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ニュース〜医療の今がわかる

臨床研修検討会5

相変わらず紛糾して興味深かった。

まず議論の前提となる関係各団体へのアンケート結果まとめ骨子(たたき台)をご覧いただこう。

高久
「本日は、事務局と私どもとで、まとめた骨子のたたき台に基づいてご議論いただきたい。まず前提となる課題のところは、そんなに異論ないと思うのだが」

大熊
「制度の導入をきっかけに、若手医師が不足し、地域の医師不足を招いたというのは、事実に反していると思う。長く40年以上も医療記者をしているけれど僻地へ行くような医師は昔から不足していた。医師不足の一番の原因は閣議決定で医師養成数を減らしちゃったということであり、それが舛添大臣によって外れたのは進歩。一時的に2年間なくなるのがあったとしても、事実認定の冒頭に置くのは問題。それから3つ目の○。スーパーローテートで研修医の意欲損ねているという指摘だが、そもそもこの制度が始まったのは臓器を見て人を見ず、病気を見て人を見ずの医師を何とかしないといけないということからだったので、最初から臓器をやりたいような人にこそスーパーローテートが必要だろう」

高久
「研修医の声を聴くと興味ないところ行く気のないところへコアで回らされると意欲削がれるということだ。人によって違うだろうが、そういう面はある」

大熊
「そういう面があることを否定しているんじゃなくて、そういう人にこそ幅広い研修をすべき。新聞社だと支局で全部やってからの方があとあと専門に回った時に役に立つ」
べき論で世の中変わるんなら誰も苦労しないと思うのと、新聞社を見本に出すということは、新聞社のトレーニングが優れた記者を大勢輩出して社会の満足を得ていると考えているということになるのだが、ホンマかいな。

高久
「あとの方の議論で、コアよりも幅広くということになると思うのだが、現在はどうしてもコアに縛られてしまう」

小川(岩手)
「1回目の議事録の時にも出ているのだが、今の大熊委員の発言はその時の意見を全く無視している。一時的じゃなく永続的に1万5千人減ったままだ。日本の医師数の7%が消えたままの状態が永劫続く、単純な算数だ」

大熊
「単純な算数ではない。臨床研修に入った医師も順々に押し出されるんだから、ハーメルンの笛でどこかに連れていかれるわけではない」

小川(岩手)
「順々にを全体で見れば減ったままだ」

高久
「文章はなかなか微妙な書き方になっていて、大学病院で研修を受ける医師が減ったのは事実だし、大学病院が担ってきた医師派遣機能が低下したのも事実。医師不足の全部の原因じゃないにしても、言っていることは事実だ」


嘉山
「以前から医師不足はあったし、たしかに僻地へ行く医師も昔から少なかったのだから医師不足を顕在化させただけだというのはその通りだと思う。ただ新聞記者が何とかというのは、昔の朝日の話で、今の朝日の記者はそんなに勉強してない。この場にいたら申し訳ないけど」
その通りかもしれないけど、別にそんなこと言わないでもいいのに、と思う。

小川(順天)
「その通りで医師不足は昔からあったし、この制度は全ての諸悪ではいが、しかしきっかけとなって顕在化したのも事実。だから、この文章は事実としては正しいと思う。2つ目の○の定員が1.3倍あるのは正しい都市部集中は助長されてないというのは意外な事実として明らかになったことであり、しかし一部の地域で医師不足がシリアスなことになったのも間違いない」

