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ニュース〜医療の今がわかる

医療基本法をめざす人々

先に登場したのは公明党の浜四津敏子参院議員。非常に丁寧に誠実に話をした。要約する。
「公明党には坂口元大臣、福島豊議員、渡辺副大臣と医師出身議員がいて、私は医療政策を担当している議員ではない。医療基本法について、公明党として検討はしていないので現段階では個人の考えに留まるが、必ず部会、政調に呼びかけて、党の政策として成立させたい。

ここからはいただいた質問に沿って答える。まず、医療基本法の理念。現在の日本は国民皆保険制によって、保険証一枚あれば誰でもどこでもいつでも安心して適正な医療を受けられることになっており、アメリカ大統領選挙でも日本のような保険制度を導入するかどうかが議論になったと聞いている。これまで比較的低コストで高水準の医療が行われてきた。しかしながら一方で小子高齢化や昨今の経済社会情勢もあって医師不足、たらい回し、医療格差などが生じている。このような現状では、医療基本法の制定は不可欠と考えている。なぜ基本法が必要か。個別の法律もあるけれど、主に国や地方公共団体の行う義務を根幹の理念に基づいて定めることによって、個別法を束ね政策に統一性を持たせて一層強力に推進することに不可欠である。その理念は、自己責任の新自由主義なのか、相互扶助なのか。公明党は1人の人を大切にする党だ。自助を基本としながら共同体による共助、それでも足りない時に公助というバランスの取れた組み合わせを指向する。医療に関していえば、相互扶助である皆保険制を将来も維持することが基本になる。

次に法案の骨子。含むべき要素は、現行の多くの医療関係法を一定の方向性で体系づけることであり、がん対策基本法が一つのモデルになると考える。患者の政策決定へ参加する権利が明確化され、国や地方公共団体の義務が明確化され、具体的な数値目標が書き込まれたことが、がん対策基本法では画期的だった。それを踏襲する必要がある。盛りこむべき骨子は8つ。1、医療は患者のためにあるということを明確にする。2、根拠に基づく医療EBMを推進する。3、国や地方自治体の政策決定のプロセスへの患者参加を明確にする。4、医師など医療提供者の責務。5、国や自治体の役割の明確化、民間との役割分担の明確化。6、医師の育成・教育政策。7、患者の責任。8、健康教育など。

三番目の患者参加。日本の医療は長い間、医師が上、医師に全部お任せで来ており、未だに主治医に遠慮してセカンドオピニオンを取れないとか、そうしようとしたら医師に怒鳴られたなどという声をしばしば聞くことがある。しかしながら患者の権利や患者の医療参加ということが言われて久しく、患者も医療者の一員とされる時代の到来も近いと思う。患者参加を法律で義務づける必要があろう。一方で、今後の医療には国民の強力も不可欠。つまり、保険料の負担や安易な医療サービス利用の自粛、これには柏原病院の事例が有名だけれど、患者個人の利益を超えたところでの住民の役割もまた重くなる。そのように住民が動くためには、医療・健康に関する教育も重要になろう。健康や医療に対する無理解や医療への過剰な期待すべて、教育しないと改善しない。そのような教育が学校現場で行われるようにする必要がある。

四番目の医療体制の充実をどのように図るかという話。先般、舛添大臣によって医師養成数を50%増やすというビジョンが示されたけれど、まず疑問に思うのは、50%の根拠が示されていない。そういうデータに基づいて掲げられたのか。養成数を増やしても、楽な診療科にばかり医師が増えて最も不足している産科や小児科などが増えないなら意味がない。現在は何科を標榜してもどこで開業しても自由であり、これでは本当に必要な診療科や地域には医師は増えない。偏在解消には、医師が一定の社会的責任を負うということを明確に記す必要がある。また、診療科や地域ごとの医師の必要数を割り出して、それについては各学会が責任を持って育成あるいは抑制することとする。限りある医療資源を効率的に利用するには、病院間での診療科のダブりなどは調整しなければならない。それができるよう都道府県に強い調整権限を与える。地域医療は国立病院や公共団体の病院が負わなければならないのだから、それらの病院には経営指標だけでない評価基準を導入する。救急医療に関しては、大学病院や国立病院などの総合病院が担うと明確化する。救急医療はわが国においては長年軽視され、多くの大学病院で行われてこなかったのが問題の根幹。大学病院は研究のための施設から地域医療に貢献するための施設へと性格を変える必要があり、すべての大学に救急医療を義務づけ、それがなされるようになればかなりの問題が解決する。他方、医師養成数は増えても教員数は増えておらず、そこは増やさないと全体tとして整合性がない。

医師が生きがい、使命感を持って働けてこそ、患者にもよい医療が提供できる。医師の勤務がキツくて当たり前、労働基準法など関係ない、家族より患者優先で当たり前というようなことで、開業すれば収入2倍、労働時間は半分というのでは、勤務医を続けろというのは困難。医師も人だから家族もいるし休みたい時もある。何より医師が豊かな心を持っていてこそ、患者の期待にも応えられる。働く場の環境整備は喫緊の課題だ。話を十分に聴いてくれる、説明を十分にしてくれる、そういう医師になれるために環境整備が必要だ。同時に、女性医師が安心して働けるよう整備することも必要。学校では教師が育児休業を取った場合、代わりの臨時教員がやってくるので安心して子育てできる。同じような制度を医師にも確保すればよい。また、福井次矢先生の著書に18歳で職業を決める不幸という言葉があった。単線コースでなく社会経験豊かな人も医師になれるようなメディカルスクールの整備も必要だ。

最後の五番目の財源、負担と給付の問題。現在の厳しい財政事情の中で医療費の抑制が続いており、それが医療崩壊を招いているとの指摘がなされている一方、国民から見ればまだまだムダがあるのでないかという声もあり、医療の実を上げる努力と共にEBMへ誘導する配分が必要だろう。勤務実態に報いる報酬体系の構築も必要だ。その後で、どの程度の負担でどの程度の医療になるのか、選択肢を示して国民に判断を仰ぐ必要があると思う」
要約といっても結構な分量になってしまった。


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