるというフィクションは、結果的に日本の医療サービスの足を引っ張り、最終的に患者と医療財政がそのツケを払うことになるのです。

梅村 そうなる可能性がありますね。

江崎 「国民皆保険制度の維持」、「長期収載品の維持」、「混合診療の禁止」という本当は全く独立の事柄を、あたかも一体不可分の制度であるかのように扱ってきた結果、一つが崩れるとすべてが崩壊すると信じ込んでいるのです。個人的には、現在の国民皆保険制度は何としても維持すべきだと考えています。しかし、国民皆保険制度を守ることと、長期収載品を維持することや、混合診療を禁止することは本質的には関係ない話なのです。

梅村 分けて考えないといけないですね。
  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
  • 「認知症 それがどうした!」電子書籍で一部無料公開中
サイト内検索
掲載号別アーカイブ