嘉山
「制度が始まる前には研修医でなく普通の医師として登録されていた人もかなりいたはずなんで、以前の正確な数は出せないはず。今と比べるのは簡単でない」

事務局
「我々で把握している範囲の数字では、東京や京都、福岡などで百人単位で減っていた」

高久
「都市部というのは大都市部ではないということか」

大熊
「前の方にもともと日本の医師数は国際的に見て少なかった。さらに閣議決定まであったと記してもらった方が、より事態の深刻さが伝わるのでないか」

高久
「課題のところだけで随分時間を取られてしまったが本日のメインは2枚目以降の特に見直しの方向。なかなか難しい問題なので、ここをご議論いただきたい。内科6ヵ月、救急3ヵ月の必修ということはよろしいか。では次に内科・救急以外で従来は必修とされてきた科目を選択性にしてはという件はいかがか。選択制にするとして、いくつ回ることにするか。ただ後の方で1ヵ所最低で3ヵ月は回るべきという意見がほとんどだったので、それを反映するとしてあまり選択必修を多くするとフレキシビリティがなくなる。多くて2つと考えているのだが、その点はどうか」

西澤
「プログラムの内容を話す前に、基本的な考え方を固める必要があるんでないか。まだそこが固まってない。でないと2年間の到達目標が達成できるかどうか」

高久
「私もそこは心配な面はあると思っている。ただ、もともとはプライマリケアの修練が一番の核だったと思う。それを充実させれば、ある程度許されるんじゃないかと甘く見ていたのだが」

吉村
「外科医になるためでなく、外科的なものを学ぶのならば外科を回るより救急を回るべき、小児科よりも小児救急、精神科はちょっと難しいかもしれないが、しかし学生実習をしっかりやるとか方策はあるんでないか」

大熊
「8つの団体の意見では、今の2年ローテートが良しというのが4団体、1年だけ核をというのが4団体で半々のようになっているが、医学教育学会からは制度をみだりに変更してもらったら困るという意見書が座長のところにも届いているだろうし、またVHJという志高い病院の団体も同様のことを言っている。表面上は4対4だが、深く考えているところのことも勘案すると1年核にして2年目はつけたりはおかしい。なぜ見直すのかと言えば国民にとってよいことにするために見直すんで、医学部の人や病院の人ばかりが議論してもずれる。国民の立場から見ると、全人的に診れる人ができるといいなあと思っているんであって医局に戻ってくるといいなあとは思ってない」

高久
「プライマリケアの基本となる内科と救急をまずやりましょうということで他の科を回らないということではない。若い時にはできるだけ多くの科を回っておいた方が将来プラスになる。しかし内科と救急だけは全ての基礎になるから必修にしようということ。学会によってはいろいろな考え方があって、高齢者が多くなるんだから整形は必修だとか、うつが増えるから精神は必修だとか、いろいろな意見はあるけれど」

嘉山
「医療をどのように捉えているか、大熊先生と我々とで違うから話が噛み合わない。プライマリケア、鑑別が一番大事とおっしゃる。たしかに入口では一番大事で、そこで一定の管理ができることは必要だが、そこから治療の際にはトップランナーにつながないと国民が納得しない。今回問題になっているのはトップランナーが育たなくなるということ。診断だけしていれば生活できちゃうキャリアパスになりがち。西澤先生の病院でも難しいことしていると思うが、その医師がどこで育っているか。プライマリケアばかりに偏ってしまっていたので、そこは弾力化したらいい。そういう意味では本当は救急だけでもよいのでないか。今問題になっているのは例に出して悪いが、眼科の先生が全身管理ができないとか鑑別できないとか。鑑別だけすればよいなら救急だけでもよいのでないか」

高久
「総合医の問題はまた別。基本的に後期研修で養成されるべき。ここは初期研修について議論するところで、若いうちにはいろいろ見ておくことが役に立つだろう。日本に足りないのは、むしろスーパースターではなくベースの人ではないか。しかし、今までの1ヵ月ごとというのは教室の習慣に慣れるまでで終わっちゃうので3ヵ月はやはり必要なんでないか。そうすると選択性にせざるを得ない」


嘉山
「3ヵ月には賛成。教える方も教えられる方もコミュニケーションが取れない。あと内科の問題だが、実は術後に患者を内科にお願いしようとすると臓器別になっていて診られないと断られちゃう。単一化しているので、内科と決めちゃうのでなく獲得目標で組んだ方がよいのでないか」


