国会議員がパブコメ?

投稿者: 熊田梨恵 | 投稿日時: 2009年12月18日 16:15

 民主党の国会議員約160人から成る「適切な医療費を考える議員連盟」の桜井充会長は15日の会見で、2012年度診療報酬改定に対する議連の意見を厚労省への「パブリックコメント」としても出していく考えを示した。しかしパブコメは、省庁が制度改正の”仕上げ”として行う形だけのもので、影響力などないに等しい。国会議員は議員立法の提案など国民と違った権限が与えられているにも関わらず、なぜ医療費議連は従来の枠組みの中で活動しようとするのだろうか。(熊田梨恵)

 桜井会長は15日の会合後記者会見で、今後の活動を問う記者の質問に対し、次のように答えた。
 
「あくまで政策は政府の中で作るとか、中医協マターだと言われていますが、そこで必ず十分な議論がされるとは思っていませんし。パブコメは当然求める事になるでしょうから、我々もパブコメの一つとして、意見を言わせていただきたいと。特にこの議連は160人弱の議員の人たちが入っていて、パブコメの中で一番重いと私は思っていますから。これはちゃんと受けていただかないと、我々の言った事に対してゼロ回答で、『政府与党一元化』だと言われても納得できないんじゃないですかね。はい。そう思っています」
 
 パブコメは制度改正に伴って行うことが義務付けられているが、改正直前に形だけ行われるものでほとんど形骸化しており、、「貴重なご意見」として処理されるだけで、実際の影響はないに等しい。もし表向きにパブコメが反映されたとすることがあったとすれば、大体は裏で団体や個人間の交渉や圧力など、なんらかの具体的な動きが伴っている。
 
 診療報酬改定に関するパブコメも改定直前に行われるもので、もうすでに十分な議論駆け引きが行われていることは周知だ。前回も改定前の1月下旬というほとんど骨子や方向性が取りまとまった状態で行われていた。それ以前に十分な交渉を行っていれば別だが、パブコメを募集する段階になってから議連が意見を提出したとして、そこから大きく中身が変更されるという事は考えにくい。
 
 もちろんパブコメだけでなく、幹事長室と相談しながら申し入れを行っていく方向性も議連は示している。ただ、議連は発足当初、財務省や厚労省の政務三役に医療費増額を求めて直接交渉行うなどの意気込みを示していたにもかかわらず、最終的には自らの党が決めたシステムによってせっかくの決議文が幹事長室預かりにとどまるなど、国会議員自身が政権交代後のシステムに慣れていない様子が見受けられる。今後どういった動きになるかも全く見えてこない。
 
 国会議員は国民代表で、その国会議員で構成する国会は国の唯一の立法機関。「パブコメ」などの一般国民に向けた従来の制度の枠組みの中での活動ではなく、立法提案などこれまでになかった枠組みを設計していくため、意見を聴く側の立場になるはずだ。民主党は政権交代後、「政府・与党一元化」を進めるためとして議員立法は原則禁止されており、活動方針も小沢一郎幹事長主導で決められているなど、活動しにくい部分もあるのかもしれない。ただ、医療費議連に参加した国会議員からは「この議連で議員立法につながる議論をしていくという話もあった」との声も聞かれる。
 
 中医協が診療報酬改定の議論の仕上げに入る年明け、議連は次回の会合を開く。今後は検討チームを立ち上げて診療報酬配分の議論を行っていくとしているが、桜井会長によると検討チームは医科や歯科、薬剤関係などに大きく分かれ、メンバーになることを希望する議連参加者で構成され、関係団体からヒアリングを行っていくという。どこまで踏み込んだ内容にできるのか、注視する必要がある。
  
 

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