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新型インフル 蔓延したら白血病治療止まる


――白血病だけですか。固形がんの化学療法はどうなんでしょう。

 一般論としては大丈夫だと思います。ただ、新しい固形癌の化学療法はイザ何かあったら血小板を輸血しないといけないというような強い治療が多いので、そのような治療はやりにくくなるでしょうね。すぐ患者さんが亡くなるわけではないにしても影響はあるでしょう。

――今回、学術論文をお書きになっているそうですが、それは献血量を減らさないようにしようというアプローチですか、減っても何とかなるようにしようというアプローチですか。

 献血者を増やすような取り組みは、日赤が既に一所懸命やっていて劇的に増えるようなことは考えにくいと思います。よって後者の取り組みになります。具体的には、ソラレン誘導体という薬剤を使って輸血製剤の不活化という処理をすると、血小板の保存期間が7日に延びるので、その導入を検討したらどうか提言したいと思っています。7日に延びれば、余裕のある地域から足りない地域へ融通することも考えられます。

――不活化ですか。

 輸血製剤中のウイルス、細菌、原虫などの病原体を殺す技術です。EU諸国の一部では既に承認されています。アジアではシンガポールやタイなどで使用が許可されており、また米国でもFDAに申請中です。本来の目的は、輸血製剤による感染防止です。

 現在、我が国ではHBV、HCV、HIVについて、核酸を増幅して調べるNATという検査が行われています。その成果で、輸血が原因でこれらの病気に罹患する患者さんは極めて少なくなりました。でも、それ以外のウイルス、細菌、原虫などが血液に混ざっていた場合、見つけることができずに、そのまま患者さんへ輸血されているのが実態です。

 未知の新興感染症に対応できないのは問題でないかということで、日本でも2004年に議論が始まりましたが、未だに審議が続いていて治験も開始されていません。学会などで、「安全性に関するデータ集積は不十分で、変異原性や発がん性など人体への長期的な影響が完全には明らかにはなっておらず、導入するかどうかは慎重に検討すべきである」との見解が優勢のようです。つい最近行われた輸血・細胞治療学会でも、議論があまり進まなかったそうです。

 ただ、輸血製剤の保存期間が延びるということに関しては全く着目されて来なかったと思うので、医療の危機管理として改めて議論を急ぐべきだと思います。

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