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火だるまになっても「概ね了承、座長一任」~医道審医師臨床研修部会


小川彰・岩手医大学長
「全国医学部長病院長会議では調査している。それによれば、実は産科と小児科は漸増している。マスコミの非常に大きなキャンペーンがあって、結構志望者が多い。むしろ問題は、内科と外科の不足。地域によって実情が様々に異なるので、あまりリジッドに決めない方がよいのでないか」

田原
「医師が不足する診療科が他にもあるということは十分に認識しているが、それらについては今回のプログラム弾力化で2年目からのコースで対応できるのでないか。中でも不足が強調されており希望者は多いのに途中でやめちゃう人も結構いるという産科、小児科に関しては明示的にプログラムを設定した方がよいと、これまで議論いただいてきた」

小川(順天)
「大学病院には特別コースで結構頑張ってもらったのだが、たしかチャレンジした所のマッチ率が悪かったのでないか」

田原
「昨年8月に弾力化して特別コースを設けた。定員398人に対してマッチしたのが212人。小児科は69対37、産科は78対38だった」

小川(順天)
「頑張ってコースを作った所がそういう状況になっている。だったらチャレンジしたらジリ貧になるという心配はもっともだ。清く正しく選んで行くと、どんどん減っていくのかなという気がする」

矢崎
「先ほどからエビデンスがないという話があった。初期研修2年間を終わった後、その人たちがどういうキャリアパスを進んでいるのかのデータがない。大学に帰った人についてはあるけれど、帰ってこない人は分からない。それがこの制度の極めて大きな欠陥。中小の研修指定病院が一生懸命やっても、終わった後どうなっているのか状況を把握できないのが深刻。地域で医師を育てるコミュニティソリューションでないと、国レベルで規制しても難しいだろう。指定基準を厳しくするだけだと中小の病院は自分たちが制限されて圧迫されるような恐れを持つだろう。中小の病院についても自主性を持ったシステムとして大病院と連携する。機械的なたすき掛けじゃなくて、中小主体で一部を大病院、主に大学病院になるんだろうが、と連携するということにすれば情報も集約できるし検証もできる。定員が膨れすぎて学生が何をしていても希望の所に進めるというのでは研修のインセンティブが失われるので放置していたらいけないし、一方で余り絞り過ぎちゃうとプログラムの自由競争のインセンティブが失われるのもある。この施設基準強化だけを出すと、路頭に迷うような施設もある。また大学病院の傘下に入れられて研修を押し付けられるのかという被害妄想的なものも出てくるだろう。ポイントは2年の研修の後も地域できちんと把握することで、地域偏在を研修制度だけでコントロールすることはできない」

山下
「矢崎委員の指摘は非常に重要。今後どうやってシステムをイノベートするのか基準がないと検証できない。初期に関しては、鑑別診断して自分の手に負えるのか負えないのか判断する所が大きい。であれば、たくさんの症例を様々な状況で見せられるのかに集約されると思う。既に各地域でネットワークを作っているはずなので、それに合わせた形でやるのが大切だろう。そしてイノベートするためには、私の意見では基幹型施設に関してはもっと高度なことができる所である必要があるので、この基準でもまだ不十分。高度というのは、難しい症例であってもちゃんと治せるのを見せないといけないということ。研修だけのためでなく、医療のための地域の既存のシステムとタイアップしていけば、自然とそういうものになると思う」

山口
「指定病院群というのは、たすき掛けのイメージか」

田原
「大学病院は例示であって、研修指定病院が中心となることもあり得る」

山口
「これまで単独型だったような病院は?」

田原
「地域医療のための診療所など研修協力施設があれば、そういうもので群」

小川(岩手)
「群が概念として盛り込まれたわけだが、私としては基準の厳格化が甘いと不満だ。将来的にはぜひ見直してもらいたい。中小病院を排除するということではなく、コンソーシアムを組んで協力すればいい。せっかく群が打ち出されたのに、定員が病院毎になっている。今年度すぐには難しいにしても、基本的な考え方に基づくなら群の定員でないと、群が形骸化する」

相川
「質問だが、病院と群の両方から見ろということか、それともコンソーシアムとして見ろということか」

小川(岩手)
「どちらかと言えば後者。病院毎だと、それぞれで完結する意識が出てきて、連携がうまくいかないだろう。今回入れなさいというのが無理というのは重々承知しているが、来年以降ぜひお願いしたい」

田原
「今まで出されている意見の中でも今後検証すべき、あるいは議論すべきものはあるので、含めて検討していきたい」

河野
「定員の扱いだが、特別枠が埋まらない時には、その分を他のコースに融通するようにはできないのか」

田原
「キャパシティがあるなら可能性はある。しかし技術的な問題もあり、今年度はとても難しい。今後の課題と捉えている」
ここでもまた、病院は困るかもしれないけど、マッチングシステムの方が大事に決まってるだろうと言った。一般国民からしたら、明らかに主客転倒した話だ。

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