舛添大臣が国会を抜けて慌ただしく登場。
「この臨床研修の見直しは、様々な論点があり様々な立場があり、とりまとめていただくのは非常にご苦労だと思う。そういうご苦労はあるものの、教育の質をきちんと維持向上をさらに進めていかなければならないという要請と共に、様々な制度へのご批判・評価もいただいているところであり、本当に忌憚のない意見をいただいて、最終的には若いお医者さんがどういう形で教育されどう一人前になっていくか、現場の声を聴こうとそれが一つある。それからもう一つはどこまで国が関わっていくのか、教育と国、教育と政府、それから国民というか患者というかチーム医療の話をしても看護の方でも同じような検討会をしているが、医師の代替をどれだけ看護師ができるかという話をすると、国民はどう思っているのかという視点が抜けてしまう。その点も非常に問題だと思う。どういう形で結論にするのか極めて難しいなあという感じがしていて、これからいろいろと議論はあるにしても、一つは完璧な案が出るのかな、と。大体のコンセンサスをいただいた後で、さらに試行錯誤試行錯誤が必要なんだろうという感じがしている。この検討会の最大の意味は、文部科学省と厚生労働省が合同でやったということ、卒前卒後をふくめ医療教育提供体制がどうなるか、それから我々国民の受益する側から見てどうなのか、そういうことを総合的に検討していただきたいと思っている。朝令暮改で制度を簡単に見直すのは問題だが、しかし問題があったら見直すしかない。この研修制度のせいで医師不足になったという意見もあって、それはそれで善後策を講じないといけないと思うが、しかしそれだけの論点だと、これまたいろいろ問題があるだろう。これは皆さん方の方がよくご存じだろうが、ぜひ徹底したご議論をいただきたい」

5分弱で退席。話が行きつ戻りつで何を言っているかよく分からないと思って聴いていたのだが、改めて文字にしてみると、収斂しかけた話をもう一度かき回して去って行ったとも言える。事実、この後で再び議論が紛糾する。


高久
「必修科目について話をしていた。将来専門にする科を最初に回らせるべきかどうかという辺りも、ご意見うかがいたい」

福井
「一言だけ申し上げたい。議論が段階を踏んでいないから、プログラムが良いとか悪いという議論もできない。到達目標をきちんと考えてからでないと。しかし到達目標まで考え始めると、この検討会の短期で結論というのは不可能。正当な議論の仕方から外れていると感じられて仕方ない」

高久
「今までのカリキュラムで到達目標は達成されていた?」

福井
「全員を調査したわけではないが、外部評価も含めて見たところでは概ね達成されている。満足度も高いし、臨床能力も旧制度からは上がっている。どこをどう見たら、制度を変えるとよいという結論が出てくるのか、申し訳ないけれど分からない」

高久
「1ヵ月では意欲でないから、そこを何とかという意見から始まっていて、その他に大学から人がいなくなったという問題もあったけれど、それは本来は違う問題で到達目標そのものは見直す必要がなくて主に今のカリキュラムに対する不満を直していこうということで理解している」

斎藤
「今までの制度がリジッドに過ぎて合わない人もいたのだろう。今やろうとしていることはメニューの多様化。しかし余りに自由にし過ぎると基本的な所まで失われる。基本的な診療能力に対する考え方の違いだろう」

福井
「もし今使われている到達目標をそのまま使うなら、たとえば産科をローテートしないと到達できなくなるので、そういうのは修了認定しないのか。あるいは到達目標の方を変えるのか。変えないでそのまま必修を選択性にすると修了認定できない人が出てくる」

