医療基本法をめざす人々
頭は???なのだが、プレゼンの中身の紹介に移ろう。
「医療基本法の中身についてはこれから議論していくことだが、なぜこの問題にあり方協議会が取り組むことになったか説明したい。東大の医療政策人材講座というものがあって、その構成メンバーは医療提供者、患者団体関係者、ジャーナリスト、法律家、研究者などだが、私もその2期生である。その2期では『医療政策に患者の声を反映させていくにはどうしたらいいか』をテーマに検討した。具体的には平成18年度の医療制度改革の立案過程を検討した。その結果、政策の検討過程について患者・市民の参画の度合がバラバラであり、社会保障審議会医療保険部会のように患者・市民代表が1人も入っておらず公聴会もパブコメも実施してないというのもあった。こうした状況を打開するには、各論の議論の場でなく、基本方向を決める場が必要でないか、そこに患者・市民も参画する必要があるだろうということになって、しかしながら、そのためには患者団体も疾病横断的に組織されたものが必要であろうということで、製薬協の支援も得て、あり方協議会を設立した。その後医療政策人材講座の4期生が医療基本法について検討してくれて、それに関しては前回の勉強会で講演してもらったところだ」
ここまででもかなりの発見があったので、いったん整理する。そういう講座があるとは聞いていたが、そんなことをしていたとは知らなかった。患者団体が自発的に横に連携をしたんではなく、講座の研究が先にあって、それを製薬会社の業界団体が支援して協議会はできた、と。で、その講座の研究は誰が仕掛けたのかしらと見てみると、筆頭研究者は伊藤理事長自身である。うーむ。
プレゼンの続きを聞いているうちに、ははぁなるほどと思うようになる。
「小泉内閣以降の経済財政諮問会議主導の政策運営によって、特にその民間議員が主導して、医療費の抑制などが行われ、それが様々な問題を引き起こしてきた。舛添大臣が、各論について検討会を色々とやっているが、政府与党に必要なのはもっと基本的な方針であり、そのために必要な負担を国民に示すことでないか。つまり国民皆保険を守って助け合いでいくのか、それとも経済財政諮問会議の民間議員が主張するように医療費が膨れても構わないが給付は抑制するという自己責任社会に転換するのか、その基本の議論を行うべきであるが、そこには当然ながら患者国民が入っていなければならない。ところが社会保障国民会議にも、大臣の検討会にも、ハッキリ患者市民の代表といえる人は入っていない。
実は昭和47年に医療基本法案はあった。5月26日に政府提案されて、結局廃案になったのだけれど、提案の背景には、日本医師会による保険医総辞退があって、その決着の際に基本法を出すという約束だったのだ。これに対して、野党の社会・公明・民社の3党も5月15日に医療保障基本法を共同提案していて、これは今見ても実に立派な内容のものだった。この2つの法案をもう一度振り返って、現在にはどのような法案が必要なのか考えたい。そのような基本法をつくって、医療に関する各論の法律を再構築することが、混迷している医療に出口を見つけていく道でないか。そのために、各党にはマニフェストに医療基本法の制定を盛りこんでいただきたいということで、本日の勉強会に各党の国会議員の方々をお呼びした」
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