医療区分3の患者が「適正化」される?-中医協慢性期分科会
「医療区分3であっても状況によっては介護系の施設に行けるというデータが出てきている。どういうふうに見たらよいのか、専門的なご意見をいただければ」-。厚生労働省は6月11日、2010年度診療報酬改定のための基礎データとなる「2008年度慢性期入院医療の包括評価に関する調査」の一部を中央社会保険医療協議会(中医協)の「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」(分科会長=池上直巳・慶大医学部教授)に提出した。診療報酬上、最も手厚く評価される医療区分3の患者を介護施設に移すことができれば、厚労省が医療費削減を進めることができるのは間違いない。次回診療報酬改定につながる議論になるのだろうか。(熊田梨恵)
この分科会では、医療療養病棟や障害者病棟など、慢性期包括医療の実情を調査して診療報酬改定への議論の素材を提供している。同日に事務局から報告された調査は、次回の診療報酬改定の大元となる基礎データで、今後の慢性期入院医療に関する評価を左右するものだ。調査は▽レセプト▽コスト▽施設特性▽患者特性-から成り、今回報告されたのは「施設特性」と「患者特性」の2つ。残る調査は次回以降に公表される。
報告された調査からは、前回の2008年度診療報酬改定前に実施された同様の調査の内容と比較しても大きく変化している部分は少なかった。猪口雄二委員(医療法人財団寿康会病院理事長・院長)からは「ある程度医療療養の状態は確立したと考えれば、あまり早急にここをいじると、何万床という数の行動様式が動いてしまうので、あまり早急にちょっとしたデータでいじるべきではない」という意見が上がり、池上分科会長はまだコストや調査レセプト調査が未公表のため、「全容がないとなかなか踏み込んだ議論はできない」とまとめた。
事務局は会合冒頭に調査内容を資料に沿って説明したが、その中で分科会での議論を求める発言があったのは、療養病棟に入院する患者の「退院先の見通し」に関する部分だった。調査では、病院側は医療区分3の患者の約6割について、受け入れ先が整備されれば介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの介護施設に移ることができると回答していた。事務局となる保険局医療課の佐々木健課長補佐は「ご議論いただきたいところとしましては、医療区分3であっても状況によっては介護系の施設に行けるというようなデータが出てきておるということは、どういうふうに見たらよいのかということは、専門的なご意見を、意見交換していただければと思っております」と述べた。
療養病床削減の目的は、医療と介護の提供の「適正化」。医療費削減を視野にした適正化が、次回報酬改定でもさらに進められるのだろうか。
事務局が説明した調査の内容をお届けする。