高久
「大学病院の特別コースで既に到達目標については緩めているのでないか」

福井
「堅持したままフレキシビリティを持たせると通知に書いてあった」

高久
「私が勘違いしていたのか」

事務局
「今の問題か」

高久
「各大学の手上げ方式の自由度の高いコースの話だ」

事務局
「特別コースは到達目標を前提にして内容の弾力化を認めたもの。今回どうするのかは、ここでご議論いただければ」

小川(岩手)
「前提というのはニュアンスが違わないか」

事務局
「文章にも到達目標を前提に期間を柔軟にすると書いてある」

高久
「厚労省としては前提にせざるを得ないということか」

西澤
「この検討会では到達目標は変えないと思っていた。それを変えるのは乱暴すぎる」

武藤
「制度が始まって5年経過したということは卒業生たちも3年は働いていることになる。実際その人達にどういうメリット・デメリットがあったか全く分かってない。少し詳しく調査する必要がある」

嘉山
「福井先生の考えている医師のレベルが低すぎる。産科を1ヵ月回っただけの医師にお産を取ってもらおうと思うか。臨床研修制度で医師に施された教育が国民に還元されているかといったらされてない。本当に国民のためにはどうしたらよいのか考えないといけない。日本の国民ほど医師を育てようとしてないのもいないんで、平成3年に医学生の医行為の基準が示されていて、臨床研修の到達目標と同じことが学部教育でもやられている。到達目標の内容を変える必要がある」

高久
「到達目標を変えないのなら、プログラムも変える必要ないことになる」

小川(順天)
「その通りだが、それならこの検討会をやる必要がないということになる。大学病院の特別コースの時には確かに到達目標は変えないということだった。今はもう少しプラクティカルで何とか弾力性のあるものに変えて、そうすれば医学生のモチベーションも上がるんではないか、キャリアに応じた誘導という書き方はファジーだが、見直しの方向としてまとめている。大学によって地域によってスタッフによって違いはあるだろうが、何より大事なのは社会のニーズに対して医療が応えきれてないという現実があり、今まで通りではいけないのだから一定の見解を示してほしいということで、かなり苦労してまとめられている。過去の議事録を確認してきたが、検討会の中で皆さんがこういうことを述べられているのは間違いない」

矢崎
「5年前に制度が発足した時には3本柱ということだった。達成するためのカリキュラムと身分処遇の保証と、そして到達目標。カリキュラムを変えるなら到達目標を見直さねばならないのは当然。ただ目標にもランク付けがあって特にAランクは入院患者を担当して報告するというのがあって、そのAランクの項目が相当の数ある。そこを弾力化しないとできない。目標全体を変えるのは、あれはみんなで必要とつくったのだから、ランクを見直せば柔軟性が出てくる」

高久
「そういう風に言っていただくとありがたい。救急を増やす方法もあるだろう」

矢崎
「小児科、産婦人科、精神科のAという項目を考慮してもらえれば、それは救急の中に全部入ってくるから、項目を削除することなく達成できる」

永井
「矢崎先生に賛成。国民がどういうことを考えているかといえば救急に不安を持っているのだし、地方の地域医療というと分かりづらいので、あえて地方と言うが地方の安全にも不安を持っている、さらに高齢科社会で認知症に不安を持っている。そういうものを腎臓内科だから診られないというようなタワーマンション型専門医をつくってきたが、もっと裾野の広い医師を作らねばならない。現状でも選択がMAX8ヵ月、特別コースなら12ヵ月ある。ということは必修は12〜16ヵ月に過ぎない。プログラム自体の弾力性は持たせないと難しい。一つ気がかりは『地域医療』というのが漠然としている。しっかり定義されなかったので浮いたようなものになっている。そこの定義においても全体的に具体的にする必要があるのでないか。科に属するのか、誰が責任を持つのか、何を学ぶのか」

高久
「二次救急病院なら、かなりの問題をできる。地域医療の指定をする時に慎重にしてもらう必要はあるだろう」

永井
「1ヵ月の中で保健所へ行ったりするんじゃなくて、今まさに問題になっている地域医療の現場へ行くんだということを明確にすれば、あとは県行政の中で方策は出てくると思う」

大熊
「しっかりした指導医がいる在宅医療をイメージしている。病院ではなく在宅医。医師が足りないから研修医が行くというようなことになったら患者が不安なのできちんと指導医がついて」


