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進まぬ後発品、大学病院にも原因?

宇都宮企画官(中央).jpg 「どの病院グループも後発品の使用が増えているが、平成15年度DPC対象病院は若干低い傾向にある。ほとんどが大学病院」―。高度な医療を提供する大学病院(特定機能病院)で後発品の使用が進んでいないことが、中医協で問題になっている。(新井裕充)

 厚生労働省は5月20日の中医協で、「DPC対象病院及び準備病院における後発医薬品の使用状況」を示した。

 それによると、「薬剤費における後発医薬品の占める割合(金額シェア)」で、最も低かったのが「平成15年度DPC対象病院」(82病院)の5.6%だった。

 先発品よりも価格が安い後発品は、出来高払いを中心とする診療所よりも、入院費の包括払い制度(DPC)を導入している病院の方が使用が進むといわれている。手術や薬剤に掛かる費用が包括評価されているため、安価な薬剤を使用すれば差益を生じる。DPCを導入している病院では、積極的に後発品を使用する経済的なインセンティブが働くとされる。

 ところが、高度な医療を提供する大学病院では、後発品よりも"ブランド品"(先発品)を使う傾向があることが指摘されている。

DPC病院の後発品使用状況.jpg DPCは、大学病院を中心とする82の「特定機能病院」で2003年にスタート。その後、DPCの対象病院は増加を続けているが、「平成15年度DPC対象病院」は他の年度のDPC病院と異なる傾向があり、その1つに後発品の使用割合の低さが指摘されている。

 中医協の下部組織であるDPC評価分科会(西岡清分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)では、後発品の使用状況を公開させ、その取り組みを評価すべきとの意見も出たが、「公開したら、患者は先発品を使うブランド病院に流れてしまうので、ますます後発品の使用が進まなくなる」との指摘もあった。

 こうした中、5月20日の中医協・診療報酬基本問題小委員会(会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)で、厚労省はDPC病院での後発品の使用状況を報告。保険局医療課の宇都宮啓企画官は次のように述べた。

 「どの病院グループも後発品の使用が増えているが、平成15年度DPC対象病院は若干低い傾向にある。この病院のうち、ほとんどが大学病院。先程の総会で、『医学部の教育はどうしてるのか』という意見があった。教育の中身は分からないが、大学病院で、比較的、後発薬の使用率が低いということがお分かりになると思う」

 山本信夫委員(日本薬剤師会副会長)は、「平成15年度DPC対象病院(特定機能病院)の使用率が時間の経過の割には多くない。周りへの影響が教育も含めて大きいと思う」と指摘した上で、次のように要望した。
 「平成15年度DPC対象病院だけでも結構なので、具体的に後発品の使用がなぜ進まないのか、本当に新しい薬を使っているだけなのかも含めて、それが分かる資料を出していただければ分析ができる。どうだろうか?」

 これに対し、宇都宮企画官は、「平成15年度DPC対象病院について、病院別の率について(データを)出すことは可能」と回答している。

 同日の基本問題小委員会では、西岡分科会長が、「平成20年度DPC導入の影響評価に関する調査結果および評価」と「平成20年度特別調査再入院(再転棟)に係る調査」について報告。次いで、宇都宮企画官が「DPC対象病院及び準備病院における後発医薬品の使用状況」について報告した。

 その後の意見交換は、以下の通り。

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