辻本
「到達目標はスタートする際に議論が尽くされて作られたものだったはず。それが僅か5年という医学の歴史から見れば本当に短い期間で右往左往していいのだろうか。患者国民のニーズは一つではない。本当に多種多様で、その多様なニーズに応えてくれるということでつくったものが到達目標だった。それがプライマリケアの能力であり、嘉山先生言うところのトップランナーへつなぐことのできる能力を持つことになるのではなかったか。研修医がやる気を失っているからと安易にわがままな息子を甘やかすような議論だけでいいのか。患者の立場として思う。精神科へお客さんで興味もなく行って、でも他科紹介できるようなことが分かった、行って良かったというような声も聞いている。やる気だけを支えようという、わかったような親の態度はもう一度考えていただきたい」

嘉山
「医療界の取り組みを大変善意に捉えていただいてありがたいのだが実態は全然違う。端的にいうと、救急車で運ばれてくる人の半分は脳卒中。その7割を脳外科が診ている。しかし、このプログラムには脳外科が入ってない。これを言うと自分のところに利益誘導するように取られるから、あえて今までいわなかったけれど、それが入ってない、とんでもないプログラムだ。医療界を信用していただいてありがたいが、現場には合ってない。それがよい証拠に、高知医療センターの脳卒中は脳外科が支えていたけれど崩壊した。脳卒中の患者は言語障害が残るので声なき患者になってしまう。それがサイレントマジョリティだ。精神科は、まだ自分で発信できる。こんなプログラムは、いっそ実状に合わせてきちんと変えましょうというのが、我々の使命だ」

高久
「アンケートではほとんど全員が3カ月いないと困ると言っている。そこを2年間の中で必修とどう結びつけるかに苦慮している。到達目標はほとんど変えないでできるのでないか」

小川(岩手)
「この委員会が立ちあがった時に両大臣が列席して、この制度が医療崩壊を起こした、顕在化させた面もあるから、そこを含めて見直すようにとのことだった。そこを皆さんお忘れになられたのか。議論の中から医療崩壊が消えてしまっている。余裕があるんだったら研修を3年でも4年でもやればよい。しかし今や東京の近くの銚子でさえ廃院になり、さらに近隣の病院まで危ない状況だ。元に戻って考えないと。東京のように5分もいけば大病院があるところばかりじゃない。地方では診療所が無床化し、病院がこのままでは来年はもたないような状況にまで追い詰められている。何のためにこの検討会をやっているのか。それを戻すためじゃないのか。今の臨床研修のままではそれができないから、この会議をやっている」

高久
「ビジョンによって医師数を増やすことにはなった。研修制度を見直す時に2年間も短くという意見もあったが、私のところに寄せられた意見の95%は2年間はそのままというものだった。あとは内科と救急と地域医療はすべての医師がすべきだろう。他の科についても、なるべく多くの科を回った方がよいのだが、しかし期間の問題もあるから、そこで行き詰まっている」

西澤
「困っているのは民間病院であり、公立病院であり、地方の病院だろう。しかし、その困っている病院からでさえ2年間は維持という声が出ている。数不足は問題だが、質を取るための我慢ということでないか。そのことを踏まえて議論したい」

吉村
「いかによき臨床医を育てるかが問題だから、そのためには後期研修との連続性が必要で、それがうまくつながってないのが問題。プライマリケアという言葉だけに捉われるとあれだが、卒前教育と連携して後期の基盤となるべきで、初期研修だけで良い臨床医が育つというのは違う。あくまでも初期研修はバックボーンだ。やはり救急とコモンディスイーズをやればよい。内科、救急、地域医療があればよいのでないか」

福井
「もともと8カ月は自由に使える制度だ。後期につなげるようにということで、あれだけのフレキシビリティを持たせたのだが、それでは足りないという意見なのだろう。見直すにあたっては研修医の到達度を評価する仕組みが今ないので、そこはしっかりしてほしい。また制度が始まって5年で見直しになったのだから、また5年経ったら再度見直してもらえるのだと思っている」

高久
「到達度の評価基準をどこかの財団が決めることになる」

嘉山
「まとめると作業工程を決めないといかん。作った人たちは満足していたけれど問題があったということ。この制度の罪で一番大きいのは科の偏在を起こしてしまったこと。外科系に全然入ってきてない。マッチングやる時に、今までだったら調べなかったような色々なことを調べるようになって、ITが頭の中まで変えてしまった。普通の社会人と同じ職業選択の仕方をするようになった。イージーでインカムの高い方に明らかに流れている。プログラムなんかよりも、医学生の頭の構造を変えてしまったという方がはるかに大きな問題。作業工程をつくろう。若い医師をいかに国民が安心してかかれる医師に育てるか、必修は救急だけにして獲得目標をもう一度見直す必要があるのでないか。それから、先ほど大臣からも国家が教育に立ち入るのかという発言があった。医療界の自律性と自浄性で育てることを考えたら弾力化でもいいんじゃないか。矢崎先生からもあったように目標はもう一度見直してプログラムを組みなおせば」

矢崎
「私の発言が誤解を招いているようだが、この制度は基本的な診療能力を獲得させるということで予算を得ている。財政支援を得ている。公費が出ているわけで、それは到達目標とセットだ。それでないと国民の納得は得られない。項目の削除や付け加えではなく、だって項目は皆で議論してこれは必要だろうと決めたのだから、必ず入院患者を受け持たなきゃいけないという所を見直していただければと思う。それから制度設計した時にも大議論で、選択必修はどうかと言ったら猛反発をくらって必修になってしまった経緯がある。思い切った発言をさせていただけば、選択必修の科目は1つ以上ということでよいのでないか」

嘉山
「だからそこに優先度をつけて」

矢崎
「Aランクだけ考えて、Bランク、Cランクは変える必要ない」

嘉山
「重層化して必修にすればいいのじゃないか」

高久
「選択必修は1か2でいいんじゃないか」

武藤
「救急は3ヵ月じゃなくて6ヵ月にすべきだ」

高久
「それをして救急はもつか」

武藤
「もつかもたないか分からないけど、2年間やったくらいでプライマリケアができるようになるわけない。あくまでも、その先に向けての助走。そんなにたくさん見ても仕方ないのでないか。一番大事なのは救急」

高久
「たしかに小児科の先生も小児救急だけやらせてくれと言うし精神科も同様だ。救急を延ばすという考え方はある。専門家のところを回ってもプライマリケアには役に立たない」

武藤
「外科も救急で十分」

齋藤
「だったら地域も3ヵ月やった方がいい」

高久
「そうなると必修だけで1年になって、そこに選択必修を重ねたらフレキシビリティがなくなってしまう。ところで、そろそろ時間なんだが終わっていいか」

事務局
「募集定員の所について何かコメントがあれば」

齋藤
「ベッド数など物理的な規模と研修の質とが一致する証拠はない。むしろ指導の質が問題で、規模だけで枠をはめると、今まで中小でも一所懸命やってきたところはあって、そういう所の先生方がガッカリする」

永山
「救急患者の受け入れ数が少なければ、救急を必修にしても研修医の担当する患者がいなくなってしまうから、そういった所を施設基準に盛り込めばよいのでないか。ベッド数だけでないというのは賛成」

高久
「救急の問題は関連病院的なものでカバーできるのでないか。工夫の仕方でいろいろ。もちろんベッド数だけではない」

齋藤
「たすき架け研修は、大学にとっては便利だろうが、受け入れる側の病院にとっては自主的にやっているものではない」

福井
「中小病院で研修を受けた方が満足度は高いというデータもある。ベッド数で制限するのは問題になるだろう」

高久
「それではよろしいか。次回は18日の17時からだったか」

事務局
「17時半から」

高久
「2時間という予定だったが、いろいろな問題が出て自信なくなっちゃったので、もう少し時間取れたらと思う。後ろの時間を少し空けておいていただければ」

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